ページの本文へ

NHK熊本WEB特集 クマガジン

  1. NHK熊本
  2. 熊本WEB特集 クマガジン
  3. 空カラ見ランネ 秋空・熊本さんぽ③

空カラ見ランネ 秋空・熊本さんぽ③

加藤清正の遺産と阿蘇
  • 2023年11月15日

 

ヘリコプターで県内各地の名所や旧跡を訪ねるシリーズ第三弾。
熊本市内のエリアから加藤清正ゆかりの治水事業や、紅葉のシーズンを迎えた阿蘇を見せます。

熊本のシンボル 熊本城へ

ヘリコプターは熊本市内に入っていきました。住宅やビルがたくさん建ち並ぶ中心部に、広大な緑地が見えます。熊本城のエリアです。

熊本市街地全景

熊本地震で被害を受けた天守閣は、2年前に復旧工事を終え、この日も大勢の観光客が訪れているのが見えます。天守閣に隣接し、鉄骨で覆われたところは、復旧工事が始まった宇土櫓です。宇土櫓は、加藤清正が400年以上前に、熊本城を築城した当時から残る櫓で、国の重要文化財に指定されています。いまは雨や風を防ぐため、宇土櫓全体を覆う囲いをつくっているところです。囲いが完成すると、宇土櫓は一度すべて解体され、同じ材料を使って再び組み直されます。完成は10年後の2032年ごろの予定です。

熊本城天守閣
鉄骨の囲いで覆われた宇土櫓

熊本城は、熊本地震では城内の石垣が崩れる被害が甚大でした。そうした中、石垣の復旧がほぼ終わったところがあります。飯田丸五階櫓の石垣です。飯田丸五階櫓といえば、石垣が大きく崩れ、わずかに残った詰み石でかろうじて櫓を支えた場所で、「奇跡の一本石垣」として話題となりました。地震から7年半たった10月中旬。1657個の「築石」と呼ばれる外側の石すべてが、ようやく積み直されました。この後足場が外され、再来年度(2025年度)のあたまから櫓を再建するということです。

土木の神様 加藤清正の遺産

加藤清正が築いたのは城だけではありません。市街地の中を流れる白川で、加藤清正が築かせたものがあります。川の中を斜めに横切る「渡鹿堰(とろくぜき)」です。堰といえば、普通は川の流れに対して直角に造られますが、この渡鹿堰は斜めとユニークな形をしています。渡鹿堰の用途は、田畑に水を引き込むためと、大雨で増水したさいには、水の流れを弱めるためだったといいます。いまはコンクリートで、再建されていますが、その形はいまも受け継がれています。400年前の知恵が、いまも引き継がれているとは、さすが土木の神様、加藤清正です。

加藤清正が築かせた渡鹿堰

熊本の水道を支える地下水

水といえば、熊本市の水道は地下水でまかなわれていることで有名ですが、水源がどこなのか、空から訪ねてみました。市街地が取り囲む二つの湖は江津湖です。市民の憩いの場で、湧き水で成り立つ湖です。

上江津湖と下江津湖

この江津湖のほとりにある健軍水源地が、熊本市民の水がめのひとつとなっています。水源地というと普通は浄水場などの施設がありますが、ここには大きなタンクが2つ見えるぐらいで、浄水場らしきものがありません。代わりにあるのは、上空から見てもほとんど分からない小さな井戸です。

小さな井戸が水源

今回、その井戸を特別に許可を得て、地上でも見せてもらいました。普段は鍵のついた蓋で厳重に管理されています。「5号井(ごごうせい)」と呼ばれる井戸の底をのぞくと、地下およそ40メートルのところで、澄み切った水がこんこんと湧いています。この井戸だけで、1日あたり1万2000トン、25メートルプールに換算するとおよそ40杯分の水が吹き出ているといいます。健軍水源地内にはこうした井戸が11本あり、熊本市の4分の1の水道がまかなわれているそうです。

鍵がかけられ厳重に管理
地下40メートルから湧く清れつな水

火山と地震の痕跡

最後に阿蘇を訪れました。烏帽子岳、杵島岳、中岳と高岳、さらに奥には根子岳と、雄大な阿蘇五岳を一堂に収めることが出来ました。

観光客が必ず訪れる草千里は、上空からは丸く見え、かつて火口だった名残がよくわかります。さらにカメラを振ると、いまも噴煙を上げている中岳の第一火口が見えます。大規模な噴火からおよそ2年たち、最近は火山活動も落ち着いてきました。火口周辺は見学エリアが整備され、多くの観光客が訪れています。今年の夏には、より間近で火口見学ができるエリアもつくられました。

中岳第一火口

中岳から北西に下ったところに、草原の中にお茶碗をひっくり返したような形が見えます。高さ約80メートル、直径380メートルしかない小さな火山、米塚です。米塚はおよそ3300年前の噴火によって形づくられ、平成25年には国の名勝、天然記念物に指定されました。山頂付近を見ると。火口の周りにいくつもの亀裂のようなものが見えます。さらに火口の中心部には、ぽっかりと穴も開いています。これらは、7年前の熊本地震の爪痕です。亀裂は米塚を覆う火山灰の表面が強い揺れによって裂けたあと、穴は陥没したあとになります。亀裂の幅は1メートルほどあり、穴の幅は9メートルほどあります。熊本地震の強さを物語っています。

米塚
山頂付近に走る亀裂と穴

絶景の紅葉も

最後に訪ねたのが。標高1433メートルの根子岳です。山頂付近は浸食が進み、ギザギザして険しい山肌が連なっています。

根子岳の山頂付近は紅葉の名所として知られていて、10月下旬から一足早く紅葉の見頃を迎えます。切り立った崖にナナカマドやカエデがへばりつくように生えていて、それらの紅葉が赤や黄色に色づき、見事な景観を見せていました。今回の空撮取材では、普段地上で見る風景とは違った形に見え、好奇心を大いにかき立てられました。また、地球の大きな力も感じさせてもくれました。機会があれば、またお伝えしていくつもりです。

根子岳の紅葉
根子岳の紅葉

動画はこちら

  • 小川耕平

    熊本局・カメラマン

    小川耕平

    平成26年入局 
    学生時代の野球と国内外の1人旅がいまの原点

ページトップに戻る