焼津自慢 酒蔵 山田英彦さん「水産の技術でいい酒 安定して造れる」
- 2023年10月18日
番組やニュースで地域のディープな魅力を掘り下げる「だもんで」シリーズ。今度は焼津市にお邪魔します。カツオやマグロの遠洋漁業で知られる焼津。魅力はそれだけではありません。地元の人たちからの聞き取りをもとに、地域に根づく“だもんで焼津自慢”をご紹介します。1830年に創業した老舗の酒蔵は、雑菌のないクリーンな酒造りを目指しています。醸造部長の山田英彦さんは「魚の町ならではの技術で、いい酒が安定して造れる」と語りました。
7か月泊まり込みで酒造り
焼津市で唯一の酒蔵は、200年近い歴史。もともとは庄屋(しょうや)で、余った米で酒造りをしていたものが、時代とともに専業に変わっていったと考えられています。その老舗の酒蔵で、ことしも10月6日から新酒造りが始まりました。岩手の南部杜氏(なんぶとうじ)をはじめ、10人あまりが7ヶ月間、泊まり込みで取り組んでいます。
麹(こうじ)と酵母のバランス
味の決め手は何ですか?
酒造りの工程はすべてつながっているのでどれも大切です。でも1番大事なのは麹(こうじ)の甘さと酵母の香りのバランスです。米は最高品質のもの、水は大井川の軟水を使っていますが、米や気温などに左右されます。ことしは猛暑で米が固いので、水につける時間を長くするなど調整が必要です。酒造りは欲があるとうまくいかない、無欲だといいものができたりします。微生物相手で難しいんですが、その分、とてもやりがいがあるんです。
その麹と酵母のバランスの決め手となる酒母(しゅぼ)。酒の原液と呼ばれていました。最初はほかの菌を抑えるため冷やし、その後じょじょに温度を上げて酵母菌を育てるそうです。
この日は、麹室(こうじむろ)で、“切り返し”の作業を見せてもらいました。切り返しとは、麹の中と外の温度や水分を均一にするため、麹を手で細かくしてかき混ぜる作業のことをいいます。品質を安定させるには欠かせない作業だそうです。
水産の技術で酒質が安定
こだわりは何ですか?
うちは、「洗いに始まり、洗いに終わる」というほど、米や道具を徹底して洗います。雑菌のないクリーンな酒を目指しているからです。それを可能にしている1つが、焼津らしい、水産業の冷蔵技術です。仕込み蔵は、魚の冷蔵庫のように全面ステンレスで覆っています。それまではタンクを1つ1つ、温度管理していましたが、この技術で部屋全体を同じように冷やすことができます。酒質がぐんと安定し、導入した昭和の終わりころとしては、おいしい酒ができる画期的な方法でした。質のよい酒造りに転換したたまもので、部屋全体を丸洗いもできるんです。
地元に愛される酒
やっぱり自慢は焼津の味ですか?
海外や東京にも出荷していますが、地元に愛されるお酒がとても重要です。焼津らしい味を求めているわけではありませんが、酒を造っているみんなは一緒に生活し、夕食にはマグロやカツオを食べているので、自然にそうしたものにあう酒をイメージしているかもしれません。この土地にあう酒なんでしょうね。名前は焼津の自慢になりたいと名付けられています。人柄のいい焼津で、仲間が一致団結して、お客さんにおいしいと言ってもらえる酒を日々努力を惜しまず造り続けたいと思います。
新酒の出荷は11月下旬から順次始まるそうです。
シリーズ「だもんで、焼津市。」
テレビとWEBで焼津市の魅力をたっぷりとお伝えします。
ニュース番組「たっぷり静岡」
10月25日(水)~27日(金)(午後6時10分~)
▽焼津港の元漁具倉庫で始まる異業種交流
▽焼津水産高校と特別支援学校の生徒たちの支え合い
▽近海の魚も自慢、おいしい定置網漁の魚たち
映像コーナー「みーつけた」でも地域の表情をご紹介します。
地域番組「たっぷり静岡+」
10月27日(金)(午後7時半~)
遠洋漁業で知られる焼津港で働く人たちを支える弁当店。安くてボリューム満点な弁当は港を行き交う人々のおなかも心も満たします。弁当店を通して人々のふれあいを見つめます。大井川港で年に1度開催される釣り大会。およそ200人が参加しました。どんな大物が釣れたのでしょうか。緑あふれる歴史集落「花沢の里」。江戸時代の町並みが残されています。山の恵みとともに生きる豊かな暮らしを映像で切り取ります。
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