ページの本文へ

NHK名古屋のおすすめ

  1. NHK名古屋
  2. 名古屋のおすすめ
  3. どう解消?介護現場の人手不足

どう解消?介護現場の人手不足

  • 2023年08月17日

深刻な人手不足が続く介護現場。
”マッチョ人材”の活用や最先端の設備の導入など、これまでにないユニークな発想で、人手不足を解消しようという動きが、介護現場で広がっています。

空席目立つ  介護就職フェア

7月、愛知県豊橋市で開かれた介護人材を集めるための就職フェア。
事業所が開設したブースに空席が目立ちました。

介護事業所の担当者
「本当に人材が不足しているというか、この業界にあまり足が向いていない」。

介護事業所の担当者
「このまま続いていくと、利用されている方が十分なケアを受けられなくなってしまったりとか、心配な状態ではあると思います」。

”マッチョ”で 介護のイメージアップ

こうした中、これまでにないユニークな発想で、人手不足を解消しようという動きも…。

引き締まった筋肉隆々の若者たち。
実はこの人たち、障害者の生活を支える介護士です。

介護士たちを束ねる社長の丹羽悠介さんです。
人材確保には介護のイメージチェンジが必要だと、5年前、若者に人気のフィットネスの実業団を、社内に立ち上げました。

株式会社ビジョナリー 丹羽悠介社長
「人材がなかなか集まらない時期があって、人手不足でどうしようとなったときに、マッチョって格好いいし、SNSの時代なので写真とかで映えるし、興味を引くには最高だなと思って。
マッチョたち、格好いい子たちが働いていて、あの人たち介護士らしいよ、という順番で印象をもたせようという作戦でした」

宮﨑康央さん

SNSで実業団のことを知り、去年入社した宮﨑康央さん、21歳です。
もともとは、トレーナーを目指していました。

宮﨑康央さん
「最初は、介護士になる考えは全くなかったんですが、SNSでこの会社のことを知って、施設見学していく中で、先輩と後輩の関係だったり、雰囲気がとてもいいなと感じたので入社することにしました」。

社員の平均年齢は30歳。
若い人たちをひきつける理由の1つが、法人契約を結ぶジムの使用が無料になることです。
さらに、フィットネス大会で上位の成績をおさめて実業団のメンバーに入ると、1日8時間の勤務のうち、2時間は筋トレが仕事になります。

宮﨑康央さん
「今日のシフトだと、障害者の支援に入って途中でトレーニングして、また支援に入るという流れで、トレーニングの時間をしっかり確保していただけるのが、すごくありがたいです」

当初は介護の仕事に戸惑いもありましたが、今は教える側に回ることもあり、大きなやりがいを感じています。

宮﨑康央さん
「入浴介助だったりすると、背中を洗うのに利用者さんの体を預けていただくんですが、そういう時に ”腕が太いと安心して体を預けられるね” と実際に言っていただいたことがあります。
介護の仕事は、汚いだったりお給料が少ないだったりというイメージがあると思うのですが、実際にやってみると、利用者さんの成長を直で感じることができてすごい楽しい職業です」。

会社では、実業団メンバーの活躍や職場の様子を、SNSで積極的に発信。
入社希望が相次ぎ、このマッチョ介護を全国に広げようとしています。

株式会社ビジョナリー 丹羽悠介社長
「福祉だから、介護だから人が集まらないというのは、そんなのうそだよというのを証明したいと思っている。すべての都道府県に拠点を出すことを目標にかかげていまして、全国各地で採用もしながらチャレンジしていこうと」

最新設備でスタッフの負担減らす

一方、最新の設備を導入し、スタッフの負担を減らすことで、人材の確保を目指す事業所もあります。

この施設では、すべての部屋の天井にカメラ付きのセンサーを設置。
転倒のリスクがあるお年寄りの体がベッドからはみ出すと、センサーが感知してスタッフのスマホに知らせます。
スタッフは、画面に映し出されるお年寄りの様子を見て、声をかけます。

「どうされましたか」

「トイレに行きたいです」

「今から行きますね」

さらに、寝ているお年寄りの胸の動きを検知し、一定の時間動きがないと通知される機能もあり、夜間、2時間おきに行っていた部屋の見回りを廃止することができました。

施設職員
「今までは、全部の部屋のドアをあけて、時にはそばまで行って、起きているかどうかわからないので声をかけたりしていたんですが、それをセンサーで分かるようになって、一番は僕たちの負担も軽減されたんですが、入居者の方が寝られるようになったという声もよくあがったりするようになって、良いシステムだと思います」

また、ベッド脇に置いて使うこちらのポータブルトイレ。
部屋の配管につないで水で流せる水洗タイプを導入しました。

施設職員
「こちらの場合だと排泄してすぐに流すこともできるので、ベッドサイドの匂いもしないですし、職員の片付ける一手間も省けることになったことで、皆さんから働きやすくなったという声を聞いています」

愛生館グループ 小林清彦代表
「これから高齢者の数が増えるから介護の人も増やすのではなく、働く人一人一人が生産性を高め、そして高齢者が増えても今いる人材でできる、そんな職場環境を作る、そのためにICT(情報通信技術)とか先進機器の活用はやはり不可欠だと思います」

いまやどこの業界も頭を悩ませている、働き手不足。
”マッチョ人材”で介護のイメージを覆したり、最新の技術で仕事の負担を減らす工夫は、人材不足を打開する大きなヒントになりそうです。

 

  • 松岡康子

    NHK名古屋放送局記者

    松岡康子

    静岡局、豊橋支局、名古屋局、科学文化部、生活情報部を経て、2013年から再び名古屋局。 
    主に医療分野や介護分野の取材を担当。 
    愛知県小牧市出身。2人の息子の母。

ページトップに戻る