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【熊本地震】私たちが学んだ、命を守る11のキーワード【後編】

熊本地震の教訓とは
  • 2023年04月12日

前編に引き続き、熊本地震から見えてきた命を守るための教訓を11のキーワードで振り返ります。

⑥「余震」という先入観 「本震」の発生

熊本地震では1度目の大きな地震のあと、より大きな「本震」が発生しました。

短い期間に2度にわたって大きく揺れたことで、1度は耐えた建物も倒壊する被害も出ました。

1度目の揺れ(マグニチュード6.5)の28時間後、よりエネルギーの大きい2度目の大きな揺れ(マグニチュード7.3)が発生しました。

その後、気象庁は1度目の大きな地震が「前震」で、2度目の地震が「本震」だと発表しました。

また、熊本地震を受けて、気象庁は大地震の後の防災の呼びかけ文も変更しました。

「『余震』という言葉を使うと、最初の地震よりも規模の大きな地震は発生しないという印象を与える」というのが理由です。

発生からおよそ1週間は「余震」ということばを使わず、例えば「今後1週間程度は最初の大地震と同程度の地震に注意が必要」などと呼びかけるようにしました。

⑦「病院避難」で相次いだ災害関連死

熊本地震では、「病院避難」が相次ぎました。病院の建物やライフラインも大きなダメージを受け、入院していた多くの人が転院を余儀なくされたのです。転院時の体の負担や、病院の機能の停止によってその後亡くなり、「災害関連死」と認定された人は46人に及んでいます(2023年3月現在)。

病棟が被害を受けた旧熊本市民病院

宮﨑花梨ちゃん(4)も、その1人です。

花梨ちゃんには生まれながらの心臓病があり、旧熊本市民病院に入院していました。熊本地震の時は手術後で、絶対安静が必要でした。

しかし、新耐震基準を満たしていなかった病院の建物は、地震によってダメージを受けて倒壊する恐れがあり、ライフラインも寸断するなどして、医療が継続できない状態に。花梨ちゃんは100キロ離れた福岡の病院への転院を強いられ、転院後、亡くなりました。

熊本地震まで国の耐震基準を十分に満たしていない病院も多く存在しました。耐震化病院の機能継続のための対策が求められています。

⑧危険度「Sランク」活断層 全国に31

一連の熊本地震は「布田川断層帯」と「日奈久断層帯」と呼ばれる活断層がずれ動いたことで発生しました。

地震の切迫度が最も高い「Sランク」とされている活断層は全国に31。

熊本地震で動かなかった日奈久断層帯の南側の区域も「Sランク」とされています。

地表に現れた布田川断層

活断層とは日本の内陸や周辺海域にある断層で、地質調査などで繰り返しずれ動いて地震を起こしていたことが確認されているものをいいます。

活断層による地震は震源が比較的浅く、内陸で起きると熊本地震や阪神淡路大震災のように甚大な被害をもたらします。

2023年1月1日の時点で、最も切迫度が高い「Sランク」に分類されている活断層は全国に31あります。

全国の活断層(出展:地震調査研究推進本部)

「日奈久断層帯」の一部区間はこのSランク。
熊本地震のときは動かなかった南側の区間、いわゆる“割れ残り”の「日奈久区間」「八代海区間」で、地震の危険性が高いとされているのです。

九州大学や京都大学などが日奈久断層帯を調査した結果、日奈久断層帯がずれ動いた場合、熊本市から八代市付近にかけては震度7クラスの強い揺れが起こると予想されています。

予想される揺れ

八代海では地震からすぐに津波が発生する恐れも指摘されていて、備えが必要です。

⑨「盛り土」「軟弱地盤」は被災リスクも…

地震のあと建物の被害が大きかった場所の特徴として、盛り土によって造成された場所や、地盤が軟弱で揺れやすい場所が指摘されています。

熊本地震では、谷を埋めたり斜面に土を盛ったりして平らな土地を作る「盛り土」で造成された土地が崩壊するケースがありました。

すべての場所で危険なわけではありませんが、盛り土のリスクは、過去の災害でも指摘されています。

また、地下の柔らかい地盤、「軟弱地盤」によって揺れが増幅されることがあります。被害の大きかった益城町の中心部では、地下に複雑に「軟弱地盤」が広がっていた可能性が指摘されています。

⑩「BCP」で事業継続

地震で、多くの企業も被災。熊本に集積していた半導体の製造企業の被害も大きく、全国のサプライチェーンにも影響が出ました。BCP=事業継続計画策定の重要性が問われた災害となりました。 

被災したソニーの関連会社の工場内部

ソニーの関連会社など、熊本に集積していた多くの半導体製造の工場が被災。その影響は全国のサプライチェーンに波及しました。

こうした連鎖的な影響は東日本大震災のときも課題として指摘されました。災害などがあっても企業が主力事業を継続できるよう準備しておく「BCP(Business Continuity Plan)=事業継続計画」の重要性が、熊本地震でも改めて認識されました。

⑪命を救う「コールトリアージ」

熊本地震のとき、熊本市などを管轄する熊本市消防局には通報が殺到。対応しきれず、優先順位をつけて出動せざるを得ませんでした。不急の通報も多かったといいます。

少しでも多くの人の命を救うため、正しい通報の使い方が私たち市民に求められています。

熊本市や益城町、西原村を管轄する熊本市消防局には地震直後から通報が殺到。
前震の発生した14日から本震のあった16日までの間に、平常時の約10倍にあたる2800件あまりがよせられました。

しかし、通報の6割にあたる1700件は、救助や救急とは関係のない、緊急度の低い通報でした。「停電した」「避難所はどこか」などの問い合わせが非常に多かったといいます。

熊本市消防局はこの教訓をもとに、通報の重要度を判断するための「コールトリアージ」のマニュアルを全国で初めて作成して、次の地震に備えています。

しかし、私たち市民の通報の使い方も重要です。本当に必要なところに救助を向かわせるため、災害の直後、緊急度の低いライフラインの問い合わせなどの通報はひかえるようにしましょう。

われわれ市民にも冷静な判断が求められます。

熊本地震の教訓を、次の災害への備えに

あなたの命を守るため、ぜひ覚えてほしい11のキーワードを、もう一度振り返ります。

【前編】
①倒壊した建物 多くが「旧耐震」
②相次いだ「車中泊・軒先避難」
「エコノミークラス症候群」で亡くなった人も…
④避難所生活で命を救う「スフィア基準」とは
⑤その情報って、本当?「災害後のデマ」に注意!

【後編】
「余震」という先入観 「本震」の発生
「病院避難」で相次いだ災害関連死
危険度「Sランク」活断層 全国に31
「盛り土」「軟弱地盤」は被災リスクも…
「BCP」で事業継続
⑪命を救う「コールトリアージ」

都市部を2度にわたって突然襲い、災害関連死を含めて270人以上が亡くなった熊本地震。地震大国・日本ではどこでも同じような地震が起こる可能性があります。また、南海トラフ巨大地震への備えも必要です。

「病院避難」によって娘の花梨ちゃんを災害関連死で亡くした宮﨑さくらさんは、私たちに「同じような災害があったときに、二度と同じ亡くなり方をする人が出てほしくない。教訓を生かしてほしいんです」と語ってくれました。

あなたや家族の命、財産を守るため、熊本地震で得られた学びや教訓をぜひ覚えておいてほしいと思います。

  • 岸川優也

    熊本局記者

    岸川優也

    2020年入局
    豪雨災害や事件事故の取材を中心に担当

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