2023年12月22日 (金)【みえDE川柳】 お題:キラキラ
呼出が困るキラキラ力士名/金子鋭一 さん
現在活躍中の力士でキラキラの四股名といえば、天空海(あくあ)と阿武咲(おうのしょう)が横綱級か。漢字を見ただけでその読み方を言い当てることは難しいし、「どうやったらそう読めるの?」と考えてしまう。翔猿(とびざる)や美ノ海(ちゅらのうみ)もキラキラっぽいが、こちらは一度読み方を聞けば納得できる。
この句は、「呼出が困る」と具体的に詠んだことが成功した。実際に呼出が困ったりすることはないのだろうが、大げさに言って納得させるのも川柳のおもしろいところである。
宝石も値札のゼロもよく光る/なるほどマン さん
宝石が光るのは当たり前だが、「値札のゼロ」を並べたことで、思わず笑ってしまう句になった。冷やかしで見ているならまだしも、購入を検討しているなら、宝石よりゼロの列の方がより光って見えたかもしれない。
二つのものを並べるときは、意外性のあるものやできるだけ遠いものを並べるとおもしろい句になることが多い。この句の「宝石」と「値札のゼロ」は、「理想」と「現実」のような落差や対比があり、うまい取り合わせになった。
光害の街に疲れている夜空/田舎のマダム さん
「光害」は「ひかりがい」と読み、過剰または不要な光による公害のこと。星が見えないなど天体観測への妨げになるほか、動植物に影響を与えることもあるそうだ。もちろん資源の無駄遣いにもなる。
夜空は、人工の照明に負けないように光を届けようと懸命に月や星を光らせ、疲れ果ててしまったのだろうか。「疲れている夜空」という夜空の擬人化がうまく、それによって光害をやんわりと批判しているのが感じられる。
<入選>
のど自慢キラキラ光る貸衣装/だんでらいおん さん
冬銀河 トナカイたちを張り切らせ/汐見 岬さん
買う時は瞳キラキラ宝くじ/ぷいこると さん
太陽と戦っている霜柱/ムギ さん
キラキラの一番星を観る案山子/アカエタカ さん
絵に描いた餅をキラキラ撒く選挙/福村まこと さん
塗り替えるたびにキラキラする記録/中原政人 さん
いのちキラキラトンネルの向こう側/かざはな さん
つながったネギも楽しい新夫婦/市川勲 さん
ばあちゃんがキラキラしてる七五三/ゆきち さん
橋倉久美子先生
393句のご投句をいただきました。時期的に、クリスマスやイルミネーションの句が多いかと予想していましたが、それほどではありませんでした。またこのような4音の擬態語(オノマトペ)の場合、「キラキラと」と上五に持ってきがちなのですが、そのような句は案外少なく、中七で「キラキラ」を使ったり、「キラキラ」を読み込まなかったりと、さまざまな作り方の句があり、工夫されていることが感じられました。
ただ、よくある発想の他、「キラキラ」の使い方に無理があったり、「キラキラ」した感じが伝わって来なかったりする句もありました。「意外性はあるが納得させられること」を見つけたいですね。
投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:50