旧統一教会と政治家との関係続々と 選挙に協力した宗教2世

旧統一教会と政治家

安倍晋三元総理大臣の銃撃事件を機に、「世界平和統一家庭連合」=旧統一教会と政治家との関係が表面化し、問題視されている。
「上からの指示は絶対」と教えられ、選挙の支援や、特定の候補者の投票を求められた信者の子供たち。
教団の関連イベントに関わったり、選挙運動を手伝ってもらったりした政治家たち。
専門家は、政治家側も旧統一教会側もメリットがあったとし、政治家は社会問題となっている宗教団体との関係を絶たなければならないと指摘する。

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旧統一教会と政治家の関係続々と

安倍元総理大臣が死亡した銃撃事件を起こした山上容疑者は、「旧統一教会=『世界平和統一家庭連合』の信者である母親が多額の寄付をし、家庭生活がめちゃくちゃになった」と供述している。
この事件を機に、政治家と教団との関係が続々と明らかになっている。

安倍元総理大臣の実の弟の岸防衛大臣は、旧統一教会のメンバーが自らの選挙運動を手伝っていたことを明らかにした。

岸防衛大臣
「旧統一教会の皆さんは、何人かは存じ上げている。おつきあいもあり、選挙の際もお手伝いいただいた。電話作戦など、ボランティアでお手伝いいただいたケースはあると思う。旧統一教会に手伝ってもらったというよりは、旧統一教会のメンバーに、ボランティアでお力をいただいたということだ。選挙なので、支援者を多く集めることは必要なことだと思っている」(7月26日記者会見)
岸大臣はその後、関係を見直す考えを明らかにしている。

二之湯国家公安委員長は、旧統一教会の関連団体のイベントで、2018年に京都府実行委員会の委員長を務めたことを明らかにしている。

二之湯国家公安委員長

「平和の祭典という趣旨だったので名前を貸したのであり、旧統一教会の会員ではないし、どういう教義を持って活動しているのか分からない。私は議員活動はもうしていないので、そういう関係は自然と消滅していくのではないか」(8月2日記者会見)

井上義行参議院議員

自民党の井上義行参議院議員は、先の参議院選挙で統一教会からの支援を受けたのではないかと指摘されている。教団との関係についてコメントを出した。
「信徒ではなく、私の政策に賛同を得られたことから、一般的に『賛同会員』と呼ばれている。選挙は、推薦団体が増えたこと、安倍元総理大臣の支援、世界平和統一家庭連合の企画などを通じた呼びかけなど、応援していただいたすべての方々の結果だと思っており、感謝している」

末松文部科学大臣は、事務所によると、去年とおととし、それぞれ旧統一教会の関係者がパーティー券4万円分を購入していたという。

また、野田少子化担当大臣は、旧統一教会の関連団体が共催したシンポジウムに、去年、秘書が出席していたと明らかにした。

立憲民主党や日本維新の会の議員の中にも、旧統一教会主催のイベントに祝電を送ったり、関連団体のイベントに出席したりした議員がいた。

政治家と旧統一教会の関係 双方にメリット

宗教と政治の関係を研究している上越教育大学の塚田穂高准教授は、政治家と旧統一教会の関係はそれぞれにメリットがあると指摘する。
「政治家側のメリットとしては、教団の信者らが選挙の運動員として派遣されてきたことが大きい。また限定的だが、票田として特定候補者に最大で数万票を積むという役割も果たしていた。政策面での支持や提言もあった。
教団側としては、政治家とつながっていることで、自分たちの活動が認められているという“お墨付き”を得たと感じられるし、対外的には広告塔にもなりうる。さらに、教団への捜査や追及の手から守ってもらうという動機もあっただろう」

“つきあうべきではなかった団体”

そして、関係を絶つべきだとし、こう追及する。
「端的に言えば、政治家がつきあうべきではない団体と関わっていたということに尽きる。旧統一教会は、“霊感商法”をめぐって複数の信者が逮捕された刑事事件を起こしたり、多額の強要的な献金をめぐって民事訴訟を数多く起こされたりして、その活動の違法性が指摘されている。さらに、正体を隠した勧誘活動を広く行ってきたことでも知られ、社会問題性や反社会性がある団体だ。この旧統一教会の特殊性を見逃してはいけない。
政治家は、たとえ“うっかり”であっても、教団側に祝辞を述べることや、メッセージを送ることが、被害を受けた人や、苦しんだ人の傷口にどれだけ塩を塗るような行為であったか認識すべきだ」

“関係を絶つ必要がある”

