維持できるか?病院食 物価高の影響 病院にも
- 2023年10月12日
相次ぐ食材費や光熱費などの高騰は、医療現場にも深刻な影響を及ぼしています。「このままでは、患者の食事の質を大幅に下げざるを得なくなる」。現場からは悲痛な声が上がっています。現状を取材しました。
(NHK名古屋 記者 松岡康子)
病院食 ”唯一の楽しみ”
愛知県碧南市にある小林記念病院の昼食の時間です。
移動できる人たちが病棟の食堂に集まり、食事を楽しんでいました。
患者「おいしくいただいています。これが唯一の楽しみ」
患者に合わせた食事づくり
この病院では、院内にある厨房で、入院患者およそ150人分の食事を毎日3食作っています。
患者の半数以上は、食べ物を飲み込んだり、消化したりする機能が衰えているため、1人1人が食べやすいように工夫しています。
管理栄養士 土田麻由美さん
「嚥下機能が落ちた方には、刻みのお食事よりも、本当に完全に粒をなくしたペースト状のお食事にして提供しています」
患者の状態に応じて、通常のもの、柔らかめ、刻み食、ミキサー食、とろみ食など、きめ細かく対応。
麺類なら食べられるという人には、うどんやそうめんを用意しています。
こうした準備や加工には、手間がかかり、人手が必要です。
管理栄養士 土田麻由美さん
「食べていただかないと治るものも治らないので、まずは食べられるというところが第一優先。”ここのごはんおいしいね”と言ってくださる人が多くいらっしゃるので、調理員もそれを励みに毎日頑張っているところです」
食材費、高熱費、人件費が上昇
病院がいま直面しているのが、食材費の高騰です。
管理栄養士 土田麻由美さん
「お野菜に関しては、カットした状態で、このように1日分ずつ入っています」
カット野菜やタマゴなど、値上がりが続いています。
また油やマヨネーズも、おととしに比べて倍近くに。食材の値上がりで1食あたりの食材費は、5年前に比べて32円上がっています。
管理栄養士 土田麻由美さん
「どれも結局料理をする上では欠かせないので、なくすわけにもいかないですし、値段が少しでも安いところを探すには探しますが、どこの業者も値上がりしているのが現実です」
また食材費のほかにも、光熱費や人件費も上昇しています。
給食部門は赤字
一方で、「入院時食事療養費」として、病院に支払われる費用は、1食あたり640円。
この費用は国が定めていて、30年近く据え置かれたままです。
このため給食部門は赤字。新たな人材の確保も年々厳しくなっています。
病院はこのままでは食事の質を大幅に下げざるを得なくなると危機感を訴えています。
小林記念病院 小林清彦理事長
「このままいくと楽しみだとか、そういった付加価値を提供することができず、ただ治療する、生きるという中で必要な栄養素を提供するということに限定されてしまう。大きな決断をせざるを得ない時が来るかも知れないなという思いからですね。なんとかこの現状を変えてもらいたいと思っています」