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温泉街の新人アマチュア落語家

  • 2023年08月04日

山鹿市にある立ち寄り温泉「さくら湯」。明治時代の湯屋を再現した温泉です。この「さくら湯」で開かれる落語会に出演した、新人アマチュア落語家に密着しました

温泉の小さな落語会

かつて豊前街道の宿場町として栄えた山鹿市。その中心に、唐破風づくりのどっしりとした木造の建物が鎮座します。共同浴場の「さくら湯」です。かつて同じ場所にあった明治時代の湯屋を、平成24年に再現して建てられました。この「さくら湯」の休憩所、畳10畳ほどの和室で、6月下旬、落語会が開かれました。地元の有志と落語家が山鹿市を盛り上げ、山鹿に落語を根づかせたいと4年前から始めたもので、毎月1回開催される小さな落語会です。

山鹿温泉 さくら湯
毎月1回開催の落語会

初めて聞いた落語の魅力にはまって

この落語会に出演したひとりで、期待の新人アマチュア落語家、金木犀茶々さん(きんもくせい・ちゃちゃ)。去年の4月、この落語会で初めて落語を聞いてからその魅力に取りつかれ、7ヶ月後の11月からは早くも高座にあがるようになりました。笑顔がとっても素敵な茶々さん、子どもの頃から笑うこと、人を笑わせることが大好きだったといいます。

新人アマチュア落語家 金木犀茶々さん
茶々さん

自分の話し方と、身振り手振りで世界を想像させるという落語自体に感動しました。次も聞きに行こうと思ったら、「やってみない」と言われ、「私でもやれますか?」って聞いたら、「やれるやれる」と言ってもらえて「じゃあやります」って答えて始めたのがきっかけです。

仕事の合間も落語の稽古

生まれも育ちも山鹿の茶々さんは、地元の保険会社で勤めています。車で営業に出かける時は、カーステレオで落語を流し、移動時間も利用して落語を覚えます。仕事が終わると、カラオケボックスに入って、ソファーの上に正座をして一人稽古に励みます。家では、なかなか大きな声を出せないからです。次の公演で披露する演目は、「ん廻し」という古典落語で、「ん」のつく言葉を早口言葉のようにたたみかけていくのが見せ場です。しかし、「ん」のつくせりふは43もあり、それを2回しゃべらなくてはなりません。すらすらといかず、何度もかんでしまいます。この日の稽古は2時間にも及びました。

カラオケボックスで一人稽古

山鹿に落語の文化を根づかせたい

一人稽古だけでは上達しないため、月に一度プロの落語家に稽古をつけてもらいます。熊本出身で、東京在住の落語家、桂竹紋さんは、さくら湯での落語会の発起人の一人で、茶々さんに「落語やってみない」と誘った、まさにその本人です。この日の稽古では、「”ん廻し”は元気よくやった方が受けるよ」と茶々さんにアドバイスをしていました。山鹿に落語の文化を根づかせてくれるようなアマチュア落語家になって欲しい。明るくて元気があって、なにより山鹿出身の茶々さんに、桂さんは大いに期待しています。

桂さん相手に稽古をつけてもらう
桂竹紋さん
桂竹紋
さん

いろんな落語を広めていく役目を、茶々さんは担っていると思うので、落語人口が増えていったら、これにかなうものはないと思います。

いよいよ本番!高座へ

6月下旬。落語会の当日を迎えました。休憩所には、風呂いすの上に座布団を乗せた即席の客席がしつらえ、台の上に毛せんを敷いて即席の高座がつくられました。この日は客も大入り満員、といっても30人も入れば一杯になる寄席です。

風呂いすの上に座布団
大入り満員!

3人中、2人目で茶々さんが登場しました。果たして稽古の成果を発揮できるのでしょうか?

演じる茶々さん

「せんねん、しんぜんえんの、もんぜんの、やくてんの、きんかんばん」→(【誤】きんかんばん→【正】げんかんばん)

1回目のせりふ回しでいきなり一か所、とちってしまいました。なんとか立て直しをしたいところです。「みんなが心配そうな顔をしてるけど~」とお客さんをくすぐる機転も利かし、いよいよ2回目の長ぜりふにかかります。

「先年(せんねん)神泉苑(しんぜんえん)の門前(もんぜん)の薬店(やくてん)の玄関番(げんかんばん)人間半面半身(にんげんはんめんはんしん)金看板銀看板(きんかんばんぎんかんばん)金看板根本万金丹(きんかんばんこんぼんまんきんたん)銀看板根元反魂丹(ぎんかんばんこんげんはんごんたん)瓢箪看板(ひょうたんかんばん)灸点(きゅうてん)くぅ~」

見事、かまずにオチまでつくことが出来ました。お客さんから温かい拍手をもらい、満面の笑顔の茶々さんです。

落語っていいなって、気持ちになっていただきたいと思ってやっています。次はもっとおもしろく、楽しく、自分自身が出来ればと思います。

「さくら湯」での落語会は、プロとアマチュアの落語家の3人程度が出演し、これからも毎月1回、行われるということです。茶々さんもさらに演目を覚えて、これからも高座に上がるつもりです。
 

動画はこちら

  • 福山孝幸

    熊本局・カメラマン

    福山孝幸

    カメラマン歴25年
    地域の話題が好き

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