ページの本文へ

NHK岡山WEBリポート

  1. NHK岡山
  2. 岡山WEBリポート
  3. 新型コロナ5類移行半年 医療体制・後遺症・新感染症への備え

新型コロナ5類移行半年 医療体制・後遺症・新感染症への備え

NHK岡山「もぎたて!」リポート
  • 2023年11月13日

新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に移行して半年がたちました。医療提供体制や後遺症、新たな感染症への備えなど、気になるポイントを解説します。
(岡山放送局 記者 神谷佳宏・内田知樹)

通常の医療提供体制へ

岡山県は新型コロナの5類移行に伴い、外来の診療を行う医療機関を移行前のおよそ1.5倍となる1,029に増やし、入院患者については県内159のすべての病院で受け入れています。一方で、新型コロナの患者専用に確保する病床は減らし、10月からは患者の数によって4段階に分けて対応しています。入院患者が248人未満の場合は病床は確保せず、248人以上の場合は最大31床、373人以上の場合は最大124床、596人以上の場合は最大166床を確保するとしています。こうした体制は令和6年3月までで、4月以降は通常の医療提供体制に完全移行し、新型コロナの入院患者も全員、一般病床で対応する予定です。

(岡山県医師会 松山正春 会長)
新型コロナはもう終わったと感じでいる人も多いが、例年、年末年始はとても流行する。基本的なことを思い出して、十分対策をしてほしい

後遺症外来“コロナ感染対策を”

岡山大学病院は、令和3年2月、新型コロナ後遺症の専門外来を設置し、10月10日までに800人の患者が受診しました。病院によりますと、オミクロン株では、感染者の1,000人に1人程度の割合で後遺症がみられ、感染の直後は軽症だった人がほとんどでした。 
また、オミクロン株の後遺症を症状別に見ると、およそ6割が「けん怠感」を、およそ3割が頭がすっきりせずに思考力が低下する「ブレインフォグ」の症状を訴えています。さらに、睡眠障害や頭痛などを訴える患者もいて、さまざまな症状や要因があり、特効薬もないため、この外来では対症療法を行っています。

(岡山大学病院  大塚文男 総合内科・総合診療科長)
感染から1か月程度たっても、けん怠感やせきなどの症状が続くときは、かかりつけ医に相談してほしい。手洗いや場面に応じたマスク着用など、引き続き感染対策をしてほしい

後遺症を詳しくみると

岡山大学病院が、新型コロナ後遺症の専門外来を10月10日までに受診した800人について詳しく調べました。このうち、オミクロン株に感染した人は545人いて、感染直後の症状は自宅やホテルなどで療養した軽症の人が517人で95%、病院に入院した中等症以上の人は28人で5%でした。従来株やデルタ株に比べると、オミクロン株では症状が軽くても後遺症を訴える人の割合が多くなりました。
症状別に見ると、
「けん怠感」64%(351人)、もやがかかったように感じて頭がすっきりせず思考力が低下する「ブレインフォグ」31%(170人)、「睡眠障害」24%(135人)、「頭痛」24%(133人)、「呼吸困難感」18%(101人)、「集中力低下」13%(76人)、「嗅覚障害」11%(62人)、「味覚障害」11%(61人)、「脱毛」5%(30人)でした。
オミクロン株は従来株・デルタ株と比べて、「けん怠感」「ブレインフォグ」「睡眠障害」「頭痛」「集中力低下」を訴える人の割合が増えていましたが、「嗅覚障害」「味覚障害」「脱毛」は減少していました。治療を終えた患者は342人で、コロナを発症してから回復するまでの平均日数は204日でした。一方、外来に通院中の患者は421人いて、発症からの平均日数が453日でした。およそ半数の患者が、半年たっても後遺症が続いたという結果になりました。

後遺症の診察医療機関をホームページで案内

県のホームページ

新型コロナの感染から1か月程度たっても、けん怠感などの症状がとれない時、国や岡山県はかかりつけ医に相談することを推奨しています。しかし、引っ越しなどでかかりつけ医がない人もいることから、県は後遺症の診察を行う医療機関をホームページで案内しています。県内の80以上の医療機関が紹介されていて、けん怠感や頭痛、睡眠障害など医療機関ごとに対応できる症状も示されています。なお、岡山大学病院の専門外来は、原則としてかかりつけ医などの紹介状が必要です。 

新型コロナは感染者減もインフルエンザは流行拡大

インフルエンザのワクチン接種

新型コロナの感染者は減っていますが、インフルエンザは流行が拡大していて、医療機関は対応に追われています。岡山市南区にある小児科のクリニックでは、10月1日からインフルエンザのワクチン接種を行っています。10月下旬も保護者に連れられた子どもたちが次々と訪れ、接種を受けていました。

(10歳と7歳の男の子の母親)
近隣の小学校ではやっているので打ちに来た。もしかかっても軽くすむと思うので、打てて良かった

一方、ワクチン接種をするかたわらで、発熱患者が来院する場面も見られました。このクリニックでは例年より5か月ほど早く、インフルエンザの患者が増えているといいます。

県によりますと、11月5日までの1週間に報告があった1医療機関あたりのインフルエンザの患者数は20.04人で、7週連続で前の週より増加していて「注意報」も発令されています。

(ももたろうクリニック 森茂 院長)
50年医者をしているが、これだけ早い時期からインフルエンザが流行するのは初めてだ。この時期に予防接種をしながら、インフルエンザの患者を診るのは珍しい。新型コロナとインフルエンザともに、ワクチンの接種を検討して感染の予防に努めてほしい

コロナの“教訓”を 新たな感染症への備えに

岡山県医師会などは新型コロナへの対応で得た教訓を生かし、新たな感染症への備えを進めています。10月に開いた会議で、コロナ禍の令和2年9月に結成された「岡山県クラスター対策班=OCIT」の今後の運用などについて話し合いました。OCITは、医療関係者で構成された岡山県の組織で、医療機関や福祉施設でクラスターが発生した場合に対応したり、医療従事者や高齢者施設の職員向けに感染予防の研修を行ったりしてきました。

令和5年3月までに、クラスターが発生した310の現場に延べ669人が派遣され、治療を行ったり、感染が起きた場所とそれ以外を分ける「ゾーニング」の指揮などにあたったりしました。

新型コロナは5類に移行しましたが、会議の出席者からは新たな感染症の発生に備えて「OCITの枠組みの中で、感染対策のあり方や、人材育成の具体的なプランなどを検討すべきではないか」とか「感染症に対応できる人材が不足しているので、メンバーを増やすべきだ」などといった意見が出されたということです。

(会議を立ち上げた感染予防に詳しい岡山大学大学院・頼藤貴志 教授)
コロナ禍で培った経験を無駄にせず、継承していくために会議を立ち上げた。コロナ禍でできた仕組みを今後の新たな感染症に対応できるように維持しつつ、さらに発展させる必要がある

  • 神谷佳宏

    岡山放送局 記者

    神谷佳宏

    2023年入局  県政を担当

  • 内田 知樹

    岡山放送局 記者

    内田 知樹

    2021年入局 警察を担当 新型コロナの後遺症について継続的に取材

ページトップに戻る