2023年1月11日

みかんは買えないけど…きっぷが買える!オレンジカード 11選

愛媛県西条市の四国鉄道文化館で、「オレンジカード」の展示会が開かれています(2月7日まで)。
オレンジカードは昭和60年に登場したプリペイドカードです。
券売機できっぷ購入に使うことができ、小銭を持ち歩く必要がないということで人気を博し、国鉄・JRも増収策の一環として積極的に販売し、企業の広告入りのカードも多数登場しました。
ICカードの登場に押され、平成25年には販売が終了したものの、いまでも一部の券売機で使用することができます。
開催中の展示会に合わせ、私も自分のコレクションから11枚、えりすぐりのカードをご紹介します。

(NHK松山放送局 後藤茂文)

①東京車掌所 ひかり5号シリーズ(JR東海発行)

こちらのカード、なんときっぷ、それも車内補充券が絵柄となっています。
オレンジカードもきっぷの一種というなら、きっぷの絵柄にきっぷを使うという、思い切ったデザインと言えそうです。
かつて新幹線も含め列車内では、車掌がきっぷを販売するため、車内で手書きする「車内補充券」というものが使われてきました。
見ての通り、東京から博多までの指定席特急券を手書きで作ったものが、デザインとなっています。
現在では、レシート状のきっぷを発券する「車内補充券発行機」というものが存在します。
これは持ち歩くことができる発券端末で、JRでは手書きの車内補充券を使う機会が無くなってしまいました。
きっぷに穴をあけて改札する、「改札鋏」も絵柄に使われ、当時のきっぷ文化を知ることができる一枚です。

②アルファ・コンチネンタル・エクスプレス(JR北海道発行)

JR北海道がかつて運行させていた観光列車「アルファ・コンチネンタル・エクスプレス」が雪の中を走る絵柄です。
国鉄の末期、そして民営化後のJR各社は「ジョイフルトレイン」と呼ばれる、主に団体向けの観光列車を次々に登場させ、増収を目指してきました。
この列車も、「ゴージャスに楽しんで!」の言葉通り、多くの観光客を運びましたが、すでに運行は終了しています。
車両の先頭部分はJR北海道の苗穂工場(札幌市)に併設された、北海道鉄道技術館に保存されています。

③海岸線を行くフリーゲージトレイン(JR四国発行)

こちらは、実験中の車両を絵柄にしたものです。
フリーゲージトレイン(軌間可変電車)は、線路幅に合わせて車輪の幅を変更することで、新幹線・在来線どちらも走行できる車両のことです。
フリーゲージトレインは、新幹線がまだ通っていない四国でも走行試験が行われたほか、福岡と長崎を結ぶ計画の西九州新幹線に導入しようと、かつて開発が進められてきました。
ただ、実用化に向けたハードルは非常に高いようです。
西九州新幹線への導入は断念され、いまだ営業運転は実現されていません。
伊予西条駅に隣接した四国鉄道文化館には、フリーゲージトレインが屋外展示されています。

④洗車中の500系新幹線(JR西日本発行)

シャープな外観の500系新幹線が洗車されている様子が絵柄となっています。
戦闘機のコクピットに例えられる流線型のデザインは、これまでの新幹線にないもので、いまでも多くの鉄道ファンの人気を集めている車両です。
時速300キロの最高速度を実現させ、東京~博多の所要時間が5時間を切る時短に貢献するなど、見た目に違わぬ速さを誇っていましたが、現在は山陽新幹線で各駅停車の「こだま」として活躍しています。

⑤61.11ダイヤ改正記念「あずさ号」(国鉄発行)

国鉄民営化を目前に控えた昭和61年11月のダイヤ改正を記念した、オレンジカード。
当時の主要な特急列車のヘッドマークをデザインしたオレンジカードが複数種登場しました。
ここで取り上げているのは、東京と信州を結ぶ特急「あずさ」です。
ひらがなの「あずさ」と、アルプスをイメージしたような山々がデザインされています。
また、高頻度に運行していた特急につけられていた愛称「エル特急」のロゴも懐かしさを感じさせます。
あずさはいまも特急の名前として残っていますし、「あずさ2号」の歌で覚えている人もいるかもしれません。

⑥夢のリニアモーターカー(国鉄・北海道総局発行)

