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空カラ見ランネ 秋空・熊本さんぽ①

天草 大地の営み
  • 2023年11月15日

 

ヘリコプターで県内各地の名所や旧跡を訪ねるシリーズ第一弾。
天草諸島の下島には地球のダイナミックな営みがつくりだした景観が広がります。

天草諸島を空中遊覧

10月下旬、よく晴れた日。福岡市のヘリポートからおよそ40分のフライトで、天草諸島にやってきました。大小120あまりの島が点在しています。遠くには雲仙普賢岳も見えました。

多島美の天草諸島

白亜紀の地層がつくる絶景

さらに西に進んでいくと、天草下島の西海岸、東シナ海に面した妙見浦にたどりつきました。荒々しい断崖の下に、ぽっかりと穴が空いている岩が見えます。「象岩」です。まるで象が海に向かって歩いているような姿に見えます。天草の地質に詳しい御所浦白亜紀資料館の長谷義隆名誉館長によると、妙見浦はおよそ7000万年前、恐竜が生きていた白亜紀の地層で、その地層が隆起してできたということです。その後、風化や波の浸食が進み、いまのような形になりました。妙見浦は地質学的に貴重な場所で、国の名勝と天然記念物に指定されています。地球のダイナミックな活動を実感できる天草の絶景です。

妙見浦の象岩

海岸に残された坑道口

続いて向かったのが、天草下島の南端に広がる牛深エリアです。島から少し離れた岩場の中にオレンジ色の三角形が見えてきました。よく見るとぽっかりと穴も見えています。ここは海底の石炭を掘るためにつくられたレンガ造りの坑道の入り口で、「烏帽子坑跡」と呼ばれています。坑道口の反対には、荒波から坑道口を守る石造りの防波堤もあります。高さはおよそ6メートル、長さはおよそ50メートルもあり、上空から見るとまるで海の中に築かれた要塞のようにも見えます。烏帽子坑の創業は、明治30年(1897年)で、「無煙炭」と呼ばれる良質な石炭が採掘されることから、軍艦の燃料など軍事用に使われました。しかし、海底のため水漏れが続き、およそ5年で操業は中止になったといいます。烏帽子坑跡は、現在は天草市の指定文化財に登録されていて、上陸は禁止されています。

海中の岩場に何やら構造物が

 

ぽっかり空いた坑道口

 

坑道口を守る石造りの防波堤

真っ白の海岸の正体は?

さらに天草下島を北上すると、富岡半島が見えてきました。半島の南側には真っ白の海岸が300メートルほど続いています。雲仙天草国立公園の中の景勝地、白岩崎海岸です。海岸を白く見せているのは砂ではなく石です。石の正体は、美しい白さで知られる「天草陶石」という石です。御所浦白亜紀資料館の長谷義隆名誉館長によると、およそ2000万年前に、火山活動や地殻変動によってマグマが発生し、地中の中でマグマが固まって「流紋岩」が形成された、その後、流紋岩が熱水によって変質して天草陶石になった、と話します。天草陶石は、磁器の原料として広く活用されています。白岩崎海岸は、この天草陶石が海岸に露出した地質学的に貴重な場所です。

富岡半島

地球の恵みを人の生活に

今回私は、白岩崎海岸に下りて散策もしました。海岸一面には大小様々の天草陶石が、ごろごろと重なっています。中には、人の背丈よりも大きいものもありました。白岩崎海岸は国立公園内で石の採取は認められていないため、地元の窯元が採石場で採取した陶石をお借りしました。人の頭ほどの大きさの天草陶石は5㎏ほどとずっしりとして、真っ白の地肌をしています。天草陶石は、細かく砕かれ、粉末状にされたのち、水を加えてかくはんし、不純物を沈殿させる「すいひ」という工程を経て粘土をつくります。この粘土を高温で焼くと、透き通る白い地肌が特徴の磁器となります。天草陶石でつくられた粘土は、地元の窯元だけでなく、有田焼で焼かれている磁器としても使われています。大地の営みがつくりだした産物が、人間の生活を豊かにしてくれています。

天草陶石

動画はこちら

  • 小川耕平

    熊本局・カメラマン

    小川耕平

    平成26年入局 
    学生時代の野球と国内外の1人旅がいまの原点

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