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新春インタビュー 今永昇太投手に聞く

  • 2023年01月12日

    北九州市出身の今永昇太投手(いまなが しょうた・29歳)。横浜DeNAベイスターズで先発の柱として活躍し、2022年は自身初のノーヒットノーランを達成。3年ぶりのふた桁勝利をあげ、けがからの復活を印象づけました。
    先日、WBCの日本代表にも選ばれ貴重な左腕として活躍が期待されます。WBC、そしてベイスターズ25年ぶりの優勝へ、ことしにかける思いを聞きました。

    取材 アナウンサー 神戸和貴

    年末年始の帰省中にNHK北九州放送局でインタビューさせていただきました

    ノーヒットノーラン達成!そのボールは今…。

    ―NHK北九州放送局にようこそお越しくださいました!今は年末年始のお休みですか?

    はい、今は休みでつかの間の休息を実家で過ごしています。ことしはちょっと公園でランニングをしたり少しキャッチボールをしたり、そういう過ごし方をしています。

    ―え、公園で今永さんが投げているんですか!こんなに厚みのある体で、すぐに気付かれてしまうんじゃ…。

    自宅近くとか走れるところで走っていますね。ほとんど気付かれなくて、スーパーでもスポーツショップでも気付かれることがないので。このくらいの体は北九州にはたくさんいると思うので(笑)。

    ―まずは2022年を振り返るとどういうシーズンでしたか?

    はりきって臨んだシーズンだったんですけど、けがで出遅れることから始まって。久しぶりの規定投球回数とかふた桁勝利はしたんですけど、これといって満足できる数字もなく、何かパッとしないシーズンだったなという印象があります。(ふた桁勝利などは)やはり当たり前に超えていかなければいけない数字だと思うので、出遅れてしまったのがいちばんの反省点です。

    ―ノーヒットノーランを初めて達成して、今振り返るとどういうものですか?

    自分の家族だったり、応援してくださる方々に活気のあるニュースをお届けできたかなとは思うんですけど。僕個人としては本当に遠く昔のことという印象なので、何かをやってのけたとかそういう感情は一切ありません。もちろんもう一度達成したいことではあるんですけど、それ以上にあの日チームが勝ったということ、それがいちばんうれしかったことですね。
    ウイニングボールもどこにあるかわからないですし…。もしかしたら12月の練習でキャッチボールで使ってしまったかもしれないですし、記念に何かを残しているとかもないので。本当にそんなこともあったなというくらいにしか捉えていません。  

    ―え、今まで残してきたボールなどはないんですか!?

    初勝利のボールも正直どこにあるかわからないんです(笑)。初ヒットもどこにあるかわからないですし…。記念の何かに興味がないわけではないんですけど、それよりも前に進んでいくしかないと思っているので、昔やったことや自分がやったことはもう終わったことという認識なので。

    投球中に今永投手がイメージしていた映像は…。

    セットポジションで頭の中に描くのは…初めて聞きました

    ―あの試合に限らないかもしれませんが、今永投手が空振りをとったときなど、投球後にピタッ!と止まって、何か考えたり、手ごたえを確かめたりしているようなしぐさを、序盤すごくされている印象があったんですが?

    本当はあのような姿はあまり見せてはいけないものだと思っているんですけど。止まったりとか、ちょっと考えてるように思われるかもしれないんですけど、僕の中ではまずセットポジションに入って投げるときに、自分が投げている分解写真みたいなものをイメージするんです。自分の投球フォームがそのフォームを回収していくというか、それに当てはめて投げていくので。「あ、今ちょっとあそこずれたな」とか、ピタッと止まっているときは「しっかり当てはめて回収できた」みたいな、そんな感覚で。その方が再現性が高まるというか、イメージして自分が当てはまっていくのを感じられるときはイメージしたボールがいっている感じですね。

    ―そうなんですか!投げるときに自分の姿が立体的にマウンド上に見えている、写真というか「カシャ、カシャ、カシャ」と体がここにあって、次はここにあってという感じ???

    そうです。それを自分がなぞるというか、自分がスポットとしてはまっていくイメージをしているので。それにピタッとはまったときは、最後のフィニッシュもピタッ!となる感じですね。

    ―そのシーンが多かったノーヒットノーランの日は、フォームがはまっていたということですか?

