そもそも「ひきこもり」とは?「6か月以上、外出していない」ことが目安


現在、ひきこもりの状態にある人は全国でおよそ115万人いると考えられています。男性のほうが多く、また40歳以上の人が半分以上を占めるとされています。
厚生労働省は、「ひきこもり」を次のように定義しています。
【ひきこもりの定義】
「就学、就労、交遊などの社会的参加を回避し、原則的には6か月以上にわたって、おおむね家庭にとどまり続けている状態」


九州大学病院をはじめとする研究グループでは、対策をより早く始めるために、この状態が3か月以上続くものをひきこもりの“前段階”と考えています。
また、ひきこもりの状態がどの程度深刻であるかを知るための基準となるように、ひきこもりを3つの段階に分けることを提案しています。
さらに、ひきこもりによって「眠れない」「食欲がない」などの問題や、家族関係や経済問題などの日常生活における支障があり、さらに本人や周りの人が苦悩を抱えている場合を、特に「病的ひきこもり」と捉えます。

ひきこもっている人たちが抱える苦悩として、
「社会に居場所がなくてつらい」
「自分はダメ人間」
「外に出たいこともあるけど、人の目が気になって出られない」
「なまけていると思われるのがいや」
などといった声があります。
一方で、
「することがないから家にいるだけ」
「苦しい現実から逃れられたのでつらくない」
など、本人がつらさを感じていないケースもあります。
しかし、ひきこもりの状態が長く続くと、つらさや寂しさを感じて苦しむ人も多いので、注意して見守る必要があります。
ひきこもりの要因
ひきこもりのきっかけには、さまざまな要因や背景があると考えられます。
対人関係
その一つは対人関係。一般に学校や職場の対人関係での挫折や不信感が、ひきこもりにつながりやすいといわれています。ひきこもりの人の中には、中学校や高校で不登校を経験している人が少なくありません。また、退職や解雇の経験などをきっかけにひきこもることもあります。
家族との関係については、なかなか一概に言うことはできません。ただ、
「幼少期から母親との結びつきが強い一方で、父親の存在感が薄い」
「長男で周りからの期待が非常に大きくて、その期待に十分に応えられなかったと感じている」
という傾向が多くみられ、自立していく時期の家族関係の影響が考えられます。
また日本社会でよくみられる
「○○でないと恥ずかしい」
のような「恥」という意識の影響も考えられます。
その背景には、
「みんなと合わせなくてはならない」
という厳しい社会からの圧力があります(同調圧力)。
圧力に逆らえない一方で、合わせることも難しい場合に、ひきこもりにつながってしまうのかもしれません。
こころの病気や不調

一方で、心の病気や不調がひきこもりのきっかけになることがあります。ひきこもり自体は病気ではありませんが、さまざまな心の病気が関係していることもあるのです。
うつ病
意欲が低下して、以前は楽しめたことが楽しめなくなります。また、「自分はだめだ」「申し訳ない」という過剰な罪悪感をもちやすく、外に出たいと思わなくなります。「眠れない」「眠り過ぎる」などの症状があると、昼夜が逆転して通学や通勤が難しくなります。
社交不安障害
「嫌われているのではないか」「恥ずかしい思いをするのではないか」などの不安に襲われます。それが原因で、ひきこもりになることがあります。
発達障害
子どものころからコミュニケーションが苦手だったり、落ち着きがないという傾向があります。そのため、学校で孤立したり、いじめにあったりして不登校になったり、成人してからも対人関係が苦手で、ひきこもることがあります。
統合失調症
妄想や幻覚・幻聴、意欲の低下などの症状があるため、ひきこもりと似た状態になりやすいといえます。
このように、ひきこもりになるきっかけや背景はさまざまですが、ひきこもっていると、自分を肯定できず、生きづらさを強く感じたりするものです。前述した心の病気の有無にかかわらず、多くのケースで心理的・社会的な支援が必要となります。
まずは、ひきこもり地域支援センターに相談

ひきこもりの状態にある人やその家族の相談窓口として、ひきこもり地域支援センターが都道府県や政令指定都市に設置されています。センターでは、専門のコーディネーターが医療、雇用、福祉などの機関や家族会などと連携して支援を行っています。
電話相談を行っていたり、センター内にひきこもりの人たちが交流できる〝場〟を設置しているところもあります。
医療機関に相談する場合は、精神科や心療内科などを受診するのが一般的ですが、ひきこもりの問題に十分対応できる医療機関は、まだ一部に限られています。まずはひきこもり地域支援センターで情報を得るようにしましょう。
中高年化・長期化するひきこもり

ひきこもりの人たちのうち、約61万人が40〜64歳とされています。
ひきこもりの問題は2000年前後から注目されるようになりましたが、当時は不況による就職難もあり、若い年代が中心だと考えられていました。
しかし現在は、中高年にもひきこもりが多く、またひきこもりの期間が長期化しています。その結果、80歳代の親と50歳代のひきもりの子どもが同居する「8050問題」と呼ばれるようなケースが増えており、大きな社会問題となっています。

