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岡山発 自転車はルールを守って!児童たちの挑戦

NHK「もぎたて!」ゼロへのAction~なくそう交通事故死~
  • 2023年11月13日

運転免許が不要で手軽な乗り物、自転車。「幼少期から正しいルールを」と、自転車の技能と知識を競う大会が毎年、開かれています。美作市の小学生の挑戦を追いました。
(岡山放送局 記者 美濃田和紅)

子どもたちの自転車大会

ことしの大会は6月に岡山市北区の岡山ドームで開かれました。県内の16の小学校から1チーム4人ずつ、あわせて64人の児童が参加しました。道路交通法に基づく問題、計60問を解く学科テストと、会場内のコースを正しく走行できるかチェックする実技テストで競います。

連覇を目指す大原小学校

参加したこのうちの1チームが県北部・美作市の大原小学校です。1年生から6年生143人が学んでいます。

小学校がある合併前の旧大原町は、ことし5月末時点で1632世帯、3370人が暮らしています。高齢化が進んでいて、移動の手段は自家用車が中心です。山あいにあるためクマが出るおそれもあり、児童たちはスクールバスで登下校しています。
ただ、中学生になると5キロ以上の道のりを自転車で通うようになる子もいます。そこで小学校は、「小学生のうちから自転車に慣れて、正しいルールを身につけてほしい」と、去年初めて出場した大会で初優勝しました。

“ことしこそは自分も”

ことしのチームは5月から練習を開始しました。大会に出場するメンバーはいずれも6年生の男女4人。放課後、校庭に白線を引いてコースを作り、児童が乗る自転車を先生や別の児童が審査して、運転技術を磨きました。

このうちの1人、安本龍信くんは去年メンバーの選考から漏れ、ことしこそはと手を上げました。この日、ふらつきを指摘された龍信くんは、おなかに力を入れると改善できると教わり、練習を繰り返しました。

龍信くん

始める前に比べたら上手になったと思います。優勝できるよう頑張ります

憧れの兄の存在

龍信くんが頑張ろうと思うのには訳があります。それはひとつ上のお兄ちゃん、大夢さんの存在です。大夢さんは去年の優勝メンバーのキャプテンで憧れの存在です。
「お兄ちゃんのようになりたい」。
日が暮れると、龍信くんはメンバーとともに図書室で、交通ルールにまつわる問題を黙々と解き進めました。

そんな様子を見に、大夢さんが小学校にやってきました。道路標識の意味を問われる学科テストが苦手という龍信くん。大夢さんは「大体絵がそのままヒントになっている。『ばってん』みたいなやつが描いてあったら通ったらだめという意味」と覚え方のコツを教えていました。

大会で練習成果を発揮

そして迎えた6月24日、大会当日です。会場の岡山市北区の岡山ドームに、龍信くんたちの姿がありました。

午前中は学科テスト。ここで失点を防ぐことが大会の勝敗を大きく左右します。お兄ちゃんのアドバイスを思い出して、集中して乗り切りました。

午後は実技テスト。踏切や横断歩道など9つのポイントが設けられたコースを自転車で走ります。一時停止や進路変更時の手信号などが正しく行われているかチェックされます。練習で指摘されたことを踏まえて、慎重に運転しスムーズにゴール。

一致団結して臨んだ大原小学校のチーム。結果は優勝。大会2連覇を果たしました。

龍信くん

ふらつきもなく、最高によくできました。メンバーたちが頑張った姿を頭に思い浮かべたら、すーっと行くことができました。今後も、自転車に乗ったときに今回学んだことを生かそうと思います。自分の身を守れるよう気をつけます

全国大会に出場!

8月の全国大会の会場は東京・江東区の東京ビッグサイトです。

保護者に先生、さらに地元の美作警察署の警察官も駆けつけました。みんな、そろいのTシャツを身につけて、チームの応援です。

実技テストは、県大会にはなかったS字カーブや、ピンを倒さずジグザグに走行するコースもありました。メンバーは緊張の中、最後までめげずに走りきりました。ただ、残念ながら結果は10位。入賞とはなりませんでした。県大会で優勝したときには、はじける笑顔を見せてくれた龍信くんは、この日、悔しさのあまり涙を流しました。

大会参加で好循環

この自転車大会への参加は、子どもたちの成長につながっています。
まずは龍信くんのお兄ちゃん、大夢さんたち去年の優勝チーム。市役所や警察署、公民館で大会の報告会を開きました。

さらに、メンバーは自転車に乗って家から学校まで実際に走り「地域安全マップ」をつくりました。雨が降ったら冠水して危ないとか、標識がないので注意するといった情報が載せられています。
そして、ことしのメンバーは「自転車で行ける観光マップ」をつくりました。県内外から大原地区を訪れる人が安全に走行できるよう、自転車遊歩道や標識のある場所をまとめました。車ではなく、自転車でゆっくりと地域の良さを味わってほしいという狙いです。
大原小学校の金島久美子校長は、子どもたちが大会に参加したことで、地域全体が交通安全に取り組む雰囲気になったと手応えを感じています。

金島校長

去年の大会で優勝して、小学校がぐんぐん変わってきました。大会のあと、自分たちの取り組みを紹介し、自分たちができる安全、自分たちができる貢献を地域の人たちに知ってもらおうとした。そこがすばらしかったなと思います。子どもたちが社会を変えていったと思います。それがことしも続いたのはすばらしいことだと思います。

大人は子どもの手本になれている?

取材中、小さい子どもたちがコツコツと知識と技能を身につけながら「自転車ルール」と向き合うひたむきさに、何度も心動かされました。私たち大人は、本当にこの子たちの手本になれているでしょうか。未来ある子どもたちを守るため、そして自分自身が事故に遭わない、大切な人を悲しませないため、特に大人がルールを守ってハンドルを握りましょう。

  • 美濃田和紅

    NHK岡山放送局 記者

    美濃田和紅

    2022年入局 警察担当 交通関係の取材などを行う

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