    そうですね、自分の思い描いているボールと実際に投げたボールの差が少なければ少ないほどいい投球につながると考えているので。まずは自分のやるべきことをやるということでは、そう考えた方が投げやすいですね。
    去年得た感覚がいくつかあって、自然とピタッ!と止まったりとか、はまり出して。ただ首をかしげたりするのは、マウンド上ではあまり良くないことなので周りからの見られ方も考えなければいけないなと思っています。

    2年連続でヤクルトの優勝決定試合に先発。その心の内は…。

    ―もう1つ印象的だったのが、神宮でヤクルトが優勝を決めた試合。今永さんが先発で、ものすごいボールを投げていて。村上選手からも圧倒的なボールで三振を取っていましたが?
    (※今永投手は7回無失点も、チームは敗れヤクルトの優勝が決定)

    調子がめちゃくちゃ良かったわけではないんです。変化球もあまりストライクが取れず、本当にストレート頼みではあったんですけど。あの試合のストレートは昨シーズンでいちばん走っていましたし、ファウルが取れそう、空振りが取れそう、そういったことが自分でコントロールできた試合だったんじゃないかなと感じています。
    僕はおととしのシーズンでも、ヤクルトスワローズが優勝する試合で先発してその時はふがいない投球だったんですけど、その1年後にほぼ同じシチュエーションで巡ってきて。ものすごく悪い残像も残っていたんですけれども、誰かに試されているような気がして。「お前はこの1年成長できたのか、ちゃんと自分のやってきたことが出せるのか」と言われているような気がして。そういうワクワクも正直あったので、それが投球につながっていたのかもしれませんね。

    ―初勝利やノーヒットノーランなど過去の勝利に対しては執着がないとおっしゃっていましたけど、悔しさの方はしっかり覚えているんですね。

    自分ができたことよりも失敗して悔しい思いをした方が、印象強く残っていますし、課題を1つずつ潰して前に進まないと。これからも試合があるたびに課題が出ると思うんですけど、丁寧に丁寧に課題を克服していくというのはやり続けたいと思っています。
    やはり節目の試合、神宮でヤクルトスワローズが優勝した試合、CSのファーストステージ初戦で負けてしまった試合。大事な試合で勝てていないというのが自分の最大の弱点だと思っているので。それはシーズン何勝したかとか、何キロのボールを投げられますとか、どんなすごい変化球を投げられますとかは関係なくて。その試合に自分が先発してチームが勝ったか負けたか。それしかファンの方々の印象に残らないと思うので。とにかくその試合で自分がどんな投球をしたとしても、最後は勝ったよねと。そういう投手になりたいなと思っていますね。

    ふるさと北九州。小学校から高校まで家のベランダから見えた!?

    地元での思い出に大好きな食べ物は…

    ―今永さんにとって北九州はどういう街ですか?

    本当に小学校、中学校、高校とすべて家のベランダから見えるんです。小さな環境で育って、そこから東京の駒澤大学に行って。ものすごく自分は囲まれているようなあたたかい街で過ごしていたんだなと、帰省するたびに感じますね。

    ―差し支えなければどの学校ですか?

    永犬丸西小学校から永犬丸中学校、北筑高校に進みました。すべて自転車で15分くらいで行けて、忘れ物をしてもギリギリ学校に間に合う家に住んでいたので。ちょうど良い不便さが心地良いような、そんな街だなと思います。
    やっぱり福岡といえばラーメンと言われたりすることが多いんですけども、僕はこっちのうどんが大好きなので必ずと言っていいほど食べますね。

    ―どんな高校生だったんですか?

    北筑高校は文武両道を校訓に掲げているので、部活も頑張るんですけども、勉強も頑張らないと部活ができなくなってしまうので。勉強にも追われましたし、部活も午後7時半に完全下校と本当に短い練習時間だったので、いかに効率よくやるべきことを明確にしていくかを学んだ3年間だったと思います。

    ―高校で学んだことで今でも大切にしていることは?

    当時の野球部監督の井上勝也(いのうえ かつや)先生と、部長の田中修治(たなか しゅうじ)先生は本当に僕を見捨てなかったというか、僕も問題のある行動を何度かしたことがあったんですけど、そのたびに叱っていただいて。僕を見捨てずに成長させてくれた。今の自分があるのは高校時代の先生方がいらっしゃったからだなと今でも思っているので、ものすごく感謝しています。
    田中先生には野球ノートを毎日提出をしていたんですけども、ノートを出し忘れたりとか、嘘をついて「持ってくることを忘れました」とか、言い訳をほぼ毎日のようにしていたんです。それでも僕を見捨てずに、しっかりと書かせて提出させて常に目を光らせていたというか。おそらく僕が中心選手だったので、そういうことはダメだろうという意図があったんだろうと今では感じているんですけど。
    井上監督からは、「いつでもエースであれ」という言葉をいただいて。練習でもエースでなくてはいけない。授業中もエースでなくてはいけない。家に帰ってもエースでなくてはいけない。寝る前もエースでなくてはいけない。それは、常に見られている、どんな時でもエースは見られていることをきっと教えてくれたんだなと感じたので。何か今にも通じている、そういう言葉です。

    ―先ほど「大事な試合でどういうピッチングをするか」が課題とおっしゃっていましたが、それにも通じることがあるでしょうか?

