衛省 過去最大
5兆2986億円の概算要求

来年度予算案の概算要求について、防衛省は北朝鮮の弾道ミサイル対策として新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の取得経費などを盛り込み、過去最大となる5兆2986億円を求めることを決めました。

防衛省は31日、小野寺防衛大臣らが出席して省議を開き、来年度予算案の概算要求について、今年度当初予算より2.1%多く、過去最大となる5兆2986億円を求めることを決めました。

この中では、北朝鮮の弾道ミサイル対策として配備する方針の、新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」2基について来年度から5年かけて取得することとし、概算要求では初年度分が盛り込まれています。

「イージス・アショア」をめぐっては、当初1基当たり800億円程度としていた取得経費が、500億以上多い1340億円に増える見通しとなり、批判が出されたことを踏まえ、今回、一部の性能を削ることで取得経費を100億円程度抑え、1237億円としています。

また、中国の海洋進出を念頭に、周辺海域や離島防衛の強化策として、最新鋭の戦闘機F35A、6機を追加で取得する費用や、射程900キロの長距離巡航ミサイルを搭載できるよう、F15戦闘機を改修する費用などが計上されています。

さらに、各国が宇宙をめぐる新しい軍事技術の開発にばく大な投資を行っていることを踏まえ、宇宙空間を監視するレーダーシステムの取得費が計上されました。

一方、自衛隊のイラク派遣の日報問題を受け、行政文書の適切な管理にAI=人工知能を活用する事業費も盛り込まれました。

さらに増額の可能性も

防衛省は来年度予算案の概算要求で、過去最大となる5兆2986億円を求めることを決めましたが、まだ金額が示されていない事業も盛り込まれており、さらに予算額が増える可能性もあります。

防衛省の来年度予算案の概算要求が過去最大となった理由としては、イージス艦の建造費など過去の契約に基づく複数年にまたがる支払いが例年より大幅に増えているほか、地上配備型の迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」や、宇宙ごみなどを監視するためのレーダーや運用システムなど、新たな装備の導入が盛り込まれたことがあります。

一方、今回の概算要求では、例年盛り込まれているアメリカ軍関係の一部の経費について、事業だけを記載して金額を明示しない形がとられています。

この経費はアメリカ軍基地の再編と沖縄の基地負担軽減に関するもので、これまでの概算要求では金額が示されるケースがほとんどでした。これまでの予算額としては、今年度(平成30年度)が当初予算で2212億円、昨年度2039億円などとなっています。

防衛省の概算要求がここ数年と同様にほとんど認められた場合、そこにアメリカ軍関係の経費が加算されることになり、その結果、過去最大となった概算要求からさらに予算額が増える可能性もあります。

今回の概算要求について防衛省は「現実に真正面から向き合った防衛体制を構築することを目的としている」としています。

イージス・アショア 総額見通せず

防衛省の来年度予算案の概算要求では、地上配備型の迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」を導入するための経費として、2000億円以上が計上されましたが、今後、複数年にまたがってさらに高額の予算が必要になる見通しです。

今回の概算要求では、レーダーを備えた本体を2基整備するための経費として2343億円、施設の基本設計費などとして9億円の合わせて2352億円が計上されました。

ただ、イージス・アショアには、今回計上された本体のほかにも、迎撃ミサイルの発射装置などを整備する必要があります。しかし、迎撃ミサイルの発射装置はまだ金額がわかっておらず、ミサイルも1発当たり10億円から20億円以上の高額になるとも言われています。

また、これまでにアメリカ側が防衛省に示した見積もりでは、導入にあたって、システムを運用するための試験に131億円、隊員の教育・訓練に31億円などの費用がかかるとされています。こうしたことからイージス・アショアの導入にあたっては、今後、複数年にまたがってさらに高額の予算が必要になる見通しです。

イージス・アショアについて、防衛省は秋田市と山口県萩市にある自衛隊の演習場に1基ずつ配備する方針ですが、地元の住民からレーダーによる健康への影響など懸念の声が出ています。