2023年08月25日 (金)【みえDE川柳】 お題:浴びる

天 紫外線浴びて日焼けをする案山子/アカエタカ さん

  橋倉久美子先生昔は「夏に日焼けをすると、冬に風邪をひかなくなる」などと言われ、子どもは真っ黒な日焼けを褒められた。現在では日焼けの害も言われるようになり、子どもたちも日焼け止めや肌を覆う水着を使用するようになってきている。とはいえこれはあくまでも人間の話。
この句は、最後に主人公が「案山子(かかし)」であることが明かされたとたん、日を遮るものもない田んぼの真ん中に一日中立ち尽くす姿が一気に目に浮かぶ。紫外線を浴び放題に浴びながら、仕事をしているのである。

地 日光を浴びせすぎても枯れる花/河内秀斗さん

 橋倉久美子先生水のやりすぎならわかるが、日光の浴びすぎも植物にとってよくないのか?と、一読したときは疑問に思った。しかし晴天の多かったこの夏、我が家ではインゲンの花が落ちて実にならなかったり、朝顔が8月後半になってようやく咲き始めたりした。詳しいメカニズムは知らないが、やはり雨が降らず日を浴びてばかりだったことが影響したのだろう。
ともすれば教訓的になりそうな内容を、花に具象化し、日光で意外性を持たせることで、うまく詠んでいる。

人 剥製になっても悲鳴浴びる蛇/福村 まこと さん

 橋倉久美子先生蛇が嫌い、苦手という人は多い。毒蛇でなくても、あの姿かたち自体が人間には合わないのだろう。かくして蛇は、たとえ自分が人間に遭遇して驚いたり怖がったりしていても、人間から悲鳴を上げられ、石や棒で攻撃される一生を送る。それどころか、死んで剥製にされてからも、悲鳴を浴びるというのである。
剥製になること自体、蛇にとって本意ではない気がするが、まして悲鳴を浴びるというところに、蛇の悲哀を少々感じてしまう。

 

<入選>

蝉の声朝から浴びている酷暑/ひろりん さん

水よりも氷浴びたい40度/田舎のマダムさん

噴水を浴びる幼児に虹が立ち/だんでらいおん さん

黙祷へ読経のような蝉時雨/岡田孝道 さん

浴びるほどつけたんだけど美容液/ぷいこると さん

正論が批判のシャワー浴びている/なるほどマンさん

脚光を浴びて幾つか嘘がばれ/金子鋭一 さん

クレーマーの叱責浴びるのも仕事/火の鳥 さん

浴びたあと拭かずにおいた褒め言葉/汐海 岬 さん

酒あびていいよと医師の太鼓判/石川照夫 さん

 

橋倉久美子先生 橋倉久美子先生
 412句のご投句をいただきました。
水やシャワー、日差し、酒類、言葉、喝采や脚光、視線など、浴びる「もの」自体は一般的なものが多く、びっくりさせられるようなものはありませんでした。ただ、そこからの発想は様々で、おもしろく思いながら選にあたりました。
思いついたそのままを詠んだのでは川柳としてもの足りないことが多いのですが、かといってあまりに凝り過ぎた表現をすると相手に伝わりません。でき上がった作品を誰かに見てもらい、推敲(すいこう)の参考にするのもよいかと思います。

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:50


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