子どもの発達障害 「自閉スペクトラム症(ASD)」とは?アスペルガー症候群などとの違い

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「自閉症」「高機能自閉症」「アスペルガー症候群」の総称

自閉スペクトラム症とは

「自分の感情をコントロールする」「物事に集中する」「他人の表情から感情を理解する」などがうまくできないのが発達障害です。これは生まれつきの行動や思考の特性であり、個性や性格に近いものです。

発達障害の中でも、コミュニケーション能力の困難、こだわりが強いなどの特徴がある「自閉症」「高機能自閉症」「アスペルガー症候群」を総称して自閉スペクトラム症と呼びます。自閉症は、言葉の遅れや知的障害を伴い、人とコミュニケーションをとることが困難であることが大きな特徴です。高機能自閉症では、知的障害は見られません。アスペルガー症候群は、知的障害はなく、人によっては優れた才能を発揮することがあります。しかし、コミュニケーションをとることは苦手です。

自閉スペクトラム症の診断基準

自閉スペクトラム症の診断基準

自閉スペクトラム症は、「コミュニケーション(対人関係)の障害」と「興味や行動への強いこだわり」という2つの特徴を併せ持っています。どちらかだけという子どもが多くいますが、どちらか一つだけでは、自閉スペクトラム症とは診断されません。

「コミュニケーション(対人関係)の障害」という特徴については、以下の3つの項目で持続的な障害があるかが診断基準となります。

  1. 会話のやりとりや感情を共有することが難しい
  2. 人と交流する際、身ぶり手ぶりなどの非言語的コミュニケーションがとれない
  3. 年齢に応じた対人関係が築けない

「興味や行動への強いこだわり」では、以下の4項目のうち2項目以上当てはまるかが診断基準です。

  1. 常に同じ動きや会話を繰り返す
  2. 同一性への強いこだわりがある
  3. 非常に限定的で固執した興味がある
  4. 音や光などの感覚刺激に対して、極度に過敏。あるいは鈍感。

自閉スペクトラム症(ASD)の子どもの困難

子どもの困難

自閉スペクトラム症の子どもは、友達からいじめを受けたりする機会が多いことが分かっています。気になる行動がある場合は、発達障害の診断・治療を専門としている小児科、児童精神科、あるいは精神科のほか、お住まいの市区町村に問い合わせて、地域の保健センターや子育て支援センター、児童相談センター、児童発達支援センターなどの相談窓口を利用しましょう。

療育とは

サポートの基本は「療育」(治療教育)と呼ばれるもので、主に、人との関わり方を学ぶことです。「療育」は、発達支援センターなどの公的な施設や民間の施設のほか、医療機関などに併設された施設でプログラムが提供されています。少人数のグループで、遊びや作業などを通して集団活動の中でのルールを学んだり、コミュニケーション能力を身につけます。適切な支援と周囲の理解により、子どもは生活上の支障を感じにくくなり、自己肯定感が高まって二次障害の予防につながります。

サポートのポイント

自閉スペクトラム症の子どもは、その特性から、親に叱られたり、友達から仲間外れにされることが多く、不安障害などの二次障害を起こしやすくなります。日常生活での困難を軽くし、二次障害を防ぐためにも、適切なサポートが必要です。

発達障害は個性や特性に近いものなので、家族や周囲の人は、治さなくてはいけないと思わないことが大切です。「障害」ではなく「違い」と捉え、その子にあった対応方法を見つけ出すようにします。

自閉スペクトラム症 サポートの例

サポートのポイントは、その子の「いいところ」を見つけて、手放しでほめて自信を持たせることです。「頑張ったね」「上手だね」などのストレートな言葉で、努力したこと自体をほめます。また、「抱きしめる」「ごほうびをあげる」など、言葉以外でほめることもポイントです。家族はもちろん、学校や幼稚園、保育所など、子どもの周囲の人たちがチームを組んで、その子の個性や特性に合ったサポートの方法を見つけていきましょう。

サポートのポイント

例えば、極度に興奮してしまった場合には、「落ち着くグッズ(母親のタオルなど)を持たせる」「別室に移動させ、落ち着くのを待つ」「以前興奮した場面と同じような場面になることを避ける」などの対応が考えられます。

薬による治療

薬による治療

自閉スペクトラム症を根本的に治す薬や方法は現時点ではありませんが、二次的に生じる症状に対して薬が使われることがあります。自閉症の子どもがてんかん発作を起こす場合は「抗てんかん薬」、激しいパニックを起こす場合は「抗不安薬」などが処方されます。これらは、子どもたちが社会生活をしやすいように症状を軽減させるために使います。

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詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2018年11月 号に掲載されています。

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