解説)補正予算案どうなる?
自民党派閥 政治資金問題は?

新たな経済対策の裏付けとなる今年度の補正予算案は先週金曜日に衆議院を通過し、今週から論戦の舞台が参議院に移った。自民・公明両党が今週半ばの成立を目指す一方、立憲民主党などは自民党の派閥の政治資金をめぐる問題などを引き続き追及する方針だ。今週の与野党の攻防の焦点について、解説していく。
(広内仁、藤家亜里紗)

Q.自民党の派閥の政治資金をめぐる問題、国会論議はどうなる?

A.野党側は攻勢を強めている。今週の参議院予算委員会でも厳しくただす方針だ。
ある立憲民主党の幹部はこう話している。

「自民党の古い派閥の体質が表れた問題とも言え、事実関係の解明が必要だ」(立憲民主党幹部)

Q.そもそも、今回の政治資金をめぐる問題とはどういうものか?

A.自民党の派閥の大きな収入源になっている、政治資金パーティーのパーティー券をめぐる問題だ。

法律では、こうなっている。

政治資金規正法では、政治資金パーティーを開く際、特定の団体などとの癒着を防ぐため、同じ人や団体から1回20万円を超える支払いを受けた場合、名前や金額などを収支報告書に記載しなければならない。

特定の団体などとの癒着を防ぐための規定だ。

ところが、自民党の5つの派閥は、おととしまでの4年間の政治資金収支報告書に、それぞれが主催した政治資金パーティーに20万円を超える支出をした団体の名前や金額など、あわせておよそ4000万円分を記載していなかったとして、大学教授が、会計責任者らに対する政治資金規正法違反の疑いで告発状を提出している。

「清和政策研究会」安倍派、「志帥会」二階派、「平成研究会」茂木派、「志公会」麻生派、「宏池政策研究会」岸田派の自民党の5つの派閥が、4年間の政治資金収支報告書に、あわせておよそ4000万円分を記載していなかったとして、大学教授が、政治資金規正法違反の疑いで告発状を提出したことを図解。

この5つの派閥は、「清和政策研究会」安倍派、「志帥会」二階派、「平成研究会」茂木派、「志公会」麻生派、「宏池政策研究会」岸田派だ。
岸田総理大臣の指示を受けて、それぞれ、収支報告書の訂正を行ったことを明らかにしている。

いずれも22日、
▽自民党安倍派の事務総長を務める高木国会対策委員長は記者団に対し「政治資金収支報告書を訂正したという確認はできた。重く受け止めなければならない」と述べた。
一方、訂正内容などについては「誰がどういう形で説明するのかも含めて、そういったことはまだこれからだ」と述べました。

▽自民党二階派の事務総長を務める武田 元総務大臣は記者団に対し、二階派については、2021年までの4年間に29件の政治資金収支報告書への記載漏れがあり、訂正を行ったと説明した。
そのうえで「重く受け止め深く反省している。現在、調査している最中で、さらに把握されれば訂正する。経理の責任者に研修会を行うなど再発防止に努めたい」と述べた。

▽自民党茂木派の事務総長を務める新藤経済再生担当大臣は、国会で「支払者の名称の記載が一部漏れていたことが判明し、所要の訂正を行ったと報告を受けた。収入の総額は変わりない」と述べた。

▽自民党麻生派の事務総長を務める森英介 元法務大臣は記者団に対し、麻生派については、2021年までの3年間に13件、合わせて406万円の政治資金収支報告書への記載漏れがあり、訂正を終えたと説明した。
そのうえで「不適切と思われる事例が見つかり、深くおわび申し上げたい。今後、このようなことがないよう、しっかりと対処したい」と述べた。

▽自民党岸田派の事務総長を務める根本 元厚生労働大臣は記者団に対し、岸田派については2020年までの3年間にあわせて7件の政治資金収支報告書への記載漏れがあり、訂正を終えたと説明した。
そのうえで「今後このようなことが生じないよう対応している」と述べた。

去年の収支報告書で「志帥会」、「志公会」、「清和政策研究会」、「近未来政治研究会」森山派、議員グループ「有隣会」で、収入の不記載が明らかになった。少なくとも合計六百六万円分。

また、去年の収支報告書でも、NHKの調べで「志帥会」、「志公会」、「清和政策研究会」、「近未来政治研究会」森山派、政界を引退した谷垣元総裁を中心とする議員グループ「有隣会」で、収入の不記載が明らかになった。
NHKの取材に対し、4つの派閥と議員グループは、「すでに訂正をした」または、「事実を確認し、適切に対応する」などと回答している。

Q.なぜ、こうしたケースが相次いでいるのか?