国鉄時代のリニアモーターカーの実験車両が絵柄になっています。
国鉄、そしてJR発足から間もない頃、北海道から九州まで、各地でリニアをデザインしたオレンジカードが登場しています。
もしかしたら、昭和の終わり、平成の初め頃は「近い将来、リニアが実現する」という期待があったのかもしれません。
国鉄・北海道総局が出したこのカードには、「札幌~新千歳空港間8分」と、リニアが北海道で開業したときの「夢」が書かれています。
ご存じの通り、国鉄民営化からまもなく40年がたとうとしていますが、まだリニアは開業しておらず、北海道までの延伸は「夢物語」と言えそうです。

⑦「JR東日本新潟支社 除雪車シリーズ②」(JR東日本発行)

人を乗せる旅客列車ではなく、鉄道の運行を支える作業車両をテーマにした絵柄です。
除雪車は、文字どおり線路上の雪を除雪する、雪国には欠かせない車両です。
私は2022年12月、旅行会社のツアーで津軽鉄道(青森県五所川原市)の除雪車(ラッセル車)に試乗しました。
旅客列車にはない迫力、独特の魅力を感じさせてくれます。

⑧そして旅は海を超えて 快速海峡(JR北海道 函館車掌所発行)

青函トンネルを通って青森と函館を結んでいた快速列車「海峡」です。
快速列車と言うことで、安く本州と北海道を移動できました。
その後、青函トンネルを走る列車は特急列車のみになりました。
青春18きっぷで青函トンネルを通る際は、蟹田駅(青森県外ヶ浜町)~木古内駅(北海道木古内町)の区間のみ、特急の自由席に乗ることが出来ました。
さらに現在は、北海道新幹線が青函トンネルを通るようになっています。
18きっぷで青函連絡する際は、別途「オプション券」を買うことで、新幹線に乗車することができます。

⑨平成16年春開業(西鹿児島←→新八代) (JR九州発行)

福岡県と鹿児島県を結ぶ「九州新幹線」、このうち熊本と鹿児島の間で先行開業したのを記念したオレンジカードです。
桜島の写真と、九州新幹線の車両がコラージュされています。
西鹿児島駅は、駅名が変わって現在は「鹿児島中央」駅となっています。

⑩北国リゾート ノースレインボー(JR北海道札幌車掌所発行)

JR北海道の観光列車「ノースレインボーエクスプレス」が絵柄になっています。
座席が高い位置にあり、大きな連続窓と天窓から景色が楽しめるほか、ラウンジも併設された、豪華な作りです。
臨時の観光列車に充当されることが多かったのですが、ことし春の運行終了が決まっています。
札幌エリアのJRの車掌が所属する札幌車掌所は、多数のオレンジカードを企画・販売してきました。
札幌駅前にあった事務所の窓口でオレンジカードの対面販売も行っていたことがあり、私も学生時代に訪れたことがあります。

⑪スーパーライナーデビュー(国鉄発行)

昭和61年11月のダイヤ改正で登場した、国鉄の高速貨物列車「スーパーライナー」を紹介するイラストです。
一般の乗客が乗ることができない、貨物列車もオレンジカードの絵柄に散見されます。
これは、一種の広告かもしれません。
今回取り上げられませんでしたが、民間企業の広告入りのカードや、漫画・アニメのイラストが描かれたカードというのも、多種存在します。

【終わりに】

国鉄、そしてJR6社で発行されたオレンジカードを紹介してきました。
自分のコレクションを見返すと、北海道発行のモノが多く見つかりました。
それは、JR北海道が積極的にカードを販売してきたことと関係ありそうです。
JR北海道は、車掌所や一部の駅で、オレンジカードの対面販売だけでなく、通販も行ってきました。
JR四国も、四国内の駅だけで無く、大阪市にあるワープ梅田支店や、関東圏の百貨店でもカードを販売してきました。
2013年にオレンジカードの新規販売は終了しましたが、北海道・四国・九州の三島会社は、販売終了の直前まで、新規の絵柄のカードを企画・販売してくれました。
一方で、ICカードがいち早く普及した東日本や西日本は、新しい絵柄のカード販売が細る傾向が見られました。
関西、関東のチケットショップでは、まだ未使用のオレンジカードが売られています。
もし、オレンジカードが手元に残っていたら、この機会にぜひ使ってみてはいかがでしょうか?

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この記事を書いた人

後藤 茂文

後藤 茂文

津局、大分局を経て2020年から松山局勤務。遊軍担当として、公共交通や農業、文化などを取材。全国のJR線の約99%を乗車済み。