児童手当拡充は来年10月から「こども未来戦略方針」決定

少子化対策の強化に向けて、政府は、13日、児童手当や育児休業給付の拡充などの具体策を盛り込んだ「こども未来戦略方針」を閣議決定しました。

今後3年かけて年間3兆円台半ばの予算を確保し、集中的に取り組む一方、財源は歳出改革などで確保するとしています。

持ち回り閣議で決定された「こども未来戦略方針」では、今後3年かけて年間3兆円台半ばの予算を確保し、「加速化プラン」として集中的に取り組みを進めるとしています。

児童手当は所得制限を撤廃 対象を高校生まで拡大

具体的には、
▼児童手当は、所得制限を撤廃した上で対象を高校生まで拡大し、
◇3歳未満は1人あたり月額1万5000円、
◇3歳から高校生までは1万円を支給するほか、
◇第3子以降は年齢にかかわらず3万円に増やすとし、
来年度中に実施できるよう検討するとしています。

また▼2026年度をめどに、出産費用の保険適用を含めた支援のさらなる強化を検討するとしています。
高等教育にかかる費用負担も軽減
高等教育にかかる費用負担の軽減策として、
▼授業料の減免や給付型の奨学金の対象を、来年度から理系の大学生や実家が多子世帯の学生などは、世帯年収が600万円程度までの中間層に広げるとしています。

▼親が就労していなくても、子どもを保育所などに預けられる制度の来年度以降の本格導入を目指すとしています。

▼両親とも育休を取得した場合、 最長4週間、手取りの収入が変わらないよう、2025年度からの育児休業給付の給付率の引き上げを目指すとしています。

さらに、選択的週休3日制度の普及なども追加されました。

必要な財源は「支援金制度」創設や「こども特例公債」発行

一方、必要な財源は、社会保障費の歳出改革に加え、社会保険の仕組みを活用して、社会全体で負担する新たな「支援金制度」の創設などで2028年度までに確保するとし、一時的な不足分は「こども特例公債」を発行して賄うとしています。

また、徹底した歳出改革などを通じ、国民に実質的に追加負担が生じないことを目指すとしています。

そして、2030年代初頭までに、こども家庭庁の予算を倍増することを目標に掲げています。

政府は、今後、さらに支援策や財源確保策の具体化を進め、年末までに「こども未来戦略」としてまとめる方針です。

【詳しく】岸田首相会見 “来年10月分から児童手当拡充”

少子化対策の強化に向けた「こども未来戦略方針」を決定したことを受けて岸田総理大臣が、記者会見し、所得制限の撤廃などの児童手当の拡充策を来年10月分から実施するほか、2026年度から出産費用の保険適用を始める方針を明らかにしました。

一方、財源の確保にあたっては、国民に実質的な追加負担が生じないよう歳出改革を徹底すると強調しました。

岸田総理大臣は、記者会見の冒頭「未婚率の上昇、出生率低下の大きな要因は、若い世代の所得の問題だ。所得を伸ばし、若い世代の誰もが『結婚やこどもを生み育てたい』という希望がかなえられるよう、将来に明るい希望をもてる社会をつくらない限り、少子化トレンドを反転することはかなわない」と指摘しました。

そして、今回の戦略方針は、長年、指摘されながら実現できなかった経済的支援の拡充を思い切って実現するものだとして経済成長への取り組みとあわせて少子化対策の強化を図ることで、若者や子育て世代の所得の向上に全力を注ぐと決意を示しました。

また今後3年間で日本の子ども・子育て予算は、こども1人あたりの家族関係支出で見て国際的にもトップ水準となり、画期的に前進すると強調しました。

さらに、こども家庭庁予算も5割以上増加すると説明し、2030年代初めまでに倍増を目指す考えを重ねて示しました。

“来年10月分から児童手当拡充”

そして経済的支援の柱の1つとなる児童手当について、所得制限の撤廃や高校生までの支給対象の拡大、それに第3子以降の3万円への増額といった拡充策を来年10月分から実施する方針を明らかにしました。

“2026年度から出産費用 保険適用”

また、出産費用の保険適用などの出産支援について、2026年度から開始する方針も表明しました。

“育児休業給付の給付率を引き上げ”

一方、社会全体の構造や意識を変えることも重要だとして、両親ともに、産後の一定期間に育休を取得した場合、手取りの収入が変わらないよう育児休業給付の給付率を引き上げることなどを説明しました。

そして「日本の社会は子育てに必ずしも温かくないと言われる。社会の意識を改革し、社会全体で子育て世帯を応援する社会を皆さんとともにつくっていきたい」と呼びかけました。

“財源確保 歳出改革などによって確保”

一方、少子化対策を実行するための財源について「財源確保にあたっても、経済成長を阻害し、若者・子育て世代の所得を減らすことがないよう、まずは徹底した歳出改革などによって確保することを原則とする」と強調しました。

その上で歳出改革などの取り組みを徹底することによって、実質的に追加負担を生じさせないことを目指す方針に揺るぎはなく、財源の具体化を先送りしたとの指摘はあたらないと反論しました。

そして、13日決定した「こども未来戦略方針」のさらなる具体化の検討を進め、必要な制度改革の法案を国会に提出する考えを示しました。

最後に、若い世代の人口の急激な減少が始まるとされる2030年までが少子化の傾向を反転させるラストチャンスだと重ねて指摘し「不退転の決意をもって、経済成長と少子化対策を『車の両輪』として、スピード感を持って実行していく」と決意を強調しました。