2022年07月29日 (金)【みえDE川柳】 お題:飲む

天 休肝日設けて酒が旨くなる/こまっぴさん

丹川修先生 健康であってこそ、食事もお酒もおいしく戴けるというものだ。休肝日を設けることにより、健康的においしいお酒が気持ちよく飲めるということである。お酒に関する句が多くあった中で、休肝日に目を向けた作者の発想が素晴らしい句であり、またそのあとに「酒が旨く(うまく)なる」と続けたために、より明るく健康的な句に仕上っている。

地 恋ごころ飲み込んでまだ友のまま/汐海 岬さん

丹川修先生 「恋ごころ」を飲み込んだとの発想には、意表を突かれた。どんな事情があって飲み込まざるを得なかったのか知る由もないが、もし飲み込まなかったらどうなっていたのだろう。でも飲み込んだがゆえに、今なお友達でいられるのだろうか。それとも吐き出すことがあるのだろうか。このようなドラマ性のある句に、想像をいろいろと掻き立てられて楽しく鑑賞できる。

人 飲み込んだ不満が腹で跳ねている/戴 けいこさん

丹川修先生 不満や愚痴を飲み込んだ句はたくさん頂いたが、ほとんどがその結果「腹が痛む」などと表現をされている。しかし、この句だけは「跳ねている」と詠われている。一応飲んではみたが、全く消化されずに腹の中でピチピチ跳ねていて、作者の苦悩が手に取るように伝わってくる。いかに言葉の選び方が大切であるかを教えられた句である。

 

<入選>

なみなみと注がぬ試飲の紙コップ/火の鳥さん

想い出を飲んで男が生き延びる/トランスさん

錠剤の愛と信頼口に入れ/牛美さん

オンライン枠はみ出さず飲む仲間/船岡五郎さん

地酒飲むほどに沸き立つ国自慢/福村まことさん

炎天下回し飲みした大やかん/田舎のマダムさん

病院も自分も飽きず飲む薬/流星さん

反省が素直に出来る二日酔い/ムギさん

朝の陽を浴びて美味しい空気飲む/富田さよ子さん

飲み放題参加するまで美女でした/あけみちゃんさん

 

丹川修先生 丹川修先生

 「飲む」という拡がりやすいお題だけに、「酒に関する句」「薬に関する句」「愚痴や不満を飲む句」などを中心に幅広い「飲む」の句をいただきました。しかしながら、「酒」や「薬」を飲むということは、ごく一般的で日常的な行為ですので、どうしても同じような発想になりがちです。「第一発想は捨てる」という基本的なところを念頭において作句したいものです。お酒や薬を飲む時のことを思い浮かべながら、じっと考えると違う発想がわいてくるはずです。こうして新しい発想と出会えた時こそが、川柳を詠むうえでの醍醐味ではないでしょうか。
 たくさんのご投句をいただき、大変ありがとうございました。

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:50


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