2022年10月14日

さようなら 後藤が選ぶ惜別のきっぷ11選

2022年10月14日、日本で鉄道が開業して150年を迎えます。
これまで不定期に行われてきた、後藤記者が選ぶきっぷ11選。
今回は「惜別」をテーマに、もう買うことができなくなった、あるいは今後入手が出来なくなりそうなきっぷの中から、選りすぐりの11枚をご紹介します。

(NHK松山放送局 後藤茂文)

①JRの普通回数券(JR東海・品川駅のJR全線きっぷうりばで発券)

窓口や指定席券売機で回数券を購入すると、このような水色のきっぷで発券されます。
JR北海道以外のJR5社が普通回数券の販売を終了した2022年9月30日、私は東京や静岡に出かけ、最終日の回数券購入に臨みました。
品川駅はJR東日本とJR東海、それぞれがきっぷうりばを設けていて、今回はJR東海の窓口で購入しました。
回数券の区間は「みどり湖~洗馬」。両駅の中間にある塩尻駅(長野県塩尻市)が、JR東日本と東海の境界駅となっています。つまり、2社のエリアをまたぐ形の回数券です。
中央本線を経由しますが、印字は「中央東・中央西」といわゆる中央東線と中央西線という扱いの印字がされているのも特徴的です。

②JRの普通回数券(三島駅の近距離券売機で発券)

主に駅から100キロ圏内のきっぷを扱う近距離券売機で購入すると、回数券は茶色の小さな形状となります。品川から移動し、三島駅(静岡県三島市)で購入しました。券売機によっては、オレンジカードでも購入可能でした。購入した区間は「三島~沼津」です。JR東海は東日本や西日本と異なり、ICカードでの乗車回数に応じたポイント還元の制度は現在ないため、回数券廃止は実質的な運賃値上げとも言えます。

③JR北海道の回数券(赤平駅窓口で発券)

ことし11月末には、JR北海道でも普通回数券の販売が終了します。通学用や障害者向けを除いて、普通回数券の購入はJR全社でできなくなります。明治33年(1900年)、当時の官設鉄道の時代から続いてきた回数券の文化は、120年ほどで一区切りとなった形です。
この回数券を購入した赤平駅(北海道赤平市)は、地元の赤平市が窓口でのきっぷ販売を受託しています。発券端末がないため、あらかじめ発着区間などが印字された「常備券」や、手書きで作成する「補充券」という形式のきっぷを販売しています。回数券は、芦別駅や滝川駅行きが常備回数券で、そのほかの赤平発着の回数券は補充回数券で販売しています。
同駅の窓口が入る建物は、びっくりするほど立派なもので、一度訪問をおすすめします。

④大阪モノレール 回数券

私鉄でも回数券の廃止が相次いでいます。大阪空港などを通る大阪モノレールは、ことし7月で回数券の販売を終了しました。同社の回数券は、11枚つづりの普通回数券のほか、時差回数券や土休日回数券の設定もありました。
ことしは阪神電鉄や新京成、それに小田急などの回数券も廃止されました。来春には阪急電鉄や山陽電鉄も回数券の廃止を予定しています。

⑤宇和島駅みどりの窓口発券の入場券

2021年後半から2022年初頭にかけて、JR四国は16駅のみどりの窓口を廃止しました。2022年1月31日には、宇和島駅(愛媛県宇和島市)などの窓口が廃止となりました。営業最終日、窓口が閉まる21時20分に発券した入場券です。つまり、宇和島駅の窓口で発券された、最後のきっぷとなります。
宇和島駅ではことしの年末に駅の旅行センター「ワーププラザ」の廃止も決まっています。

