「新規感染者数 しばらく
高いレベルで推移か」専門家

新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合が2日開かれ、全国の新規感染者数の減少は緩やかで、しばらくの間は感染者数が高いレベルのまま推移することが予想されると指摘しました。重症者や亡くなる人の数は多い状態が続いているとして、高齢者へのワクチンの追加接種の加速などが求められるとしています。

専門家会合は全国の感染状況について、すべての年代で減少傾向になっている一方、特に大都市部では感染者数が多く減少のスピードは緩やかなため、少なくともしばらくの間は感染者数が高いレベルで推移することが予想されるとしています。

さらに、沖縄県などまん延防止等重点措置が解除された地域を中心に、夜間の繁華街の人出が急増し、感染者数の増加傾向が見られているほか、今のところ兆候は見られないものの、感染力がより高いと指摘されている「BA.2」と呼ばれる系統のウイルスに置き換わって再び増加に転じる可能性や、年度末を迎えて人との接触機会が増えることにも注意が必要だとしています。

また、重症者数と亡くなる人の数は多い状態が続いていて、当面、多くの地域で軽症や中等症の医療体制のひっ迫や、高齢の重症者数の増加によって、重症患者の病床使用率の高止まり傾向が続く可能性があるとしています。

専門家会合は亡くなる人を減らし、感染を確実に減少傾向に向かわせるため、高齢者への接種をさらに加速する必要があるほか、コロナに感染していても基礎疾患の治療を続けられるようにするなど、重症化リスクの高い人を迅速に受診につなげることが必要だと指摘しています。

さらに、これまで行事など、多くの人が集まる機会が増えると感染が拡大したことから、卒業式や春休みなどを迎える年度末に向け、1つの密でも避け、外出の際には混雑した場所や感染リスクの高い場面を避けることや、不織布マスクの正しい着用や手指の消毒、換気といった感染対策を徹底することが必要だと強調しました。

後藤厚労相「年度末新年度に向けて感染防止策徹底が必要」

後藤厚生労働大臣は専門家会合で「多くの地域で新規感染者数の減少が継続しているが、横ばいや増加に転じる地域も見られ、大都市部における感染レベルは依然として高く、地方の感染状況の改善傾向も弱い。当面は多くの地域で軽症・中等症の医療提供体制などのひっ迫と、高齢の重症者数の増加による重症病床使用率の増加傾向も続く可能性がある」と述べました。

そのうえで「特にこれから年度末や新年度に向けて、卒業式や春休み、入学式や花見など、多くの人が集まる行事などが行われるとともに、就職や進学などを機会に移動が多くなる季節となる。これまで、このような機会をきっかけに感染が拡大したことから、感染防止策の徹底が必要だ」と述べました。

脇田座長「感染再拡大の可能性 十分にある」

厚生労働省の専門家会合のあとの記者会見で脇田隆字 座長は今後の感染状況について「大都市では、新規の感染者数の今週と先週の比は0.8程度と減少傾向になっている。ただ『実効再生産数』は『1』前後で少し接触の機会が増えると感染拡大の要因となりうる状況だ。現在、新しい流行の始まりが見えてきているところはないがこれまでの流行が継続している状況がいろいろな地域で出ていると考えている」と述べました。

そのうえで「今後、春休みや3連休、それから年度末で卒業式や就職などがあり、接触の機会やふだん会わない人と会う機会が増える。これまでの経験からもそうした機会をきっかけに感染拡大が繰り返されてきたので、今後も感染が再拡大していく可能性は十分にある。基本的な感染対策をしっかりしていくことが重要だ」と話していました。

またオミクロン株の系統の1つ「BA.2」については「『BA.2』系統は今はまだ低いレベルだが、今の主流である『BA.1』系統よりも感染力が強いなどとされることから、仮に今後増えてくると再び急速な感染拡大が止まらない状況になる可能性もある」と話していました。

「BA.2」“東京は来月 オミクロン株全体の74%”試算

新型コロナウイルスのオミクロン株の1つ「BA.2」系統のウイルスについて、京都大学の西浦博教授などのグループは東京都では、来月にはオミクロン株全体の74%がこのウイルスに置き換わるとする試算結果を公表しました。

これは京都大学の西浦教授と北海道大学の伊藤公人教授らのグループ2日、開かれた厚生労働省の専門家会合で示しました。

グループでは東京都が行っている「BA.2」の調査結果をもとに今後、「BA.2」の占める割合がどう推移するかを予測しました。

その結果、先月上旬にはほとんど検出されなかった「BA.2」が今後、増加し、来月1日には東京都のオミクロン株全体の74%がこのウイルスに置き換わる可能性があるという計算になったということです。

また、海外のデータを使った試算では「BA.2」は、現在、日本で主流となっている「BA.1」系統のウイルスと比べて感染力の強さの指標となる「実効再生産数」が26%高いという結果になったということです。

西浦教授は「『BA.2』への置き換わりが進むとみられる3月後半は人の移動が活発になる時期で、感染の再度の増加や全国的な拡大に注意が必要だ」とコメントしています。