最高裁 裁判官の国民審査
対象11人全員が信任される

衆議院選挙とともに10月31日投票が行われた最高裁判所の裁判官の国民審査は、対象になった11人の裁判官全員が信任されました。

国民審査は、最高裁判所の裁判官を信任するかどうか国民が審査する制度で、前回・平成29年の衆議院選挙のあとに任命された11人について、31日、投票が行われました。

総務省によりますと、審査を受けた11人の裁判官はいずれも罷免すべきだとする票が過半数に達しなかったことから、全員が信任されました。

投票率は前回、平成29年の審査より2.35ポイント高い、55.69%でした。

最高裁判所の裁判官の国民審査は、昭和24年から始まり、今回が25回目ですが、これまでに罷免すべきだとする票が、過半数に達したことはありません。

裁判官 「罷免すべき」票が投じられた割合
今回、審査の対象となった11人の裁判官について、罷免すべきという票が投じられた割合です。

▽深山卓也氏(67)7.85%。

▽岡正晶氏(65)6.24%。

▽宇賀克也氏(66)6.88%。

▽堺徹氏(63)6.24%。

▽林道晴氏(64)7.72%。

▽岡村和美氏(63)7.29%。

▽三浦守氏(65)6.71%。

▽草野耕一氏(66)6.73%。

▽渡邉惠理子氏(62)6.11%。

▽安浪亮介氏(64)5.97%。

▽長嶺安政氏(67)7.27%。

11人の平均は6.82%でした。

昭和24年に国民審査の制度が始まってから罷免すべきという票の割合がこれまでで最も多かったのは、昭和47年に審査を受けた行政官出身の裁判官で、15.17%でした。

平成15年以降は10%を上回った人はいません。
専門家 “夫婦別姓”めぐる判断 投票行動に影響か
今回の結果について、国民審査の制度に詳しい明治大学政治経済学部の西川伸一教授は「全体としての不信任の割合は過去の結果と大きな違いはないが、裁判官ごとに見ると、投票行動に特徴がみられる」として、ことし6月に最高裁判所大法廷が示した、夫婦別姓をめぐる判断が影響した可能性が高いと分析しています。

西川教授は「対象となった11人のうち、罷免を求める割合が7%を超えた4人はいずれも夫婦別姓をめぐる判断で『民法の規定は憲法に違反しない』という結論に賛同していた。一方、6%台やそれ未満の7人は『憲法違反』と判断、または当時、就任していなかった。夫婦の名字をめぐる議論は身近なテーマで、選挙の争点の1つにもなっていて、1%の差が生じたのは決して偶然ではなく、それぞれの裁判官の判断が投票行動に影響した可能性が高いと考えられる」としています。

そのうえで「裁判官の判断に対して、国民が意思を示したのだとすれば、国民審査の意義に沿うもので歓迎すべきことだ。一方、今回は、就任したばかりで最高裁での仕事ぶりが十分に分からない裁判官が4人も審査の対象となるなど、制度の課題は多い。国民審査を、より質の高い制度にするための議論が必要だ」と指摘しています。