島付近 韓国がロシア機
に警告射撃「領空を侵犯」

韓国軍は韓国が領有権を主張する島根県の竹島付近の空域でロシア軍機1機が「領空を侵犯した」として、戦闘機による警告射撃を実施したと発表しました。韓国政府は事態を受けてロシア政府に厳重に抗議したとしています。

韓国軍の合同参謀本部によりますと、23日午前9時9分と9時33分に、ロシア軍のA50早期警戒管制機1機が2度にわたって韓国が領有権を主張する島根県の竹島付近の空域で「領空を侵犯した」ということです。

これを受けて韓国空軍のF15K戦闘機とKF16戦闘機が緊急発進して警告射撃を実施し、1回目が80発余り、2回目が280発余り、合計で360発余りの実弾を発射したとしています。

この後、ロシア軍機は午前9時37分に「韓国の領空」から、そして9時56分には韓国の防空識別圏から出たということです。

またこれに先立って午前6時44分から9時4分の間に、中国軍のH6爆撃機2機が韓国の防空識別圏に入り、いったん圏外に出た後に日本海の上空でロシア軍のTU95爆撃機2機が合流して、合わせて4機で再び韓国の防空識別圏を通過したということです。

韓国軍によりますと、ロシア軍機が韓国が領空と主張する空域を侵犯したのは初めてで、韓国大統領府はロシア政府に対し「このような行為が繰り返される場合、はるかに強力な措置をとることになる」として、厳重に抗議したということです。

韓国外務省 中ロ大使を呼び抗議

韓国外務省のユン・スング(尹淳九)次官補は、23日午後、在韓ロシア大使館のボルコフ臨時代理大使を呼びました。

そして、「急きょ呼んだのは、厳重な抗議を伝え、再発防止を求めるためだ」と述べ、厳重に抗議しました。

ボルコフ臨時代理大使は、記者団の前では何も語らずに韓国外務省をあとにしました。

これに先立って、ユン次官補は韓国に駐在する中国の邱国洪大使を呼び、中国軍機が韓国の防空識別圏に進入したことについて、抗議しました。

韓国国防省も韓国駐在のロシアと中国の武官呼び抗議

この問題で韓国国防省は、韓国に駐在するロシアと中国の武官を呼んで抗議しました。

韓国軍は中国軍の爆撃機2機とロシア軍の爆撃機2機が韓国の防空識別圏内に入り、これとは別のロシア軍の早期警戒管制機が「韓国の領空を侵犯した」としています。

これについて中国大使館の駐在武官は、メディアの取材に「1つ言及しなければならないのは、防空識別圏は領空ではない」と述べました。

一方、ロシアの武官は取材に応じませんでした。

ロシア国防省「領空侵犯していない」

韓国が領有権を主張する島根県の竹島付近の空域で、ロシア軍機による「領空侵犯があった」と発表したことについて、ロシア国防省は声明を出し「爆撃機は領空侵犯はしていない」と反論しました。

ロシアのインターファクス通信によりますと、ロシア国防省は23日、声明を発表し「ロシア軍のTU95爆撃機は計画どおり飛行した。島から25キロ以上離れ、国際法を順守して飛行しており、領空を侵犯してはいない」と反論しました。

一方で、韓国軍がTU95爆撃機ではなくロシア軍のA50早期警戒管制機が領空を侵犯したと主張していることについては言及していません。

そのうえでロシア側は「ロシア軍の爆撃機は韓国軍の2機の戦闘機から不用意に接近され、ロシア機の飛行経路を横切って安全を脅かされた」と述べて、韓国軍の対応を非難しました。

中国外務省「具体的な状況は分からない」

韓国軍が、ロシア軍機以外に中国軍機も韓国の防空識別圏に入っていたと発表したことについて、中国外務省の華春瑩報道官は、23日の記者会見で「具体的な状況は、はっきりと分からない。国防省に聞いてもらいたい」として具体的な状況は把握していないと述べました。

ロシア軍機と中国軍機

ロシア国営の航空機メーカーのサイトなどによりますと、ロシア軍のA50早期警戒管制機は全長およそ50メートル、最高速度は時速900キロで、大型レーダーを搭載しています。

一定の空域を監視し、空中の目標などを探知、追跡するとともに、指揮下にある戦闘機の航空管制や指揮統制を行う能力があり、ロシア軍が大規模に展開する前線などに配備されます。

また、TU95爆撃機は全長およそ50メートル、最高速度は830キロで巡航ミサイルを搭載することができます。TU95はロシア軍の主力の爆撃機で、モスクワの参謀本部の直轄で運用されています。

また、中国軍のH6爆撃機は全長およそ35メートル、最高速度1050キロで旧ソビエトのTU16爆撃機を国産化したものです。