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【被災地の声】珠洲市 路線バス再開 避難先から出勤する運転手 「地元から逃げたくない」稲荷博仁さん

  • 2024年02月15日

2024年1月1日に発生した、石川県能登半島地震。

石川県によりますと、避難所に避難している人は、14日午後2時の時点で、519か所で合わせて1万3164人となっています。

珠洲市では、13日から路線バスが再開しました。

運転するのは、避難先から出勤してきた運転手たちでした。

ほとんどの運転手が被災…

石川県珠洲市で、13日から路線バスが再開しました。

再開したバスは、被災した運転手たちが運行を支えています。

「すずバス」の稲荷博仁さん(68)は、40年以上バスの運転手として働いてきました。

今回の地震で自宅は基礎にひびが入るなどの被害を受けました。

稲荷さんの自宅

稲荷博仁さん
「中がこんなふうに、全然手付かずでこのままです」

いまは市内の避難先に身を寄せています。

自宅から、服や下着など最低限の荷物を持ち込み、職場の同僚から譲ってもらった布団で寝泊まりしながら勤務を続けることにしています。

「朝はパンを食べ、昼と夜は買ってきた弁当を食べる毎日です。自宅に戻れないさみしさはありますが、地元から逃げたくないという思いです」

バスも津波で被害受け運休

「すずバス」は珠洲市からの委託を受けて市内の8つの路線を運行していたバスです。

今回の地震では、9台あるうち2台のバスが津波で使えなくなるなどの被害を受けました。

市内の道路も多くが通行止めとなったため、すべての路線で運休が続いていました。

そして道路の一部が復旧したことなどから13日、試験的に運行を再開しました。

再開したのは、学校や病院などを結んでいる5つの路線で、道路状況に応じてルートを変更しながら運行します。

「息抜きしたいと思って」

被災した人たちからは、再開を求める声が多く寄せられました。

市役所での手続きや買い物、それに通院など、移動の手段がない人たちが再開を待っていました。

13日に再開した路線のうち、海沿いの地区を走るバスには、買い物に行く人などが乗り込み市の中心部に向かっていました。

乗っていた81歳の女性は、いまは避難所に身を寄せているということです。

81歳女性
「うちは屋根が全部つぶれてだめなんですよ。きょうは、バスが久しぶりに動くので、はよ朝にならんかなと思って、きょう楽しみにしとったんです。すごい気分が楽になって」

スーパーまで買い物に出かける75歳の女性
「地震の前はほとんど毎日乗っていました。このバスがないと、わたしら運転免許もっとらんもん、ちょっと困ったがね。冷蔵庫空っぽだし、なんか買ってきて、じいちゃんと二人で食べようかなと」

病院に向かうために利用した78歳の女性
「地震の前から通院を続けていたので、再開されて安心しました」

「少しずつ元に戻っていけば」

火曜と木曜は、避難所と市役所などを結ぶ路線も臨時に運行することにしていて、利用はすべての路線で無料だということです。

道路沿いにも倒れた住宅が目立ち、車窓を流れる街の風景は、地震前とは一変しました。

それでも「すずバス」の上野明男事務局長は、運行の再開は運転手自身にとっても大事なことだと話しています。

「すずバス」上野明男 事務局長
「ドライバーに笑顔が戻ったんですよ、本当に。ほとんどが避難所から出勤しているような厳しい状況ですが、公共交通としての責務を果たしていきたいです。道路状況がよくなく、本数が少なかったり予定よりも遅れたりする場合もあるかもしれませんが、震災前のように、通学や通院などに大いに利用してもらえればと思います」

段差では徐行したり、道路に倒れ込んだ建物をよけたりしながら、ゆっくり走ります。

避難先から出勤している運転手の稲荷博仁さんは、運行が再開されたことについて、こう話していました。

稲荷博仁さん
「再開はうれしいことです。あちこち壊れたままですが、前に進んでいるのかなと思います。少しずつ元に戻っていけばと思います」

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