新型コロナ全数把握見直し 入国時の陰性証明も免除へ

新型コロナ対策をめぐり、岸田総理大臣は、医療機関や保健所の負担を軽減するため、感染者の全数把握を見直す方針を明らかにしました。
また、水際対策の一環として、日本人を含むすべての入国者に求めている陰性証明書の提出について、9月7日から3回目のワクチン接種を済ませていることを条件に免除する方針を示しました。

新型コロナをめぐる今後の政府対応などについて岸田総理大臣は8月24日、関係閣僚などと協議を行ったあと総理大臣公邸で記者団の取材にオンラインで応じました。

この中で岸田総理大臣は、医療機関に対し感染者の氏名や生年月日などの詳細な報告を求めている全数把握について「自治体の判断で、患者の届け出の範囲を、高齢者、入院を要する者、重症リスクがあり治療薬投与等が必要な方などに限定することを可能とする」と述べ、全数把握を見直し、自治体の判断で報告の対象を、高齢者や重症化リスクが高い人などに限定できるようにする方針を明らかにしました。

そして、岸田総理大臣は「届け出の対象外の人について、陽性者の数は把握することを原則とする対応にしたい」と述べました。

また、新型コロナの水際対策に関して「入国者総数、出国前検査、入国時の検疫対応などの各種措置について今後さらに緩和する」と述べました。

そして、まずは日本人を含むすべての入国者に求めている陰性証明書の提出について、9月7日から3回目のワクチン接種を条件に免除する方針を明らかにしました。

一方、現在は2万人となっている一日当たりの入国者数の上限をめぐって「G7=主要7か国並みの円滑な入国が可能となるよう、内外の感染状況やニーズ、主要国の水際措置などを勘案しながら、段階的に緩和を進めていく方針だ。検疫体制の整備を進めて、感染状況を踏まえながら速やかに公表していきたい」と述べました。

さらに、患者に求めている自宅などでの療養の期間について「全体的な感染状況の推移をしっかり見たうえで、期間の短縮などを含めた全体像をできるだけ速やかに公表したい」と述べました。

そして、岸田総理大臣は「ウイルスとの戦いは容易ではないが、過度に恐れることなく、変化するオミクロン株の特性を踏まえながら、できるかぎり感染防止と社会経済活動の両立を実現していくため、対応を加速していく」と述べました。

新型コロナ全数把握見直し 早ければ8月中にも運用開始 厚労省

加藤厚生労働大臣は、24日夜、記者会見を開き「届け出た都道府県は、日ごとの年代別の感染者数の総数を毎日公表していただくことを前提に、届け出の対象を、▽65歳以上、▽入院を要する方、▽重症リスクがありコロナの治療薬の投与や酸素投与が必要と医師が判断する方、▽妊婦の方に限定できるようにする」と述べました。

そのうえで、25日省令を公布し、届け出を受け付ける考えを示しました。

厚生労働省は、届け出を受けて事務手続きを進め、早ければ8月中にも運用を開始したいとしています。

加藤大臣は「全国ベースでの見直しについては、今後の感染状況の推移などを見極めたうえで検討していきたい。また患者に求めている自宅などでの待機期間の短縮についても、速やかに示していきたい」と述べました。

入国時の陰性証明 3回目のワクチンで免除 国際線利用客は歓迎

岸田総理大臣が、新型コロナウイルスの水際対策をめぐり、日本人を含むすべての入国者に求めている陰性証明書の提出を、3回目のワクチン接種を条件に免除する方針を示したことについて、北海道の新千歳空港の国際線の利用客からは歓迎する声が聞かれました。

新千歳空港の国際線ターミナルでは、午後1時半すぎに韓国のインチョン(仁川)空港からの便が到着すると、団体ツアー客などが次々と降り立ちました。

日本人の妻と一緒に初めて北海道を訪れたという韓国人の男性は「PCR検査は高額だし、たった1枚の紙のために2回も病院に行かなければいけないのは面倒なので、緩和はいいニュースだ」と話していました。

韓国人の夫と一緒に北海道に帰省した日本人の女性は「お金もかかるので、できれば検査は受けたくない。これから日本に来やすくなると思います」と話していました。

団体ツアーに参加して訪れた韓国人の女性は「ほとんどの人はすでに感染しているのではないかと思うし、検査に意味があるとは思えない。仕事があるのに日中に病院に行って検査を受けるのも面倒だった」と話していました。

札幌出入国在留管理局によりますと、先月、新千歳空港から入国した外国人は1404人と、新型コロナの感染拡大前の2019年の同じ月のおよそ18万9000人と比べて1%以下にとどまっていて、今回の水際対策の緩和によってどの程度、外国人観光客の回復につながるかが焦点となります。

外国人観光客 受け入れ再開後も厳しい水際対策で低調

出入国在留管理庁によりますと、新型コロナの感染拡大前のおととし1月、主に観光や仕事が目的とされる短期滞在の外国人入国者はおよそ239万人に上っていました。

しかし、その後の感染拡大を受けて政府は2年余りにわたって外国人観光客の受け入れを中断しました。

ことし6月10日からは98の国と地域からのツアー客を対象に受け入れを再開しましたが、観光ビザで入国した外国人は、6月は252人、7月は7903人にとどまり、感染拡大前を大幅に下回る状況が続いています。

原因の1つとして指摘されているのが厳しい水際対策で、日本への入国にあたってはビザの取得と新型コロナの陰性証明の提出が必要で、手続きに時間や手間がかかります。

また、観光で入国できる外国人はツアー客に限定されているほか、全行程で添乗員が同行することが求められています。

このため、旅行会社によりますと、特に個人旅行を好む欧米の旅行者からは「ディナーの時まで添乗員が同行するのか」とか「監視されているように感じる」などといった声も寄せられていて、日本での観光を取りやめたり、より緩和が進んでいるほかの国に行き先を変更する動きも出ていたということです。