2023年10月27日 (金)【みえDE川柳】 お題:探す

天 ネットでは探せなかった青い鳥/かぐや姫 さん

  橋倉久美子先生「青い鳥」はメーテルリンクの童話。チルチルとミチルの兄妹が幸せの青い鳥を探す旅に出るが、結局は自分の家にいた、幸せは身近なところにあるものなのだという内容。 現代ならばやみくもに探すのではなく、まずはネット検索であたりをつけるということか。とはいえこの句は「ネットでは探せなかった」というのだから、結局は自分の足で探しに行くしかないらしい。「青い鳥」を具体的な何かと想定してみるのもおもしろい。

地 沈黙が続き星座を探すふり/汐海 岬 さん

 橋倉久美子先生デートの帰り道だろうか。二人が肩を並べて歩いている。それとも夜の公園。並んでブランコをこいでいる。さっきまでのおしゃべりがふとした瞬間に途切れ、何となく気まずい沈黙が流れる。新しい話題を持ち出すのもわざとらしいし、さて……。そこで、星座を探す「ふり」なのである。きょろきょろと空を眺めながら、あるいはひときわ光る星を見つめながら、「どうしたの?」なんて話しかけてくれるのを待っている。「ふり」としたのがうまい。 短編小説にもなりそうな、胸がキュンとする句。

人 折鶴も鳩も探している平和/八木五十八 さん

 橋倉久美子先生平和を祈る折鶴と、平和の象徴である鳩。日常それを意識することもないほど、戦後日本では平和な状態が続いている。とはいえ世界に目を向けると、戦争状態や、そうでなくても平和とは言えない環境にある国や地域があることが現実だし、むしろ昨今、平和から遠ざかりつつあるような気さえする。まるで折鶴も鳩も、平和を探しあぐねているようだ。 「平和」という抽象的なものを、「折鶴」や「鳩」が「探している」と詠んだことで、具体的な手触りのある句になった。

 

<入選>

あの頃の自分を探す入社式/松本俊彦 さん

持ち主に探す気がない忘れ傘/流星さん

見つかると信じて探す落とし物/こまっぴ さん

一度来た家がなかなか見つからぬ/ぱせり さん

探しても肉が見つからないカレー/火の鳥 さん

はじめからみえてる子らとかくれんぼ/夜半亭あぶらー虫 さん

ワンルームでも見つからぬ探し物/捜査網 さん

火星まで ウラン探しに 行きますか/ごん太 さん

探してもお宝はない天袋/草かんむり さん

ご先祖のロマンも探す蔵掃除/福村 まこと さん

 

橋倉久美子先生 橋倉久美子先生
 408句のご投句をいただきました。 眼鏡や鍵などの身近なものを探す句や、探し物が見つからないという句が多かったかと思います。ことに年齢を重ねるとちょっとした探し物が多くなり、共感はできるのですが、同じような句意で共倒れ、あるいはすでに詠まれた内容となり、入選から遠くなってしまいます。いわゆる自分探し、青い鳥、あら探しの句もたくさんありました。    このような中で、意外なものを探す句、表現に個性の見られる句、また、同じような事実でも少し見る角度を変えた句を入選にしました。発想を広げ何句か作る中で、これだ!と言えることや表現に出会えるとうれしいですね。

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:50


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