岡山発 自転車ヘルメット着用 努力義務に なぜ？どうかぶる？

なぜ努力義務化？

道路交通法が改正され、2023年4月から年齢を問わず、自転車に乗るすべての人にヘルメットの着用が努力義務化されました。自転車事故では頭部を打ち、それが致命傷となる人が多いからです。
こちらはJA共済の実験です。

車とぶつかった自転車の人形が大きく跳ね飛ばされます。注目してほしいのは、地面にたたきつけられた体の部位。1人乗りも、2人乗りも、いずれも人形は頭から落ちています。JA共済の実験では、ヘルメットをかぶることで、頭への衝撃を4分の1に軽減することができたそうです。

事故統計からも明らかに

県内では平成25年から去年までの10年間に自転車に乗っていた146人が死亡しています。このうち、最も多かったのが頭部のけが。43％にあたる64人に上ります。

また、ヘルメット未着用者は142人。警察によりますと、着けた場合は着けない場合に比べて、致死率が4分の1以下でした。警察の担当者は「統計上も頭をけがから守るヘルメットの有用性は明らかだ。命を守るためにぜひかぶってほしい」と話しています。

あの手この手で着用を

ただ、かぶる人はまだわずか。警察庁が岡山県を含む全国13都府県で、努力義務化前に着用率を調べました。それぞれの駅の周辺などで現地の警察が調べた結果、あわせて1万6,435人のうち着用していた人は665人で、着用率は4％でした。岡山県はというと、熊本県、東京都に次いで上から3番目でしたが、着用率は4.3％にとどまりました。そこで警察は、各地でイベントを開くなどして着用を呼びかけ始めています。
そのうちの1つが、1万枚のチラシの配布です。

岡山市内の幼稚園の協力を得て、園児と保護者に着用してもらった写真を使いました。

身近な人のヘルメット姿を見れば着用の輪が広がるのでは、と考えました。また、岡山市で開かれたイベントにもブースを設けました。「多くの人に試しにつけてほしい」と、帽子タイプやたためるタイプ、子ども向けに新幹線をイメージしたタイプなど5種類10個を用意しました。

かぶった人は「思ったより軽い」「かっこいい」と話していました。

正しく着用を

ヘルメットは正しくかぶらないと、効果が得られません。岡山市内の自転車販売店の宮尾康明店長に聞きました。

ポイントは、水平にかぶること。帽子のようにツバの先を上に向けるのではなくすっぽりと頭を包むよう深めにまっすぐとかぶるのが正しい着用方法です。
そして、あご下でつなぐベルトは指が1本から2本入る程度に締めます。自転車に乗っているときは体が動きます。きついとくい込んで苦しくなり、緩いと転倒したときに外れるおそれがあります。
また、Ｖ字になったベルトの付け根の部分は、耳の前と後ろになるように通します。2本が1本になる部分が耳の下の2センチほどの場所に来るのが理想です。
そして、後頭部にダイヤルが付いているタイプのものは、一度、完全に緩めて頭の大きさに合うよう調節することで高い安全性を得られます。

購入時は実際に着けてみて

購入のポイントは「頭の形」。頭周りのサイズは合っていても頭の形に合わない場合があります。形が合わないと転倒したときに外れてしまったり、長時間の着用で痛みを感じたりします。そして、「これならかぶろう」と思えるものを選ぶことが、長く使う上で大事になりますと宮尾店長は話していました。

快適に使えるよう進化

より快適に、抵抗感なくかぶれるようにと、さまざまなモデルや便利グッズもあります。スポーツタイプのほか、買い物などふだん使いしやすい帽子のようなタイプ、バッグに入れて簡単に持ち運べる折りたたみタイプもあります。

そして、ヘルメットの下に着けることで紫外線を防いだり、保温効果を得られたりするインナーキャップも販売されています。

取材後記

取材をして、“頭を守ること”が“命を守ること”に直結すると、改めて思い知らされました。「髪型がぐちゃぐちゃになる」「暑くて蒸れる」とかぶらない理由を話す方もいました。しかし、あなたはきょう事故に遭うかもしれないのです。その時「なんであの時……」と後悔しないよう、そして大切な人を悲しませないよう、かぶらない選択肢はないと感じます。私たちから着用の輪、広げていきませんか？