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『らんまん』植物採集の秘密に迫る

  • 2023年08月10日

朝ドラ『らんまん』では万太郎が植物を採集するシーンがたびたび登場します。
標本にするための植物はどのように採集されているのでしょうか。高知県立牧野植物園の調査に同行しました。
(高知放送局 リポーター 五十嵐優衣)

植物の分布調査はボランティアとともに

豊かな自然に囲まれた高知県日高村。
私が同行したのは、県立牧野植物園が中心となって行う植物の分布調査です。

調査はボランティアのみなさんと一緒に実施します。この日は研究調査員の鴻上泰さんが、初めて参加する人にも分かるよう自生する植物の特徴から採集の方法までを丁寧に説明していました。

鴻上泰さん
「最大の目的は、植物を調査できる人をつくること。1人でもいいから、その地域の植物を知っている人が増えることが大事です」

実際に植物を採集!

調査では、まだ標本になっていないこの地域の植物を中心に探します。
この日、見つけたのは「タキユリ」。

鴻上泰さん
「タキというのは高知の方言で崖のこと。崖に咲くユリという意味です」

「これは、まだ標本になっていない植物ですか?」

鴻上泰さん
「採集はしているけど、花が咲いているものはいい標本になるので採ります」

花や果実がなっている状態の標本は植物の特徴がよく分かるため、研究にとって貴重な資料です。

鴻上泰さん
「本当は根っこから採らないといけないけど、ここは崖になっていて採れないので、根元から切ります」

標本にするために

この調査で重要なのは、採集した植物を標本にする準備です。
植物が乾燥する前に、標本の規定の大きさに合わせて、新聞紙に挟みます。

花の部分は傷がつきやすいため、新聞紙やクッキングシートで覆うなどして特に丁寧に扱います。

この時、標本の出来上がりをイメージしながら挟むことが大事だと、鴻上さんは話します。

鴻上泰さん
「ここで形を整えるときれいな標本になります。牧野博士もこうやって標本を作っていたと思います」

こちらは「調査票」です。

採集した場所の緯度や経度、周囲の環境や花の特徴など、詳しい情報を記入します。調査票があって初めて標本として認められるからです。

こうして採集した植物は「野冊(やさつ)」と呼ばれる板に挟んで持ち歩きます。

鴻上泰さん
「生のまま押して野冊で持って帰ると、標本が一番いい形になります」

牧野博士の思いを受け継ぐ

こうした調査を地域のみなさんと一緒に実施することで、植物に関する深い知識を持つ人を増やすことは、牧野博士が晩年力を入れていた取り組みの1つです。県立牧野植物園もその思いを受け継いでいます。

参加者①

「知らなかった植物を発見できるので、それは喜びです。楽しいです」

参加者②

「高知県に住んでいるので、地域の植物をほかの人にも教えられるように生かしていきたいです」

調査の結果は、植物誌の改訂などにも役立てられます。こちらは2009年に発行された「高知県植物誌」です。県内で確認された3170種類の植物が掲載されています。

鴻上泰さん
「地域の人に地域の植物が大事だということを分かってもらいたいです。植物が好きな後継者をたくさん作ることは、牧野富太郎が果たした役割の1つなので、牧野植物園の役割の1つと考えてやっています」

  • 五十嵐優衣

    高知放送局 リポーター

    五十嵐優衣

    らんまん関連の話題を幅広く取材します!

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