2021年12月10日
12月10日、ついに冬シーズンの「青春18きっぷ」が利用できる時期を迎えました(2021年12月10日から1月10日まで利用可能)
このタイミングを記念して、NHK松山放送局の後藤茂文記者のきっぷコレクションの一部をご紹介します。
今回のテーマは、去年以降、全国で廃止が相次ぎ、ニュースでも取り上げた「回数券」です。
きっぷ鉄の間で最近話題になったものから、地方の珍しいものまで集めてみました。
【東武鉄道 補充回数券】
ことし9月半ば、関東の大手私鉄「東武鉄道」が主要駅で販売した「補充回数券(補回)」です。補充回数券とは、発着駅などをスタンプや手書きで「補充」して完成させる、回数券のことです。
かつては全国の鉄道会社が扱ってきましたが、券売機や発券端末の普及で次第に姿を消していきました。東武鉄道でも、新藤原駅(栃木県日光市)など、ごく一部の例外を除いて久しく利用されていませんでした。しかし、回数券を9月末に販売終了させることに伴い、買い求める客が増えるとして、「在庫放出」のような形で、補回を販売することになりました。
普通回数券のほか、「時差回数券」「土・休日割引回数券」の3種類が存在。浅草駅や池袋駅など、都心に近い東武の駅では、早々に補回が売り切れましたが、私もいくつかの駅で収集できました。
池袋駅発行の補回では、発行駅の文字の前に番号が振られていたり、新越谷駅(埼玉県越谷市)や春日部駅(埼玉県春日部市)発行の補回では、発着駅それぞれの欄に下線が引いてあるなど、若干の違いが見られます。
【相模鉄道 補充回数券】
相模鉄道(相鉄)の大和駅(神奈川県大和市)で先月27日、100セット限定で販売された補充回数券。東武と同様、相鉄にも補回が存在しましたが、長らく使われてきませんでした。しかし、東武の補回が話題になったことに触発され、相鉄も大和駅の駅長企画として限定販売することになりました。私も「この機を逃すと相鉄の補回が手に入らないかも」と思いました。
先月26日、ラジオ番組で回数券の話題について収録した後、飛行機に飛び乗り、深夜に大和市に入りました。当日の早朝4時半ごろに並ぶと、すでに6人も先客がいました。駅には、乗車券庫に数十年眠っていた補回や、係員がスタンプで発着区間を押している様子など、販売の経緯が分かる貼り紙もされていました。
補回の種類は東武と同様、3種類存在しています。
【JR 普通回数券(窓口の端末で発券)】
JRの駅窓口で購入した、普通回数券。JR九州はことし6月末に九州内で完結する区間の回数券を廃止。9月末には、下関駅(山口県下関市)と九州内を結ぶ区間の回数券を廃止しました。
一方、JR西日本は、京阪神や広島などICカードが使えるエリア内で完結する回数券を、ことし9月末に廃止しました。
上掲の写真では、JR西日本と九州、それぞれの駅での回数券を取り上げています。
【東海交通事業 普通回数券】
JR東海の子会社「東海交通事業」が発行している普通回数券です。東海交通事業は、JR東海の駅業務を受託しているほか、名古屋駅の北方を走る「城北線」を運行しています。この回数券は、発着駅があらかじめ印字されている、いわゆる「常備回数券」と呼ばれるものです。また、社名の略称「TKJ」が金色であしらわれていて、ほかの回数券にはない高級感があります。
【北陸鉄道 バス・電車乗り継ぎ回数乗車券】
金沢市に本社を置く、北陸鉄道が販売している回数券。
北鉄金沢駅で、北陸鉄道の電車と、グループ内のバスを乗り換える乗客向けに作られました。
360円区間の電車の回数券、そして200円区間のバス回数券がそれぞれ10枚ついて4200円と、割引額が大きいのも特徴です。
しっかりとした冊子形式、そしてかわいらしい車のデザインを使った地紋にひかれます。
【Osaka Metro 回数カード】
