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さらば松山 きっぷ11選 “結願”なる

  • 2023年07月27日

夏休みを迎えました。
ということは、青春18きっぷが使えるシーズンを迎えたわけです。
この3年間、18きっぷが使える時期や、鉄道の日(10月14日)などにあわせて、きっぷを11枚紹介する記事を書いてきました。今回で8回目。最後の記事となります。ことしの夏は、旅行される方も多いはず。旅先で、記念にきっぷを探すのもオススメですよ!

(NHK松山放送局 後藤茂文)

①JR西日本宮島フェリー 回数券

はじめに紹介するのはフェリーのきっぷです。世界遺産の厳島神社などで知られる「宮島」に行く航路を運航する、JR西日本宮島フェリーの回数券です。
このフェリー航路は、JRの鉄道線とほぼ同様の扱いをされています。広島駅などJR各社の駅から、宮島までの通しのきっぷを発券することができます。青春18きっぷなどでも、この航路を利用することができます。
JR6社は2022年までに普通回数券を廃止しましたが、このフェリーでは回数券がまだ健在です。懐かしい常備回数券の形式で、「宮島口桟橋」という発行か所の印字や、バーコードが付されていることも特徴的です。
多くの鉄道会社では近年、運賃値上げが相次いでいますが、このフェリーもことし10月から値上げを予定しています。運賃改定に伴い、額面などきっぷに書かれた情報も変わると見込まれるため、再度の収集が必要になりそうです。

②JR西日本宮島フェリー 回数自動車等航送切符

続いても宮島フェリー関連ですが、こちらは人を運ばない「切符」です。
フェリーで自動車等を運ぶ際の回数券です。
人の輸送に関わる乗車券などは「きっぷ」と書き表しますが、人を運ぶモノではない券は「切符」と、表記によって意味が異なっています。
手回り品切符や遺失物切符などが代表的ですが、こちらも人ではなく車を運ぶため、「切符」と書かれています。こちらも10月から値上げ予定です。

③JR九州の株主優待割引を適用したきっぷ

上場しているJR4社(JR東日本、東海、西日本、九州)は、さまざまな株主優待を設定しています。チケットショップで見たことがある方も多いでしょう。
JR九州はことし6月まで、JR九州内の乗車券や特急券を半額で購入できる割引証を、鉄道株主優待券として用意していました。
ことし7月からはその内容を一新し、九州内で使える1日乗車券の形式に改めました。
JR九州の株主優待の割引証を使うと、きっぷの券面に「九優5割86」という印字がされました。なお、マルス端末でこの割引適用のきっぷを発券するのと、「POS」機能で発券するのとでは、「九優5割86」のフォントが異なるという、微妙な違いがありました。

④JR池袋駅の入場券(池袋駅南みどりの窓口で発券)

山手線の主要駅で、地下鉄や私鉄の乗換駅としても非常に多くの人々が行き交う池袋駅。そのみどりの窓口で購入した入場券です。券面の下の発行か所の印字では「池袋駅南」とあり、駅南の改札前にあった窓口で購入したものです。池袋駅には、中央と南の改札前、それぞれにみどりの窓口がありました。南の窓口はことし6月末で廃止され、中央の窓口に一本化されました。池袋駅のような首都圏の主要駅でも、窓口の削減など合理化が急ピッチで進んでいます。山手線内だと、有楽町や神田、大崎、田町といった大きな駅でも、みどりの窓口がすでに廃止されました。こうした流れは、今後も続きそうです。

⑤東海交通事業の「社線単独」乗車券(JR東海・枇杷島駅で発券)

JR東海のグループ会社で、名古屋近郊で路線を運行している「東海交通事業」の乗車券です。このきっぷを購入したのは、東海交通事業の城北線の起点でもある、JR東海の枇杷島駅の窓口です。
JRの窓口ではありますが、他社である東海交通事業のきっぷも購入が可能です。
JRの発券端末で、JR線を含まない、他社の区間のみのきっぷを購入すると、自動改札に投入できない、120ミリの長さのきっぷで発券されます。
こうしたきっぷは「社線単独」のきっぷと、収集家から言われています。
枇杷島駅以外でも、私鉄が乗り入れているいくつかの駅窓口で、同様に社線単独のきっぷが購入可能です。

⑥臨時急行「ラブライブ!サンシャイン!!」2号の急行券

NHK・Eテレでも放送された人気アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」をテーマにした臨時急行列車の急行券です。ことし6月、このアニメの舞台である静岡県沼津市でJR東海がウォーキングのイベントを開催し、それに合わせて設定された急行列車です。
券面には、文字数の関係からか「サンシャイン!!」と略されていることや、「!」が2つも使われていることに目が行きます。「サンシャイン!!」2号の出発前にも、「サンシャイン!!」号が運行されました。
きっぷ販売の当日、JR東海のミスで、急行券がネット予約に対応していなかったことがわかりました。
東海はプレスリリースでおわびを出した上で、追加便という形で2号の運行を決め、再び急行券の販売を行いました。
どちらの便も、販売開始から1分とたたずに完売状態となったと言われていて、入手が極めて困難な1枚でした。