⑥尾道駅北口のきっぷうりばで発券したJR片道乗車券

尾道駅のみどりの窓口は、海に面した南口に設けられている一方、かつて北口にもきっぷうりばがありました。北口の窓口は、全国の指定席券を即時発券できる「マルス端末」ではなく、それよりも簡易な「POS端末」が置かれていました。2021年3月に北口の窓口は廃止されました。
紹介しているきっぷは、山陽本線と山陽新幹線を別線扱いで入力し、広島駅での途中下車が可能にしています。
広い駅や利用者の多い駅だと、窓口が複数箇所に設けられるケースが多くあります。ただ、こうした窓口を減らす動きも最近は続いています。有名な駅だと、秋葉原駅の昭和通り口のみどりの窓口が2021年3月に廃止され、電気街口の窓口に一本化されたケースがあります。

⑦自由席特急券(西金沢駅で発券)

金沢駅の隣で、北陸鉄道の新西金沢駅と隣接している、西金沢駅で購入した自由席特急券です。JR西日本の株主優待券をチケットショップで購入し、窓口で利用するとこのような印字となります。
西金沢駅は今月末で窓口が廃止されることになっています。今月末には東京駅の隣、有楽町駅でも窓口廃止が予定されています。都心部の駅でも窓口廃止が相次いでいます。

⑧ワーププラザ徳島県庁内で発券したJR券

JR四国の駅旅行センターは「ワープ」のブランド名で主要駅に展開しています。駅の外にある珍しい店舗として、徳島県庁内の売店の一角に「ワーププラザ徳島県庁内」という店舗がありました。コロナ禍で県庁職員の出張が減少したことなどで売り上げが激減し、2021年9月に閉店しました。
JR四国は県庁所在地などにあるワープの支店は今後も残す一方、宇和島駅や志度駅など、各地にまだ残るワーププラザは年末に全廃となります。

⑨箱根登山鉄道の乗車券(びゅうプラザ高崎で発券)

JR東日本の駅に設けられた旅行業店舗「びゅうプラザ」は最盛期にはおよそ170もの店舗がありました。その後、インターネットでの旅行予約サービスなどに押されて店舗は減少し、ことし2月、新潟駅の店舗を最後に全廃されました。びゅうプラザではJR券だけでなく、私鉄のきっぷも「船車券」という扱いで発券が可能でした。

⑩近畿日本ツーリスト近鉄百貨店奈良店内旅行サロンで発券した近鉄乗車券とJR券

コロナ禍で約130あった個人向け店舗を3分の1ほどにまで減らすことになった近畿日本ツーリスト。近鉄グループの百貨店の中に入居する店舗が奈良市や和歌山市、滋賀県草津市にありましたが、いずれもコロナ禍で閉店しました。JR券だけでなく、近鉄の乗車券や特急券の購入も手数料無しで可能でした。
同社は個人向け店舗だけでなく、徳島県のほか山陰、九州の複数の県で法人営業の拠点も廃止するなど、大手旅行会社の中では退潮傾向が目立っています。

⑪上田電鉄の硬券乗車券(別所温泉駅で発券)

長野県上田市を走る上田電鉄は、長らく硬券の乗車券を扱ってきましたが、ことし1月で硬券乗車券を廃止しました。さらにことし3月、別所温泉駅では定期券や回数券などのきっぷ販売も終了しました。
以前に同駅で購入した硬券には、旧社名の「上田交通」と書かれたものも残っていました。同社は近年、スマートフォンのアプリ上で定期券を購入できるサービスや、QRコードを使った回数券の導入など、新技術の導入による合理化を目指しています。

終わりに

鉄道開業150年というめでたい節目で、各地でイベントの開催や臨時観光列車の運行もありました。一方で、コロナ禍の経営難を背景にした駅の無人化や窓口の廃止、お得なきっぷの縮小といった現象は、いまも続いていますし今後も続きそうです。151年目以降も鉄路、鉄道文化が残るよう、鉄道会社は利用促進やサービスの改善につながる取り組みが求められています。また、沿線自治体や住民にとっても、路線存続を求めるならば、日頃から積極的に利用することが肝要になりそうです。

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この記事を書いた人

後藤 茂文

後藤 茂文

津局、大分局を経て2020年から松山局勤務。遊軍担当として、公共交通や農業、文化などを取材。全国のJR線の約98%を乗車済み。