こちらは、紙ではありません。自動改札機に投入できる、回数券ならぬ「回数カード」です。一種のプリペイドカードのようなものです。
3000円で、3300円分の利用が可能で、民営化される前、大阪市交通局の時代から販売されてきました。
現在は、「Osaka Metro」の地下鉄や、かつての市バス「大阪シティバス」、それに南港を走る「ニュートラム」でも使えます。
大阪市民にとって、なじみの深いきっぷです。
【JR東日本 新幹線Wきっぷ】
JR東日本がかつて販売していた新幹線の回数券の中でも、特に買いやすかったのが、2枚つづりの「新幹線Wきっぷ」です。枚数が少ない分、購入額も安く済むので、気軽に買うことができました。東北や北関東、信越の沿線だと、使ったことがある方も多いと思います。
JR東日本はICカードやインターネット予約を使った新幹線の乗車サービスを拡充させる一方、新幹線Wきっぷはことし3月末に廃止されました。そのほかの東日本管内の新幹線回数券も、ことしに入って、軒並み廃止されました。
私がこのきっぷを購入した、びゅうプラザ高崎も、ことし3月末に営業終了しました。
【JR 補充回数券】
JRでは、国鉄時代から補充回数券が使われてきました。券売機や発券端末が普及している都市部では、補回を見る機会はほとんどなくなりましたが、北海道や九州、四国ではいまもひっそりと残っています。四国では、近永駅(愛媛県鬼北町)で日常的に補回が販売されています。北海道や九州では、自治体や観光協会などが駅業務の一部を受託している「簡易委託駅」で、補回をいまも販売しているケースが目立ちます。
補回の紙の模様「地紋」は、JR各社ごとに異なっていて、JR四国なら「JRS」、JR九州なら「JRK」、JR北海道だと「JR北」の文字があしらわれています。
【樽見鉄道のECOフライデー300回数乗車券】
岐阜県大垣市を起点とする「樽見鉄道」が販売している、一風変わった回数券です。
地球温暖化防止のため、自動車利用を自粛し、公共交通機関を使ってもらおうと、誕生した回数券です。文字どおり、金曜日しか使えません。
10枚つづりで3000円ですが、どの駅に乗って、降りても、OK。
1枚あたり300円なので、遠方の駅に出かけるときに、活躍しそうです。
【博多南駅発着の自由席特急回数券】
博多南~博多の「JR博多南線」と鹿児島本線の駅を結ぶ区間の、特急券付きの回数券です。
冊子形式の回数券は、現在JRではめっきり見なくなりました。
博多南駅はJR西日本の新幹線車両基地の端に設けられています。新幹線の回送線を活用し、新幹線の車両に乗客を乗せています。博多南線は在来線扱いで、特急料金わずか100円で新幹線の車両に乗ることができ、沿線住民だけでなく全国の鉄道ファンにも知られています。
【阿佐海岸鉄道 回数券】
12月25日、世界で初めてDMVの運行を始める、阿佐海岸鉄道(阿佐鉄)で販売されてきた回数券。
DMVは、レールと車道、両方を走ることができる車両のことです。
阿佐鉄も、ほかのローカル私鉄と同様、補回を販売してきました。
しかし、DMV導入に伴う運賃値上げと合わせて、回数券や団体乗車券の廃止も国に申請し、認可されました。
また、高速バスの予約サイトを使ってDMVを予約・乗車する仕組みが新たに導入されました。
阿佐鉄は普通回数券を補回の形式で販売していたほか、休日・祝祭日限定の4枚つづりのきっぷも販売していました。このほか、硬券や補充券も存在したりと、きっぷの種類が豊富にありました。DMV導入に合わせて、ほとんどのきっぷは販売を終了することになります。
コロナ禍を背景に、全国の鉄道会社で回数券を廃止する動きが相次いでいます。Suica登場から20年たち、都市部ではICカードが全盛と言えます。
ただ、探せば面白い回数券は、まだまだ残っています。
地方鉄道や、さらには各地のバス会社も含めれば、まだまだ回数券は活躍しています。
旅の記念に、ぜひ購入してはいかがでしょうか?