型肺炎 団体旅行中止で
国内各地に影響

新型のコロナウイルスによる肺炎患者が増え続けていることから中国では、日本を含む海外への団体旅行が27日から当面中止されました。日本を訪れる中国人旅行者は、海外からの旅行者全体の3割を占め、消費する金額も多いことから、観光業をはじめ日本経済への影響が懸念されています。

日本政府観光局によりますと去年1年間に日本を訪れた中国人旅行者は、959万4300人と海外からの旅行者のおよそ30%を占め国や地域別では最も多くなっています。

また、中国人旅行者が去年、買い物や宿泊など日本国内で消費した金額は1兆7000億円余りと海外からの旅行者全体のおよそ35%にのぼっています。

中国人旅行者の1人当たりの消費金額は21万2981円と全体の平均の15万8000円を大きく上回っています。

観光庁によりますと中国人旅行者のうち団体旅行の利用者は、ここ数年、3割程度にのぼっているということで、観光業をはじめ日本経済への影響が懸念されています。

愛知のホテルでは1日だけで1300人がキャンセル

愛知県の中部空港近くのホテルには、26日だけで1300人ほどのキャンセルの連絡が寄せられました。

中部空港がある愛知県常滑市のホテル「スプリングサニーホテル名古屋常滑」では、中国が春節の大型連休になるこの時期、予約の7割近くを中国からの旅行者が占めています。

しかし、新型のコロナウイルスの感染が拡大するなか、26日だけで、10の旅行会社を通じて、合わせて1300人ほどのキャンセルの連絡が入ったということです。

宿泊料として支払われる予定だった金額は総額でおよそ700万円にのぼるということですが、今回は、キャンセル料はとらずに対応しているということです。

春節に合わせた宿泊予約は、来月上旬ごろまで入っているということで、片野憲一郎支配人は、「かき入れ時ということで頑張っていたが、今回の状況は非常に残念だ。1日も早い終息を願いたい」と話していました。

クルーズ船やフェリーにも影響

国土交通省によりますと今回の「春節」の期間中、中国から日本に寄港するクルーズ船は合わせて15隻で、およそ3万5000人の観光客が訪れる見通しでしたが、中国で海外への団体旅行が中止となったことなどを受けて、クルーズ船の乗客にもキャンセルがでているということです。

<クルーズ船>
今月24日の予約状況では、24日から30日までの間に沖縄県の那覇港に4隻、石垣港に2隻、宮古島の平良港に2隻、長崎県の長崎港に3隻、佐世保港に2隻、福岡県の博多港に2隻の合わせて15隻のクルーズ船が日本に寄港し、合わせておよそ3万5000人の観光客が訪れる予定でした。

ところが、中国で海外への団体旅行が中止となったことなどを受けて、クルーズ船の乗客にもキャンセルが出ているということです。

<フェリー>
日本と中国を結ぶ定期フェリーは2つあり、このうち大阪や神戸と中国・上海を結ぶ「新※ガン真」を運航する日中国際フェリーによりますと、次回、2月8日に中国 上海から日本に向かう船については人を乗船させず貨物だけ乗せて運航する方向で検討しているということです。

一方、日本から中国に向かう船は通常どおり運航するものの、キャンセルが相次いでいるということです。

また、大阪と中国 上海を結ぶ「蘇州號」を運航する上海フェリーによりますと、春節の期間は、当初から運休の予定だったということで、今のところ、予約状況に大きな変化はないということです。

(ガンは「監」の皿が「金」)

観光船のキャンセル700人超え

冬のオホーツク海で流氷などを楽しむ北海道網走市の流氷観光船、「おーろら」を運航している「道東観光開発」では、27日からことし3月までの中国からの予約客5000人のうち、27日朝までにおよそ700人分のキャンセルが出たということです。

会社ではキャンセルの影響を少しでも和らげようと、市内の観光施設に置く「おーろら」のパンフレットや割引券を増やしたり、営業活動を拡大したりするということです。

道東観光開発の大木俊和営業所長は、「1日も早い肺炎の影響の終えんを期待しています。キャンセルの影響は営業活動を拡大してカバーしていきたい」と話しています。

また、紋別市で流氷観光船「ガリンコ号」を運航している会社でも、27日までに51人分のキャンセルが出ているということです。

対策の動きも広がる

中国から多くの観光客が訪れる岡山県倉敷市の美観地区では、観光案内所にマスクや消毒液を置くなど、感染を防ぐための対策が取られています。

中国の旧正月・春節の休暇に合わせて毎年、大勢の観光客が訪れる倉敷市の美観地区では、マスクや消毒液を駅や市内の観光案内所など5か所に設置する対応を取っています。

また、地元の観光協会は、案内にあたるスタッフにマスクの着用を義務づけ、訪れる観光客にも手の消毒を勧めたり、要望があればマスクを配ったりすることにしています。

上海から訪れた中国人の女性は「上海ではそこまで影響を感じていませんが、マスクの着用や手の消毒などは気をつけています」と話していました。

倉敷観光コンベンションビューローの山本俊哲課長は「今後も状況に応じて対策をしていきたい」と話していました。

いっぽうで、中国政府が27日から海外への団体旅行を当面中止するとしたことについて、土産物店の従業員からは、「春節の時期だが中国人の団体客が去年より少なく感じる」などと売り上げの減少を心配する声も聞かれました。

ドラッグストアではマスクなどの需要増

ドラッグストアでは、マスクや消毒液といった感染を防ぐための商品の需要が増えています。

広島市中区の商店街にある店舗内のマスクの販売コーナーでは、けさも多くの人が購入に訪れ、担当者が商品の補充に追われていました。

隙間ができにくい高機能の商品などがよく売れているということで、この店舗では、購入できる数を1人当たり3個までに限定していました。

店舗では、中国などで旧正月の春節にともなう連休に入ったことから、中国人観光客が購入するケースも見られるということです。

マスクを購入した広島市の68歳の女性は「母に頼まれたので、買いに来ました。万が一に備えてしっかり予防したいです」と話していました。

ドラッグストアを運営する会社の営業本部の田中大樹さんは、「いつもの冬と比べても売り上げが伸びています。国内での感染が広がらないでほしいです」と話していました。