日ロ首脳会談 方四島の
共同経済活動 行程表承認

ロシア極東を訪れている安倍総理大臣はプーチン大統領と日ロ首脳会談を行い、両首脳は北方四島での共同経済活動をめぐって、海産物の養殖やイチゴの温室栽培など5つの事業の実施に向けた行程表を承認し、来月、日本側の調査団を現地に派遣することで一致しました。

ロシア極東を訪れている安倍総理大臣は日本時間の10日午後7時半ごろから、ウラジオストクでプーチン大統領との日ロ首脳会談に臨みました。

会談は、少人数会合や通訳だけを交えた首脳どうしのもの、それに夕食を伴う拡大会合という形式で、およそ2時間半にわたって行われました。

両首脳は、北方領土問題を含む平和条約交渉の前進に向けて実施することで合意している北方四島での共同経済活動をめぐって、5つの事業の具体的な内容や実施への作業の進め方を盛り込んだ行程表を承認しました。

具体的には、海産物の養殖ではウニや複数の魚種を対象として議論を継続するほか、温室栽培ではイチゴの品種や実施場所を特定するとしています。

島の特性に応じたツアーの開発では、パッケージツアーを策定するほか、風力発電の導入では調査場所を、ゴミの削減対策では試験的な事業の実施場所を、それぞれ確定するとしていますが、事業を実施する目標時期などは調整中だとして公表が見送られました。

両首脳は先月、悪天候で延期された日本側の調査団を来月初旬に現地に派遣することや、北方領土の元島民の自由な往来に向けて手続きの簡素化を図っていくことでも一致しました。

一方、北朝鮮情勢をめぐり安倍総理大臣は、朝鮮半島の非核化に向けて国際社会による国連安保理決議の完全な履行の重要性を強調し、両首脳は緊密に連携していくことを確認しました。

さらに両首脳は、来年6月に大阪で開かれるG20サミット=主要20か国の首脳会議の際に日ロ首脳会談を行うことや、来月からロシア人の団体観光客を対象に新たなビザの発給要件の緩和を行うことでも一致しました。

このほか、今回の首脳会談に合わせて、8項目の経済協力プランに沿って日ロ両政府や地方自治体、企業間で協力を推進する文書も取り交わされました。

「できることから実現」安倍首相

会談のあと、共同記者発表に臨んだ安倍総理大臣は、北方領土での共同経済活動について「海産物の養殖、温室野菜栽培、観光、風力発電、ゴミの減容の5件について、プロジェクトの具体的な内容と実施に向けた作業の進め方で一致した」と述べたうえで、共同経済活動の具体化に向けた今後の行程表を取りまとめたことを明らかにしました。

そして「四島の未来像をともに描く道筋が見えてきた。事業者を中心に現地で詰めの作業を行うビジネスミッションを10月はじめに実施する」と述べ、来月、日本側の調査団を北方領土に派遣する方針を示しました。

そのうえで「双方の法的立場を害さず、できることから実現する。こうした変化を積み重ねた先に私とプーチン大統領が目指す平和条約がある。私たちの手で必ずやこの問題に終止符を打つ」と述べました。

また、北朝鮮問題をめぐり「ロシアとは緊密に連携していく。プーチン大統領には拉致・核・ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、国交正常化が実現すれば経済協力も実施しうるというわが国の立場を説明した。そのためには拉致問題の解決が不可欠だということも改めて話し、理解と協力を得た」と述べました。

ロシア側の受け止めは

ロシアのプーチン大統領は安倍総理大臣との首脳会談のあと、日本との経済協力の拡大に期待を示したうえで、北方領土での共同経済活動については実現に向けて協力して取り組んでいく考えを明らかにしました。

プーチン大統領は10日の記者発表で、日本との経済協力の枠組みとなっている「8項目の協力プラン」について、「およそ100件の共同事業が成功に向かいつつある」と述べ、日本との経済協力の拡大に期待を示しました。

そのうえで、懸案となっている北方領土での共同経済活動については「実現に向けた行程表で合意し、進展があったことに満足している」と述べ、実現に向けて今後も協議を続け、協力して取り組んでいく考えを明らかにしました。

北方領土問題の解決を含む平和条約交渉についても「数十年間に及ぶ問題で一朝一夕には解決できないが、双方の国民にとって受け入れ可能な解決の糸口を探す用意がある」と意欲を示しました。

プーチン大統領としては、ロシアとアメリカとの対立が激しくなる中でも、ロシア政府が力を入れる国際会議に安倍総理大臣が出席したことを評価して、停滞気味の共同経済活動の実現に前向きな姿勢を示した形です。

ただ、その基盤となる法的な立場をめぐっては、ロシアは自国の主権の下で行うという立場を崩しておらず、どういう枠組みで共同経済活動を実施するのかは依然、課題として残されたままです。

首相 日ロ合弁のエンジン工場視察

ロシアのプーチン大統領との日ロ首脳会談などに臨むためロシア極東のウラジオストクを訪れている安倍総理大臣は10日夕方、日本の自動車メーカー「マツダ」とロシアの自動車メーカーが設立した合弁会社のエンジン工場を視察しました。

このエンジン工場はウラジオストクにある合弁会社の車両組立工場の隣りに建設が進められていて、来年から量産を開始する予定です。

安倍総理大臣はプーチン大統領の出迎えを受けたあと一緒に工場側の説明を受けたり、エンジンの組み立てコンベヤーなど工場内を見て回ったりしたあと、エンジンに署名して経済協力の進展をともに祝っていました。