ページの本文へ

WEBニュース特集 愛媛インサイト

  1. NHK松山
  2. WEBニュース特集 愛媛インサイト
  3. フェアウェル “きっぷ鉄”が選ぶ惜別のきっぷ11選

フェアウェル “きっぷ鉄”が選ぶ惜別のきっぷ11選

  • 2023年04月07日
留萌本線の終着駅、留萌駅の隣の「大和田駅」(北海道留萌市)

2023年度を迎えました。
春はさまざまな変化を迎える時期でもあります。
鉄道の世界も例外ではありません。
私が集めている「きっぷ」については、多くの別れがありました。
昨年度集めた、いまや手に入らなくなったきっぷの一部を、ここで紹介します。

(NHK松山放送局 後藤茂文)

①旅行会社で購入したJR回数券

去年11月末をもって、学割や障害者向けを除いた、JR6社の回数券は販売を終了しました。明治時代から100年以上続いてきた回数券の歴史に、一つの区切りが付いた瞬間でした。
ここで紹介するのは、旅行会社で購入したJR北海道の回数券です。一部の旅行会社では窓口で回数券を発券することができました。
ただ、JTB、日本旅行、近畿日本ツーリスト、東武トップツアーズ、農協観光で扱われている端末からは回数券を即時発券できず、「補充回数券」を使った手作業で発券することになっていました。
補充回数券での発券ができる店舗は限られている上、発券できること自体知らない社員も少なくなく、実際に発券するのには困難を伴いました。日本旅行北海道の帯広支店で購入したこの回数券、会社名の略号の「NH」が書かれたスタンプが、発行か所欄に押されています。

②JR東日本 連絡運輸の乗車券

JRと私鉄を一枚のきっぷで乗車するための連絡運輸ですが、ことし3月のダイヤ改正にあわせて、JRと首都圏の私鉄で大半が廃止されてしまいました。
乗継割引が設定されている区間や直通列車が運行されている区間を除けば、ほぼ全廃といっていいほどの大なたが振るわれました。JRや私鉄各社は連絡運輸のきっぷの発券を絞る代わりに、ICカードの利用を促しています。
連絡運輸で発券されるきっぷの券面ですが、みどりの窓口に置かれた「マルス端末」と、小規模な駅などに置かれた「POS端末」とで、経由欄などの印字が異なる場合が多々ありました。

③名鉄観光サービス豊橋支店で発券した乗車券

愛知県豊橋市にある、名鉄観光サービスの支店で購入したきっぷです。いまでは珍しくなった「みどりの窓口」の看板が店頭に掲げられていたのが印象的でした。同店ではその後、JR券の取り扱いを終了しました。
名鉄観光のおひざ元、東海地方ではこのほか、東岡崎駅旅行センター(愛知県岡崎市)や高山支店(岐阜県高山市)で発券業務を行わなくなりました。他の大手旅行会社では、この1年間多数の店舗が閉店していて店頭でのきっぷ購入は年々難しくなっています。

④大学生協で発券した乗車券

一部の大学生協ではマルス端末が置かれ、JR券をその場で購入することができました。ただ、コロナ禍で大学生協でも発券業務を辞めるところが相次ぎました。立命館大学はびわこ・くさつキャンパス(滋賀県草津市)と衣笠キャンパス(京都市)にあった端末をことし1月から2月にかけてどちらも撤去しました。
紹介している写真の発行か所の印字「BKC」は、「びわこ・くさつキャンパス」の略称で、関西の大学を出た方にとってはなじみのある名前です。
撤去にあわせて、大学生協が投稿したツイートが印象的でした。

立命館生協至徳館ショップ(衣笠キャンパス)のツイート

⑤錦川鉄道の連絡回数券

種類は少ないですが、JRと別の鉄道会社とにまたがる区間の回数券「連絡回数券」を扱っている鉄道会社があります。ことし3月末で、鳥取県の第3セクター「若桜鉄道」と、山口県の3セク「錦川鉄道」が、それぞれ連絡回数券を廃止しました。
錦川鉄道は廃止について「JR西日本からの要請」を理由に挙げています。同社の連絡回数券は、乗り入れているJR西日本の岩国駅と、錦川鉄道の錦町駅で販売してきました。岩国駅だと、JR西日本仕様の補充回数券を使って、連絡回数券が作られていました。一方で錦町駅だと、「特企回数券」と書かれた専用の補充回数券を使っての発券となり、珍しい形式でした。

⑥東京メトロ 回数券

JRだけでなく、全国の私鉄で回数券の廃止が進んでいます。昨年末は相模鉄道(横浜市)と関東鉄道(茨城県土浦市)が鉄道の回数券を終了させました。
ことしに入ってから首都圏では、東京メトロ、東京都営地下鉄、東急電鉄、西武鉄道などが回数券の販売を取りやめました。
どの社も、首都圏では存在感が大きく、利用している方も多いはずです。各社ではICカードの利用に応じたポイント還元を行うなど、ICカードへの誘導をさらに加速させています。

⑦南海電鉄の事前精算券

大阪と和歌山を結んでいる南海電鉄は、ことし3月末に回数券の販売を終了しました。
一方で「事前精算券」というきっぷも、ひっそりと廃止されました。
「事前精算」というのは、「乗り越し精算」の逆のことです。南海電鉄の一部の券売機では、区間外の定期券や特急券付きの乗車券などを挿入すると、乗車する前に精算ができるというものです。定期券を挿入すると「事前精算券」というきっぷが出てくる一方で、特急券と一体になった乗車券を入れると「発越し補充券」という、珍しい形式のきっぷが出てきました。事前精算に対応している券売機は旧型で数が少なく、そのため知る人ぞ知るきっぷでした。