現代日本政治を専門とする立命館大学の上久保誠人教授も旧統一教会が反社会的行動を取ってきたことを問題視している。

立命館大学の上久保誠人教授

「“霊感商法”などで社会的に問題となった団体と関わることで、教団に社会的な信用を与えているというのが問題だ。被害者もたくさんいる中で、結果として教団を助けることになっている。反社会的行動をしていた団体であるということが重要で、政治家は関係をうやむやにするのではなく、断つ必要がある」

当たり前だった選挙協力 “ウグイス嬢”として

旧統一教会と政治との関係について、私たちは信者を親に持つ子供たち、いわゆる“宗教2世”に話を聞くことができた。

両親が旧統一教会の信者だったという女性。今は、脱退しているが、女性自身も、旧統一教会の信者だった。当時は国政選挙の度に様々な協力を教団側から求められ、女性は選挙カーで投票を呼びかける“ウグイス嬢“として動員されたと証言した。当時はそうした協力を疑問に思うことはなかったと言う。

「私自身、約20年前~10年ほど前までウグイス嬢としてたくさんの国政選挙に行きました。旧統一教会の関連団体からの指示のもと、当たり前のように信者が選挙応援に行っている状態でした。自分の意志で応援しているというよりも、ほとんど義務感で行き始めて、途中からは行くのが当たり前のようになっていました」

さらに、女性は旧統一教会と政治との関係は選挙の協力にとどまらず、国会議員を日常的に支える仕事にも及んでいたと証言した。
「教団側から信者を秘書として国会議員側に送り込むこともありました。国会議員からしてみれば、教団側に頼むだけで真面目に仕事をして、大卒で英語もできるレベルの人が来るからということで、『君も頼みなよ』と議員から議員にと紹介する形だったと聞いています」

度重なる投票の呼びかけも

“選挙への協力は当たり前”という旧統一教会の空気に違和感を持ったという2世の男性もいる。両親が信者で、教会の教えや献金のあり方に疑問を持っているが、脱会せずに教会に残り続けている。

ぜひ一人でも二人でも、先生の投票して欲しい

男性は、今年7月の参議院選挙の際、旧統一教会の支部の役職者から送られてきたメッセージを見せてくれた。そこには、特定の候補者に投票するよう求める内容が記されていた。

「一人でも多く〇〇先生に投票してくださいと、あとは周りの知人とかにも投票をお願いしてくださいという旨が書いてあります。これまでの別の選挙でも、教会全体として今回はこの候補を応援しましょうと、特定の人や党を応援するということは、今までもよくありました。信者たちは『とりあえず教会が“この人に入れろ”って言ってるから入れておくか』みたいな感じで。それって本来あるべき選挙の姿とはちょっと違うのかなと感じています。本来なら自分の頭で誰に入れるべきなのかを考える機会があるはずだと思うんですけど。自分で考える機会を奪われているというのはあるのかなと思います」

取材を進めると、旧統一教会の2世たちの多くが、今回の選挙で同じように特定の候補者への投票を呼びかけられていたこともわかった。
SNSのLINEで繰り返し投票をお願いされたケースや、信仰心の強い両親に対して、信仰への拒否を伝えると投票所入場券を隠されてしまい、投票することを諦めたと証言する2世もいた。

天の父母様聖会 世界平和統一家庭連合

選挙の際の対応について、NHKが旧統一教会に取材したところ、次のように回答した。
「特定の政党ならびに特定の候補者を組織的に応援することはありません。(※他の友好団体においてはその限りではございません。)なお、信徒個人が思想信条の自由によって行う、個人的な政治活動については把握することができません」

政治と宗教の関係はどうあるべき

政治と宗教の関係はどのようにあるべきなのか。

上越教育大学の塚田准教授は、宗教団体一般が特定の政党や候補者を支援することが問題なのではなく、政治家が反社会性のある団体と関わることが問題だと言う。それとともに政治と宗教との関係を公表すべきだという認識を示した。
「大事なのは政治と宗教の関係を透明化することだ。政治家はどのような宗教団体からどのような支援を受けているか、また宗教団体もなぜその候補者を支援するのか公表すべきで、有権者はそれも判断材料として投票できる形が望ましい」

立命館大学の上久保教授は、政治家個人が旧統一教会との関係を絶つためには、党がリーダーシップをとる必要があると言う。
「特に関係した議員が多い自民党は、首相や党の幹部がリーダーシップをとって、一人一人の議員に検証や説明をきちんとさせて関係性を正すことが重要だ。また、国会で徹底的に議論に応じるべきだ。地方議会から国会に至るまで追及されなければならない」