⑦東武日光駅ツーリストセンターの船車券

栃木県日光市内の東武日光駅と鬼怒川温泉駅、それぞれの駅構内にあるツーリストセンターで扱う「船車券」です。「船車券」とは、JRのきっぷと航空券以外の、交通機関の乗車券のことです。ことし6月まではツーリストセンターを東武ステーションサービスが運営していて、東武鉄道の乗車券を発券することができました。一種の旅行商品のような扱いからなのか、「代表者」の名前を明記しないといけないのも特徴的です。この船車券には、きっぷの紙の模様である「地紋」に、運営会社の略称の「TSS」があしらわれているほか、券面の右下に会社名を明記しているのも目を引きます。センターではこれまで、東武鉄道の乗車券や、硬券を使ったSLの座席指定券、日光や会津方面のフリーパスなど、さまざまなきっぷを取り扱ってきました。ことし7月からは東武鉄道傘下の旅行会社、東武トップツアーズがセンターの運営を担うことになり、硬券のSL指定券を取りやめるなど、扱うきっぷの内容にも変化が生じています。

⑧阪堺電気軌道の回数券

文字どおり、大阪市と堺市を結ぶ路面電車を運行する、阪堺電気軌道の回数券です。230円と130円の券が連なった、懐かしさを感じさせる回数券でしたが、ことし6月末で回数券の販売が終了しました。
東京の路面電車だと、東急世田谷線が似たような紙の回数券を扱っていましたが、ことし2月末で東急は通学用以外の回数券の販売を終了しました。
JRや私鉄各社の回数券の販売終了の動きは、いまも続いています。
ことし8月末には、大手私鉄の京王電鉄が回数券の販売を終了する予定です。

⑨JR四国の常備券(近永駅、運賃改定後の新券)

JR四国の予土線、近永駅(愛媛県鬼北町)で扱っている、片道乗車券です。
ピンク色で、発駅と金額などがあらかじめ印字された、いわゆる「常備券」です。
JR四国はことし5月20日に平均で12%余りの運賃値上げを行いました。
このきっぷは、値上げを反映した、つまり新しく印刷されたきっぷとなります。
近永から430円の区間には、宇和島駅を含みます。
券面の右上にある通し番号をみると、需要の大きさをうかがえます。

⑩近鉄全線2日間フリーきっぷ

私鉄では最長の路線網を誇る近畿日本鉄道(近鉄)の、全線で2日間連続使えるフリーきっぷです。
ことし6月のみ利用できた、期間限定のフリーきっぷです。
価格はなんと3000円で、大阪難波から近鉄名古屋まで片道2860円なので、往復するだけで十分に元が取れる、大変お得なきっぷでした。
なお、近鉄は通年で、土日を含む連続3日間有効のフリーパスを、4400円で販売しています。それと比べても、使い勝手が良かったのが特徴です。
夏休みなどに、乗ったことがない路線を乗りつぶすのに、こうしたきっぷを探して活用すると、楽しいものです。

⑪臨時駅「田井ノ浜」への乗車券(日本旅行米子支店で発券)

4年ぶりに営業する臨時駅、JR四国・牟岐線の「田井ノ浜駅」(徳島県美波町)へのきっぷです。
海水浴場の最寄り駅として、夏の一時期だけ営業する臨時駅ですが、新型コロナの影響で3年間、海水浴場の開設が見送られ続け、駅も開設されませんでした。
4年ぶりの開設となることしは、7月15日から8月6日までの期間限定で、1日3往復、列車が停車します。
このきっぷでは、1年で8月4日と5日のわずか2日間しか営業しない、JR四国・予讃線の「津島ノ宮駅」(香川県三豊市)を発駅としていて、2つの臨時駅を結ぶ乗車券となっています。
このきっぷを購入した日本旅行米子支店(鳥取県米子市)は、新型コロナの影響で2年ほど個人向けの窓口営業を休止し、ことし7月から営業を再開しました。

終わりに

このシリーズをはじめた当初、「四国遍路になぞらえて88枚を紹介しよう」と、11枚ずつ、合計8回、取り上げることになりました。
今回、11枚を紹介できたことで、まさに“結願”することができました。

鉄道の日にあわせて、NHK広報局とTwitter上でコラボしたり、オレンジカードの展示会に合わせてオレンジカードのみ11枚を紹介したりと、毎回選定に苦労したことが思い出されます。

私は、松山放送局で3年間、勤務しました。運賃値上げや回数券の廃止、駅窓口の削減、きっぷを売る旅行会社の苦境など、コロナ禍で経営に大きな影響を受けた鉄道のいまを伝えてきました。来月(8月)からは、東京の首都圏局に異動します。
これまで関東の鉄道にはあまり足を運べていないのですが、引き続き各地の路線を取材して、ウェブ記事やニュースに反映していきたいと思っていますので、今後もどうぞよろしくお願い致します。

 

これまでに紹介したきっぷはこちら
  • 後藤茂文

    後藤茂文

    津局、大分局を経て2020年から松山局勤務。遊軍担当として、公共交通や農業、文化などを取材。全国のJR線の約99%を乗車済み。

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