中田賢一投手コーチに聞く!投手育成のポイントは?!
- 2024年03月04日
4年ぶりの優勝を目指すソフトバンクは、小久保裕紀(こくぼ・ひろき)新監督のもと、1か月間の宮崎キャンプを終えました。去年課題となった投手陣で、1軍コーチを務めるのは北九州市八幡西区出身の中田賢一(なかた・けんいち)さん。昨シーズンまで3軍と4軍を担当し、初めて1軍を指導することになりました。大所帯のチーム、膨大なデータをどのように活用していくのか?
そのポイントを聞きました。
取材 神戸和貴アナウンサー
※2/29にニュースブリッジ北九州で放送
初めて就任した1軍投手コーチの仕事とは?
ーお久しぶりです。指導者として初めての1軍キャンプはどうですか?
まず、人数がすごく多いので、実際に目の前でピッチャーのボールを見たり、コミュニケーションをしっかりとって悩みも聞きながら、1軍でしっかり勝てるようにもっていかないといけないですね。去年までは3軍、4軍で体力強化が大事だったんですけど、ことしは1軍の試合で勝てるように、抑えられるようにというのが大事だと思っています。育成という形ではなく、より技術を引き上げたり、試合で勝つためにどうしようかという話をしていますね。
ー本当に選手がたくさんいますよね…。3軍、4軍のコーチを経験し、選手と年齢も近い中田さんに求められることは?
選手として一緒にプレーした選手もいますし、年齢も近く話しやすいと思いますので、いろいろな悩みを僕にぶつけてくれたらいいなと感じています。選手と首脳陣がコミュニケーションをしっかりとって1つの目標に向かって全員で進んでいけるようサポートができればなと思っています。
ー3人いる1軍投手コーチのなかでも、「ブルペン補佐」という役割。これはどういう担当?
まずシーズンで残留ピッチャー(敵地へ遠征に行かず福岡に残る投手)が出た場合、僕が残ってそれぞれのピッチングを継続して見ることになります。3人コーチがいるので実際に始まってからフレキシブルに運用していくことになるかなと思います。倉野信次さん(くらの・しんじ)がアメリカで勉強されたものや、1軍コーチの経験も豊富な若田部健一さん(わかたべ・けんいち)の話も吸収しながら、自分も勉強しつつ…という感じですね。
ブルペンには投手を取り囲むたくさんのカメラが…
ー小久保新監督になり、アメリカでコーチの勉強をされた倉野さんが復帰した今シーズン、どのようなことが変わった?
1軍から4軍までどういう選手がどういう動きをしているとか、連絡系統がより密になりました。実際に見たコーチが選手の状態をレポートとして毎日あげていて、毎日ブルペンの映像もあがってきます。離れていても状態を把握できますし、幅広く情報交換ができている状態ですね。
ー毎日のレポートなどはこれまでなかった?
毎日ではなかったですね。ブルペンの映像などもこちらから求めれば見られたんですが、今は常にすべてのピッチャーの映像があがってくるようになりました。
ーきょうはブルペンに入ったリバン・モイネロ投手を四方八方からカメラが撮影していました。あれは?
モーションキャプチャーといって、いろんな情報が出るんですけど、重心運動のスピードや位置、リリースポイントの高さとかですね。まず今の段階で1回撮影しておいて、シーズンが始まってからフォームを比べてどうなっているか、去年と比べてどうなのかを可視化するようなものですね。
ーこれまでもデータを蓄積してきたんですか?
はい、去年もやっていますし、筑後の施設にもあって定期的に撮るんです。より回数も多くなったし、選手が撮りたいと言えば撮れるようになりました。
たくさんの選手、膨大なデータ。コーチはどう生かす?
ーこれに加えて投球ごとに回転数や変化を測定する機器もありますし…。これだけ選手がたくさんいて、データも膨大ななかで、どのように生かしていくんですか?
まずデータは、選手が自分の状況を客観的にわかりやすく把握するために大事なもので、明確な目標をもって進んでいけるようにというのがいちばん大事かなと思っています。データだけ出しても選手は混乱してしまうと思うので、「今こういう状態で、こういうデータが出ているからここをもう少し引き上げよう」とデータをもとに目標を明確にしていく。「ストライクを取っていこうね」じゃなくて「1ボール1ストライクから次の球でストライクを取ろうね」というような、より細かく指導できるのがデータ活用の良いところかなと思います。データについては僕もしっかり勉強しながらやっているところです。
ー冒頭でも”コミュニケーション”という言葉を多く使っていましたが、そこはより大事になるんですか?
やっぱり伝えるタイミングも大切ですしね。選手によって、ここは言わずに見ておいて経過を見て伝えようという時もあります。選手が納得して取り組んだなかで、壁にあたったときに声をかけられるように準備しておきたいなと思っています。やっぱり選手が考えて、本人の意欲がないと技術的なところは上がっていかないので。本人の意思を大切にしつつ、見守りながら、「こうすればよくなるかな」というのを選手とコーチが一緒に考えて作っていくものだと思います。タイミングや性格も含めて、いろいろな声のかけ方が大切になるかなと思っています。
ー最新機器がたくさんあっても人間どうしの部分は大切なんですね…。そこは若い選手にも指導してきて、いつも明るい中田さんのキャラクターが生きる部分では?
やっぱりいちばん大きなところは倉野さんが見て動いてくれています。ただ倉野さんはトップのピッチングコーチであり、チーム全体の投手陣を見渡すコーディネーターでもあるので、1人でこれだけの人数は難しい部分もあるのでそこはサポートできればいいですね。僕は基本的にコミュニケーションはどんどんとっていけるタイプだと思うので選手に近くて話しやすい存在でいたいなと思いますね。シーズンでは弱音を吐くことも大切だと思うので、そういうところでも少し選手が上がっていけるようにできればなと思っています。
課題の先発陣。今後のオープン戦の注目ポイントは?
ー昨シーズンは先発投手が課題と言われてきましたが、このキャンプでの手ごたえはどうですか?!
うーん、まだまだ特に若い選手の技術レベルの引き上げがすごく大事になってくると思いました。今でも競っていますけど、もっと。もっともっと競う意識をもってほしいなと思います。
ー先発陣は中堅からベテランが多い中で、若い投手ですか。先日は対外試合で2年目の大津亮介(おおつ・りょうすけ)投手が先発するなどしましたが…。
そうですね、育成選手も支配下の選手ももっと自分の強みを前面に出して、チーム全体を引き上げていければなと思います。先発をやってみて、壁にあたることもあると思いますし、1軍で先発ローテーションを回ってみないとわからないこともあるんですよ。まずそこの席を奪うんだという強い意志をもって取り組んでほしいなと思います!
ありがとうございました!まずはオープン戦で若い投手の登板を楽しみにしています!
いつも明るい中田コーチ。キャンプ中は時折メモを取りながら、あっちへこっちへ動き続け、いろいろな選手に声をかけていました。ミーティングもたくさんあり、お忙しい中で時間を作っていただきありがとうございました。以前、「コーチとして、うまい選手より1年間戦い続けられる強い選手を育てたい」と話していた中田コーチ。まさにそんな選手が求められる今、1軍で若い選手たちをどう育てていくのか注目です!