⑧近永駅で発券した補充片道乗車券

常備券や補充券を多種取り扱っていることで知られる、予土線の近永駅(愛媛県鬼北町)では、昨年末で取り扱うきっぷの範囲が大幅に縮小されました。
普通乗車券は、予土線内の駅からJR四国内で完結する区間に限定され、特急券も乗車券と同様、扱う範囲が縮小しました。
近永駅には、長距離のきっぷを買おうと、全国からファンが集まっていました。JR四国営業部は、「一度に補充券を100枚近く買おうとする人がいて、地元の人がきっぷを買えなかったことがあった」ことなどを、販売範囲制限の理由に挙げています。
今回取り上げた乗車券は、販売範囲の変更前ぎりぎりに購入したものです。経由欄に押された「予讃・備讃宇野・新幹線」というハンコが、近永から東海道・山陽新幹線まで乗るきっぷの需要が多かったことを伺わせます。

⑨JR四国・POS端末で発券した、四国外の乗車券

JR四国が駅窓口で販売するきっぷの範囲を制限したのは、近永駅だけではありません。四国内のPOS端末を設置する駅で、今年度から販売する乗車券の種類を縮小させました。
小規模な駅では、みどりの窓口にある「マルス端末」の代わりに、「POS端末」と呼ばれる発券端末を置いて、きっぷの販売をしています。POS端末はマルス端末と異なり、全国の指定席券を即時発券することができず、近隣のみどりの窓口などに電話やファックスで問い合わせを行い、指定席を確保しています。つまり、POS端末は簡易な発券端末と言えます。
伊予市駅や端岡駅(高松市)など、JR四国のPOS端末設置駅では今年度から、乗車券や特急券は四国内や四国~岡山や東海道・山陽新幹線の停車駅との間に限る、という制限が設けられました。
この対応についてJR四国は、全国の乗車券を発券出来るようにシステムを改修・維持するのにコストがかかることや、POS端末を設置する駅での窓口利用が少ないことを理由に挙げています。
ここで紹介するきっぷは、山陽本線からJR西日本宮島フェリーを使って宮島まで行く乗車券です。「宮島航路」という経由の印字が特徴的です。

⑩乗り継ぎ割引を適用したJR四国の特急券

続いてもJR四国のきっぷですが、こちらは運賃面での変化、つまり値上げに関連しています。新幹線と在来線特急を乗り継いだ際に、在来線特急の料金を半額にする「乗継割引」ですが、JR四国線内の特急と新幹線を乗り継ぐ場合や、JR四国線内の特急と寝台特急サンライズ瀬戸を乗り継ぐ際の割引が、昨年度末で廃止となりました。
財政難のJR四国は近年、お得なきっぷの廃止や値上げが相次ぎ、そして5月からは運賃の値上げが待っています。
ここで紹介した、乗継割引を適用したきっぷは、電話予約を使って発券したものです。
JR西日本はクレジットカード会員などを対象に特急券や乗車券の予約を電話で受け付けるサービスを、ことし2月末まで行っていました。電話予約で発券されたきっぷには、下部に「西予約セu」という印字がされています。

⑪留萌駅で発券した青春18きっぷ

北海道の深川駅と留萌駅を結ぶ留萌本線は、留萌から途中の石狩沼田駅の間が昨年度末で営業終了、廃線となりました。
2年前、「軟券」の取材で訪れた石狩沼田駅は、今年度からは「終着駅」としての役割を果たすこととなります。ただ、残る石狩沼田~深川間も2026年の廃線が決まっています。また、再訪したいものです。
今春は、留萌駅のみどりの窓口で購入した青春18きっぷを使い、東北や関東の駅を巡っていました。

終わりに

ここで紹介したきっぷ以外にも、無人駅になった、あるいは窓口が廃止された駅でも、色々ときっぷ収集してきました。振り返ると、やはり残念な変化も多いのですが、前向きな変化も今春はありました。
一番大きな話題は、相模鉄道と東急電鉄の新横浜駅開業でしょう。

両社が新横浜駅まで路線を延ばすことで、7つの私鉄・交通局が相互乗り入れするに至りました。3月18日の開業日には私も早朝から駆けつけました。

記念にいくつか券売機できっぷを買ったほか、記念品として販売された相鉄・東急の補充券・硬券入場券のセットも購入しました。新横浜からの一番列車に乗って、新駅の新綱島駅にも足を運びましたが、こちらは記念の補充券・硬券のセットは売り切れで買えずじまいでした。
ほかにもダイヤ改正の日にあわせ、JR東日本では幕張豊砂駅(千葉市)や前潟駅(盛岡市)が開業しました。どちらも大型ショッピングモールの近くに設けられた新駅です。
今年度の鉄道、そしてきっぷの世界も、やはり大きな変化が待ち受けています。JR四国は5月、平均12%余りの運賃値上げを予定しています。ほかの鉄道会社でも続々と運賃値上げの動きがあるほか、首都圏や関西圏では、バリアフリー化を進めるための新制度を使い、運賃値上げが今年度から始まりました。はたして、値上げラッシュはどこまで許容されるのでしょうか?
鉄道の利用のあり方がさらにどう変わっていくのか、引き続き追っていきたいと思います。

※記事トップの写真は、留萌本線の終着駅、留萌駅の隣の「大和田駅」を撮影したものです。北海道の無人駅でよく見かけられる、貨車を改造した駅舎ですが、昨年度末で役目を終えました。

これまでに紹介したきっぷはこちら
  • 後藤茂文

    後藤茂文

    津局、大分局を経て2020年から松山局勤務。遊軍担当として、公共交通や農業、文化などを取材。全国のJR線の約99%を乗車済み。

ページトップに戻る