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地震の発生危険度「Sランク」 日奈久断層帯のリスクとは

最新の研究から活動を追う
  • 2023年04月19日

熊本地震から7年が経過して地震からの復興が進んでいます。その一方で、熊本地震を引き起こした活断層のひとつ、日奈久断層帯では依然として活動が活発な場所があることが、最新の地震研究から見えてきました。 

(熊本放送局記者  岸川優也)

熊本地震引き起こした活断層

2016年4月14日と16日、熊本を2度の震度7が襲いました。 この地震を引き起こしたのは、県内を走る布田川断層帯と日奈久断層帯の北部です。

黒が熊本地震で動いた部分

ずれ動いた部分では地震のひずみがある程度解消されたとみられる一方、ずれ動かず断層が破壊されなかった日奈久断層帯の南部では、地震の危険性が依然として高いとされています。  

切迫度「Sランク」 日奈久断層帯 

日奈久断層帯の南部は、宇城市の豊野町付近から八代市、芦北町などを通り、八代海のあたりまでにかけて存在する断層です。

国は日奈久断層帯を地震の切迫度が最も高い「Sランク」の活断層と位置付けています。

「Sランク」は今後30年以内の地震発生確率が3%以上の活断層ですが、日奈久断層帯の南部は日奈久区間で6%、八代海区間で16%。全国でも最も切迫度が高いとされる活断層のうちのひとつです。

最新の研究で見えてきたこと

こうしたなか、研究者たちは日奈久断層の南部の活動を把握しようと観測を続けています。

九州大学 松本聡教授

九州大学地震火山観測研究センターの松本聡 教授です。
熊本地震の直後から微細な地震を検知できる地震計を断層の周辺などに数十か所設置し、観測を続けてきました。

熊本地震後の実際の観測データを地図にプロットしたものです。 

2016年5月の観測データ

赤い点が地震を示しています。熊本地震後、断層がずれ動いた布田川断層と日奈久断層の北部だけでなく、日奈久断層の南側を含む広い範囲で地震が発生していました。熊本地震の影響で、ずれ動かなかった断層の南側にも力がかかったことが原因とみられます。

また、時間が経過すると地震は全体としては減っていきますが、その減り方にばらつきがあることも松本教授らの解析で分かってきました。

松本聡 教授 
「この範囲では、周囲と比べても地震の減り方が多くない、つまりいつまでも地震が起こっている。熊本地震が起こる前よりもより活発に活動していて、それが長い時間続いていることがわかりました」

丸で示したところで地震が活発

松本教授が注目したのは、八代市西部付近にあたるエリア。このエリアでは、依然として地震の活動が活発な状態が続いていました。松本教授は、熊本地震のでかかったこと力に加えて、地下の断層付近に別の力がかかり、地震を引き起こす可能性のあるひずみが蓄積されているのではと指摘します。

松本教授
「南部は前より地震発生の可能性高くなった場所だと考えられます。発生するのが100年後かもしれないし、きょうあすかもしれませんが、冷静に備えることが大事です」

発生した場合、どんな揺れが?

いざ大地震が起こった場合、どのような揺れが予想されるか。 九州大学や京都大学などの調査を元に作られた揺れの予想の1パターンです。

日奈久断層が動いた場合の揺れ予想

熊本市から八代市など、広い範囲で震度7が予測されています。また、八代海で発生した場合、津波が発生する恐れもあると予想されています。 

どういう備え求められる?

重要な対策として、住宅の耐震補強があげられます。

熊本地震の際、益城町の中心部では「旧耐震」という古い耐震基準で建てられた建物の3割が倒壊する被害が出ました。建物の下敷きになって亡くなる人も多くいました。その意味でも、家の補強は命を守るために非常に大事です。

 県内の耐震化の現状について、八代市の耐震化は、2020年時点で76.8%。全国平均の87%を大きく下回っているのが現状です。 

家の耐震性が不安な人は耐震診断を受け、それに基づいて工事を行うのが効果的です。

耐震診断や耐震工事には各自治体が補助を出しています。 

補助の例
熊本市 条件を満たせば耐震診断が5500円
八代市 5500円(家の図面あり)、19000円(図面なし) 

 旧耐震の家に住んでいる人は、お住まいの自治体に相談をしてみてはいかがでしょうか。

教訓を生かして冷静に備えを

熊本地震から7年が経ち、復興も進んできましたが、熊本にはまだ大きな地震のリスクがあることが分かってきました。

これまでに得られた教訓を生かして、改めて冷静に備えを進めてほしいと思います。

  • 岸川優也

    熊本局記者

    岸川優也

    2020年入局
    豪雨災害や事件事故の取材を中心に担当

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