周囲で起こりやすいトラブル


発達障害の人と一緒に仕事や生活をしていると、さまざまなトラブルが起こりがちです。
大人の発達障害はADHD(注意欠如・多動症)とASD(自閉スペクトラム症)が中心ですが、ADHDの場合「仕事でミスが多い」「約束を守れない」「聞いた話を忘れる」「よけいなことを言う」など、ASDの場合「チームプレーができない」「仕事のやり方を変えない」「人の話を聞こうとしない」「興味のないことには関心がない」などです。

こうしたトラブルがあると、周囲の人はつい「なんでできないの?」「空気が読めないね」などと叱責してしまいます。しかしそう言われても、発達障害の人は とまどうばかりで、自分の特性に対して前向きになれなくなってしまいます。
特性を理解しサポートを
そこで、周囲の人がまず知ってほしいのは「発達障害は生まれつきの特性であり、本人の努力ではなかなか変えられない」ということです。そして、ADHDやASDの人は何が苦手でどう困っているのかをよく理解し、できるだけサポートをしてください。
具体的には次のようなサポートです。

ADHDの人には、職場では「指示は文書にして伝える」「一度に多くのことを頼まない」
「締め切りや約束には前もって声をかける」など。家庭では「スケジュールや持ち物を一緒に確認する」「過度に集中しないよう見守る」などです。

ASDの人には、職場では「指示はあいまいにせず伝える」「指示を急に変更しない」「音や光に過敏な人には配慮する」など。家庭では「対人的なルールを伝えておく」「失礼な言葉を聞いたら指摘する」などです。
ADHDやASDの特性そのものは変化しませんが、こうしたサポートがあれば、本人は仕事や家事がしやすくなり、周囲との関係もスムーズになっていきます。
なお、発達障害の人が親子や夫婦などの関係にあると、強く衝突したり互いに疲れきったりしがちです。家族だけでサポートできない場合は、医療機関や行政機関に相談することや、過剰な負担にならないよう少し距離を置いてみることも必要です。
こんなサポートがうれしい
具体的にどんなサポートが発達障害の人はうれしいのでしょう。

ADHDの北村さん(仮名)は、仕事の連絡は口頭だけでなく必ずメールでもらうようにしています。以前は聞いたことを覚えていられず「言ったでしょ?」「すみません」ということが続きました。そこで上司が「指示が見えるようにすればいい」と考えました。現在ではメールなどで何をすべきかそのつど確認し、支障なく仕事ができています。

同じくADHDの天野さん(仮名)は、ブライダル関連の電話受付をしていますが、予約が多いとパニックになりがちです。「頭の中も目の前のカウンターも散らかって、どこから手をつけていいのかわからなくなってくると、上司が飛んできて、これを先にやったほうがいい、私はこれを代わろうと、声をかけてくれます。どうにか仕事が進められます」
ASDの人たちはこんな例を挙げています。

「大学時代あるサークルで、周囲の人が自分に何かしてほしいときに、明確にこれをしてくださいと指示してくれたのが、ありがたかった」

「調整役がいてくれるとうれしい。この人はこういう考えでこういう行動を取ったんだよと中立的に相手に伝え、お互いのわだかまりを調整してくれると、すごく助かるんです」
特性に合った仕事を任せる
発達障害の人には、特性に合った仕事をしてもらうことも、重要なサポートになります。
ADHDの人には「好奇心が強い」「創造力がある」「フットワークが軽い」などの特性があるため、「クリエイティブな仕事」「営業の仕事」などが適しています。長時間同じ作業を続けるような仕事はあまり向いていません。
ASDの人には「細部にまで目が行き届く」「数学的・論理的な思考が得意」などの特性があるため、「経理や財務管理などの事務」「プログラマー」「研究職」などが適しています。常に人とやりとりするような仕事はあまり向いていません。
可能ならそうした部署に配属したり、そうした仕事を担当してもらうといいでしょう。