神田財務副大臣を更迭 今後の政権運営にどう影響?内閣支持率は29%

岸田内閣でまた、副大臣が交代した。過去に税金を滞納していた神田財務副大臣が13日、更迭され、いまの国会で3人の政務三役が相次いで交代する事態となった。内閣支持率は、発足以降初めて30%を下回り、低迷している。今後の政権運営は? 最新の政局事情を解説していきたい。
(田尻大湖、徳丸政嗣)
※肩書きは当時 

Q.政務三役の交代は3人目だが、今後の岸田政権の行方はどうなる?

A.端的に言うと、政権運営は厳しさを増しそうだということになる。
自民党の幹部はこう話している。

「何をやっても、裏目に出ている」(自民党幹部)

Q.神田財務副大臣は、なぜ、13日というタイミングでの辞任となったのか?

A.批判が収まらず、国会審議にも影響が出かねないと判断したためだ。

更迭された神田財務副大臣

税理士資格を持つ神田財務副大臣は、自身が代表取締役を務める会社の土地や建物が税金の滞納により4度差し押さえを受けたことを先週、国会で明らかにし、陳謝したが、野党側が補正予算案などの審議を控え辞任要求を強めていた。

ただ、先週末の時点では、総理周辺はこう話していた。

「3人連続の辞任は避けたい」(総理周辺)

一方で、こう話す与党幹部も出始めていた。

「粘らず辞めた方がいい」(与党幹部)

そして、週末に地元に帰った自民党の議員らには、有権者から厳しい声が相次いだということだ。
さらに、神田氏が国会で虚偽答弁をした疑いがあるなどとする“続報”も12日夜から13日朝にかけて出てきて、「これ以上はもたない」と考え、更迭を決めたとみられる。

岸田総理大臣は、こう述べて陳謝した。

岸田総理

「任命責任については重く受けとめている。政治は結果責任だ。国民におわびを申し上げなければならないと思っている」

与党内からは政府の対応の遅れを指摘する声が出ている。

「先週のうちに更迭しておくべきだった」(与党内)

交代した3人の政務三役

いまの国会が召集されて以降、1か月足らずで3人の政務三役が相次いで交代する事態となり、与党内では、政権運営への影響は避けられないという懸念が広がっている。

Q.一方の野党側は?

A.野党側は引き続き岸田総理大臣の任命責任を追及し、攻勢を強める構えだ。

立憲民主党の泉代表は13日、こう述べた。

「辞任は当然だが遅すぎる。相次ぐ政務三役の辞任は異常事態で、全く適材適所ではなく、岸田総理大臣の任命責任も問われる。政権基盤の弱体化を嫌がったことが、辞任の遅れにつながったのではないか」

Q.今の岸田内閣の状況を国民はどう受け止めているのか?

A.NHKが、11月10日から3日間 行った、最新の世論調査の結果から見えてくると思う。

岸田内閣を「支持する」と答えた人は10月の調査より7ポイント下がって29%のグラフ

岸田内閣を「支持する」と答えた人は10月の調査より7ポイント下がって29%と、おととし10月の内閣発足以降初めて30%を下回った。

内閣支持率は、2012年12月に自民党が政権に復帰して以降で見ても、おととし8月の菅内閣の支持率と並び、最低の水準となった。

一方「支持しない」と答えた人は8ポイント上がって52%だった。

政府は、物価高に対応するため、所得税などを1人あたり4万円減税し、住民税が非課税の世帯には7万円を給付する方針だ。

、所得税などを1人あたり4万円減税し、住民税が非課税の世帯には7万円を給付する方針について世論調査のグラフ

これを評価するかどうか尋ねたところ、「大いに評価する」が5%、「ある程度評価する」が31%、「あまり評価しない」が34%、「まったく評価しない」が25%だった。

また、岸田総理大臣は、一連の経済対策を通じて、来年夏には所得の伸びが物価上昇を上回る状態をつくりたいとしているが、これに期待するかどうか尋ねたところ、「大いに期待する」が5%、「ある程度期待する」が25%、「あまり期待しない」が37%、「まったく期待しない」が29%だった。

経済対策への期待について世論調査のグラフ

Q.岸田総理は、年内の解散を見送る意向を固めたが、背景には、こうした内閣支持率の低迷が大きいのか?

A.そう思う。先月で衆議院議員の任期が折り返しとなったことも踏まえ、政権内では確かに年内の解散を模索する動きがあった。

岸田総理

しかし支持率回復も期待された内閣改造はふるわず、逆に副大臣や政務官が立て続けに辞任する事態になった。
また経済対策で打ち出した所得税の減税には、自民党内から次のような否定的な意見が相次いだ。

「唐突感がある」「効果に疑問がある」(自民党内)

官邸と党の隙間風を指摘する向きもある。
こうした状況を総合的に勘案して、岸田総理としては年内に解散に踏み切るのは得策ではないと判断したとみられる。

Q.岸田総理の解散戦略は?今後の焦点は?

A.与党内では政権への逆風はそう簡単には収まらないとの見方が強まっている。
自民党からは、次のような声も聞かれる。

「このまま解散を打てずに、来年秋の自民党総裁選挙を迎えるかもしれない」(自民党内)

ある与党幹部は、こうも話す。

「支持率が回復しなければ、総裁選挙に向けて政局になってもおかしくない」(与党幹部)

ただ岸田総理としては、求心力が低下したまま総裁選挙を迎えるのは避けたいところで、その前には何としても解散に踏み切ることができる環境を作り出したい考えだ。
ある政権幹部はこう語っている。

「減税を含めた一連の経済対策や賃上げなどで目に見える成果を出し、局面を変えたい」(政権幹部)

岸田総理

年明け以降、経済対策の効果や支持率の状況を見極めながら、解散のタイミングを探るものとみられる。岸田総理としては経済対策などに専念し国民の信頼回復につなげたい考えで、来年秋の総裁選挙に向けて政権浮揚を図れるかが焦点となる。

(11月13日「ニュースウオッチ9」などで放送)

政治部記者
田尻 大湖
平成16年入局。千葉局、広島局を経て政治部へ。その後、札幌局デスクを経て、現在、政治部官邸クラブ。
政治部
徳丸 政嗣
2001年入局。高松局を経て政治部。その後、広島局デスク、政治部外務省キャップなどを経て現在、官邸キャップ。