A.パーティー券を購入してきたという団体の関係者の証言から、その一端が見えてきた。

派閥の政治団体のパーティー券を毎年、購入してきたという団体の男性
派閥の政治団体のパーティー券を毎年、購入してきたという団体の男性

 自民党の派閥の政治団体のパーティー券を毎年、購入してきたという団体の男性はこう話す。

「業界としてみれば、何かあったときにいろいろお願い事をすることもあるだろうと。もしもの時のためというか、保険じゃないけど、かけておくみたいな」

各派閥のパーティーが開かれる時期になると、男性のもとにはパーティー券の購入を求める依頼が次々に舞い込むという。

「いろんなところから『お願いします』って電話がかかってくるわけですよ。すごい数が来ます、本当に」 

こちらが、男性が経験したという事例だ。

男性の政治団体には、さまざまな政治資金パーティーの案内が届くが、同じ派閥の複数の議員から同じパーティー券の購入を別々に依頼されることも少なくないという。

一口2万円のパーティー券を議員ごとに購入。
その多くは派閥側には記載義務のない、20万円以下だったということだ。

ただ、元は同じパーティー。同じ団体からの支払い金額の合計が20万円を超えていれば、派閥側には記載の義務がある。
今回、この男性の政治団体のパーティー券購入の支払いの一部が、派閥側には記載されていなかったことがわかっている。
こうしたケースで記載されていないことが相次いだということになる。

告発状が出されている5つの派閥は、それぞれ、再発防止策を講じるとしている。

Q.国会では、どんな議論が行われているのか?

A.この問題については、22日、補正予算案の審議が行われていた衆議院予算委員会で、現職総理と元総理の論議があった。

この日、岸田総理大臣が、各派閥の政治団体が行った政治資金収支報告書の訂正内容などについて、できるだけ速やかに適切な説明を行うよう茂木幹事長に指示したことを明らかにした。
これに対し、この人が….。

(立憲民主党・野田元総理大臣)
「まだまだ危機感が足りない。なぜ、このようなことが起きているのか、解明するところまでが調査だ。そこまで責任を持ってやりきる覚悟を示してほしい」

(岸田総理大臣)
「国民の信頼という観点から重大な危機感を持たなければならない。それぞれのケースに応じて、それぞれの立場から信頼回復に向けて努力することは大事だ。説明責任が果たされ、適切に説明が行われるよう徹底したい」

Q.今週の国会の焦点は何か?

A.国会では27日から参議院予算委員会で、新たな経済対策の裏付けとなる今年度の補正予算案の審議が始まる。
この補正予算案は一般会計の総額13兆1992億円で、先週、衆議院本会議で自民・公明両党と日本維新の会、国民民主党などの賛成多数で可決され、参議院に送られたものだ。

経済対策に盛り込まれた所得税の定額減税や低所得世帯への給付などについて、自民党側は「物価が急激に上がっている状況に手当てするため給付を行い、物価よりも賃金が上がる状況をつくる一環として 減税も行う」としている。
一方、立憲民主党側は「目的がはっきりしない所得税の減税は行わないのが正しい。必要なところに必要なお金をスピーディーに届けることが大事だ」としている。

与党側は、今週半ばの予算案の成立を目指す考えの一方、立憲民主党などは自民党の派閥の政治資金をめぐる問題などを引き続き追及する方針で、その攻防が焦点だ。

Q.今後の展開をどう見るか?

A.岸田内閣の支持率低迷も受けて、野党側では、不信任決議案の提出に言及する議員も出始めている。

来月の会期末に向けて、与野党の攻防が激しくなることも予想される。
岸田内閣にとっては厳しい局面が続きそうだ。


政権をめぐっては、派閥の政治資金の問題に加え、相次ぐ政務三役の交代、それに減税への国民の評価と、「三重苦」とも言われる状況だ。
このうち政治資金の問題については、こう話す自民党幹部もいて、沈静化を図りたい考えだ。

「訂正しており、深刻な事態になることはない」(自民党幹部)

一方で、こう懸念する議員もいる。

「どうなっていくか分からず、支持率にも影響が出かねない」(自民党内)

岸田政権にとって、説明を尽くし信頼回復を図れるかが問われることになりそうだ。

(11月25日「ニュース7」などで放送)

政治部デスク
広内 仁
1997年入局。横浜局から政治部。ワシントン支局、与党キャップ、福岡局デスクを経て政治部デスク。
仙台放送局記者
藤家亜里紗
仙台局が初任地。2年間の石巻支局を経て現在は事件取材を担当。
また、政治資金取材班。