解説「こども大綱」って何?
どう具体化するの?

こども政策の方向性を定める初めての「こども大綱」の策定に向けて、有識者らの審議会が1日夕方、政府に答申を提出しました。政府は答申に沿った内容の大綱を、今月中をめどにまとめることにしています。「こども大綱」にはどんなことが盛り込まれるのか?そして、こども政策として具体的にどのような取り組みが行われるのか、解説していきます。(三藤紫乃)

Q.「こども大綱」が策定されることになった背景は?

A.「こども大綱」を策定する背景には、いじめや自殺、貧困など、子どもの抱える課題が複雑化し、従来の省庁縦割りでは対応が追いつかないという強い問題意識があります。

Q.どんなことが盛り込まれるの?

A.ことし4月に発足したこども家庭庁は、今後5年程度の政策の方向性を定める初めての「こども大綱」を策定する方針で、諮問を受けて検討してきた有識者らの審議会が答申をまとめ、1日夕方、加藤こども政策担当大臣に提出しました。

答申では、すべての子どもや若者が幸福な生活を送ることができる「こどもまんなか社会」の実現を掲げ、ライフステージに応じた切れ目ない支援の必要性を強調しています。

そして施策の重点項目として▼子どもの貧困対策や▼障害児などへの支援、▼学校での体罰と不適切な指導の防止のほか▼児童虐待や自殺を防ぐ取り組みの強化などを盛り込むよう求めています。

また効果を検証しながら政策が進められるよう▽子どもや若者の生活への満足度や▽将来への希望の高さなどを数値化した目標を設定すべきだとしています。

Q.今後の課題は?

A.政府は、答申に沿った内容の「こども大綱」を今月中をめどにまとめ、一体となって具体策の検討を急ぐ考えです。
ただ、厳しい財政事情に加え高齢化への対応も待ったなしで、子どもに重点的に予算を振り向けるのは容易ではありません。安定財源をどう確保し実感の伴う成果を出せるのかが問われることになります。

Q.こども政策、これからどう具体化していくのか?

A.政府が6月に決定した「こども未来戦略方針」では、2030年までが少子化の傾向を反転させるラストチャンスだとして、今後3年間を集中取り組み期間としています。

そして「経済的支援の強化」、「すべての子どもと子育て世帯の支援の拡大」、夫婦どちらかがキャリアを諦めずともに仕事も育児もできる「共働き・共育ての推進」などに取り組むとしています。

Q.「経済的支援の強化」とは、具体的に何を行うのか?

A.「経済的支援の強化」では
▼妊娠・出産をした際に10万円相当を給付し、
▼出産育児一時金はすでに50万円に引き上げています。

また▼児童手当を高校生まで拡大し、所得制限も撤廃して第3子以降を3万円に増額するほか、
▼高等教育にかかる費用の負担軽減などが盛り込まれています。

Q.「すべての子どもと子育て世帯の支援の拡大」については、どのような支援が行われる?

A.「すべての子どもと子育て世帯の支援の拡大」では、
▼産前・産後ケアの拡充や、
▼親が就労していなくても子どもを保育所などに預けられる「こども誰でも通園制度」を導入します。

このほか▼子どもの貧困対策や、
▼障害のある子どもへの支援体制を強化することなどが盛り込まれています。

Q.「共働き・共育ての推進」では、何が検討されていますか?

A.「共働き・共育ての推進」では、長時間労働を是正し、男女がともに育児を行えるようにする第一歩として「男性育休は当たり前」になる社会を目指すとしています。

具体的には再来年度から両親がともに14日以上育児休業を取得した場合は、28日間を上限に給付率を引き上げ、手取り収入が実質的に10割となるようにすることや、子どもが2歳未満で時短勤務をしている人に対する新たな給付制度などが検討されています。

Q.必要な予算は?どう確保していくのか?

A.こうした取り組み内容の実現には、年間3兆円台半ばの予算が必要だとしています。
政府は医療保険を通じて、高齢者を含む幅広い世代や企業から新たな支援金を徴収する制度を創設する一方、医療や介護の歳出改革などで実質的に国民に追加負担が生じないよう目指すとしていて、子育て世帯では給付が拠出を大きく上回ると説明しています。
財源や支援策の具体化は年末にかけて本格化する見通しで、政府は来年の通常国会への、必要な法案の提出を目指しています。

政治部記者
三藤 紫乃
2017年入局。札幌局、帯広局で6年の北海道勤務を経て2023年、政治部に。
こども家庭庁を担当。総理番も兼務する。