天間基地の辺野古移設
設計変更を沖縄県に申請

沖縄のアメリカ軍普天間基地の名護市辺野古への移設計画をめぐって、防衛省は埋め立て予定地にある軟弱地盤を改良するのに必要な設計変更を21日朝、沖縄県に申請しました。沖縄県は変更を認めない方針で、国と県の対立は続くことが予想されます。

アメリカ軍普天間基地の移設計画をめぐって、防衛省は埋め立て予定地にある軟弱地盤を改良するため、設計の見直しを行ってきました。

技術的な内容や環境に与える影響について専門家から意見を聞いてきましたが、いずれもおおむね問題がないという結論を得ました。

一方、埋め立てをめぐって沖縄県が国を訴えた裁判では3月、県の敗訴が確定しました。

こうしたことから、防衛省は申請に向けて必要な準備が整ったとして、軟弱地盤を改良するのに必要な設計変更を21日午前9時前に、沖縄県に申請しました。

新たな計画では完成まで工期がおよそ12年、経費がおよそ9300億円かかるとしていて当初、早ければ2022年度に可能になるとしていた普天間基地の返還は、2030年代に大幅にずれ込む見通しです。

ただ沖縄県は移設の阻止に向けて変更を認めない方針で、国と県の対立は続くことが予想されます。

菅官房長官「政府は全面返還実現へ全力」

菅官房長官は、閣議のあとの記者会見で「申請書については、沖縄防衛局で有識者の助言などを得つつ十分な検討を行ってきたものであり、沖縄県で適切にご対応いただけると思っている。政府としては、引き続き、普天間飛行場の1日も早い全面返還を実現するため全力を尽くす考えだ」と述べました。

河野防衛相「沖縄県が適切に判断」

河野防衛大臣は記者会見で「用意が整ったので申請書を提出した。『普天間飛行場の危険性の除去は1日も早く』ということは、沖縄県も国も思いは同じだと思うので、沖縄県には、適切にご判断いただけると思う」と述べました。

また河野大臣は沖縄防衛局が移設工事関係者の新型コロナウイルスの感染確認を受けて、工事を中断していることについて「一部の事業者から、工事中止の申し出もあったということで、中断の状態を延ばすとの報告を受けている。今後は状況を見て、沖縄防衛局が判断することになると思う」と述べました。

沖縄 玉城知事「断じて容認できない」

沖縄県の玉城知事は21日午後、県庁で記者会見を開き、「政府が、県が求める対話に応じることなく、県民に十分な説明を行わないまま、埋め立て工事を行うための手続きを一方的に進めようとするのは、到底、納得できるものではない」と政府の対応を批判しました。
そのうえで、「申請書が提出された以上、内容を精査したうえで法令にのっとり、厳正に対応していきたい」と述べました。

また、県内で新型コロナウイルスへの感染が相次いで確認され、県が対応を迫られている中での申請だったことについて、「提出ありき、スケジュールありきで申請が提出されたことは、現下の状況を全く理解しておらず、全くもって遺憾であり、断じて容認できない」と強く批判しました。

経緯は…

防衛省は2018年12月、名護市辺野古の埋め立て予定地に土砂の投入を開始し、浮上してから20年以上になる移設計画は、新たな段階に入りました。

これに対して、沖縄県の玉城知事は「県民の怒りはますます燃え上がる」と述べ、強く反発しました。

その1か月後の去年1月、当時の岩屋防衛大臣は、埋め立て区域の4割余りで改良が必要な軟弱地盤が見つかったことから、「どのような工法が最も適切か判断し、必要な手続きを適正に取る」と述べ、沖縄県に、設計の変更を申請する考えを表明します。

政府は、軟弱な地盤を強固にするためには難しい工事が予想されるとして去年9月、土木や地質などの専門家で作る検討会を発足させてくいの打ち方などについて6回にわたって意見を求めましたが、異論は出されませんでした。

去年12月の検討会で、防衛省は設計の見直しにより、完成までの工期がおよそ12年、経費が9300億円に上るとした概略を示しました。

これにより早ければ2022年度に可能になるとしていた普天間基地の返還は、2030年代に大幅にずれ込む見通しとなりました。

一方、この間、司法の場でも動きがありました。

去年7月、沖縄県は辺野古への移設に反対して、2018年、県が行った埋め立て承認の撤回を国土交通大臣が取り消したのは違法だと訴えました。

この訴えについて最高裁判所は3月、退ける判決を言い渡し、沖縄県の敗訴が確定します。

政府は設計の見直しについて、専門家から異論が出されず、手続きについても裁判で正当性が認められたとして21日、沖縄県に対し設計の変更を申請しました。