    そうですね。その試合に向けて自分がどれだけ準備したか、周りが「こいつに任せて負けたんならしょうがない」と思ってくれるか、常にそれを考えてやっているので。日々少しでも自分の味方を増やして、自分にパワーをくれる人を増やしていくというのが目標ですね。

    WBC、25年ぶりのリーグ優勝…2023年の決意は。

    チームも個人も勝負の年へ

    ―2023年にかける思いをお聞きします。まずは春にWBCがあります。ここへの思いはどうですか? ※インタビューは代表選手の発表前

    やはり超一流のすばらしい選手に囲まれて野球をするというのは、もちろん野球のレベルアップにつながるかもしれないんですけど、人間力のレベルアップにもつながると思うので。代表に呼ばれたらいろんな人と話して、いろんなものを吸収したいなと思っています。
    メジャーリーガーなどふだん一緒にいない方々と野球の話ができるのはものすごく幸せな時間だと思いますし、海外の選手と試合ができるというのもものすごく楽しみなので。自分の最大限のパフォーマンスを発揮できるように準備したいなと思います。

    ―まさに大事な、負けられない春になりますね。

    去年のサッカーワールドカップもそうですけど、これほどまでに期待を背負ったり、責任や重圧を背負って野球をやるというのは、今後の人生でほとんどないと思うので。すべてを背負って野球をやる、そういった経験ができるのは幸せだと思います。そこで結果が出せたのなら、何事にも代えがたい達成感と充実感に包まれると思うので。そういった最後を想像しながら、最後は勝ちたいなと思います。

    ―去年はシーズン2位。ベイスターズファンは25年ぶりの優勝を楽しみにされているかと思います!

    やはりおととし最下位に沈んで決して強いとはいえないチームを、それでもあきらめずに何か僕たちを応援する理由を探して、応援していただいたファンの方々には、やはり最高の形で恩返しをしなければいけないと思います。応援していてよかった。ベイスターズファンをやめなくてよかった。あきらめなくて良かった。最後にそう言ってもらえるようなシーズンにしなければいけないなと感じています。

    ―今後はどういった選手生活を送りたいと考えているんですか?

    自分が野球を終えたときの人生をイメージしているので、野球が終わったときにいい野球人生だったな、いろいろなことがあったなと、誰かに伝えられたりとか、子どもたちに伝えられたりとか、そういう目標を持っていますね。最後に野球を終えて自分のやってきたことや見てきたこと、何を教えられるんだ、伝えられるんだというところに重きを置いて、これからの人生を過ごしていきたいなと思うので、少し遠いところにも目線を持ってやっています。

    ―ことしにかける決意を色紙に書いていただけますか!?

    2023年の決意を書いていただきました

    「投げた試合 勝つ」です。先程も申し上げたんですけど、自分がどのようなピッチングをしたとか、何キロを出したとかというのは、試合に勝つ・負けるには全く関係ない話なので。自分が投げた試合で最後にチームがどうだったか、そういう立場にいると思うので。試合を作ったとかそういったことは関係なく、今永が投げた試合でチームがどうだったのか、そこに重きを置いてもらえるような、9回0点で完投しても延長戦で負けたらダメなんだと、そういった厳しい目を持ってもらえるような選手でありたいと思います。

    ―この難しい目標を達成するために、どういった取り組みが必要になると思っていますか?

    絶対的な技術、どんな自分が状況でも相手を凌駕(りょうが)する技術とフィジカルというのは必ず大事だと思うので。それはケガをしないこともしかり、コンディションを整備するのもしかり、本当に全てに気をつけないとこの目標を達成できないと思うので。野球に関する全てのことでこの目標を意識することが大事だと思っています。

    ―地元、北九州の皆さんにメッセージをお願いします!

    僕の生まれ育った北九州がいつ帰ってきてもあたたかい街で大好きです。paypayドームで試合がある際にはぜひともご声援をいただけたらなと思います。これからも遠いところではありますが、あたたかいニュースをお届けできるようにがんばります。応援よろしくお願いします!

    すべての質問に本当に真摯(しんし)に対応していただきありがとうございました!インタビューの数日後、WBC代表に選ばれたことが発表され、力強い言葉がますます頼もしく感じられました。今シーズンの交流戦では、ホークスの本拠地でベイスターズ戦があるので、地元での投球が見られるかもしれません。日本の、そしてDeNAの優勝はその左腕にかかっているといっても過言ではありません!キレッキレのストレートを楽しみにしています!

    最後まで読んでくださりありがとうございました。

      • 神戸和貴

        北九州放送局 アナウンサー

        神戸和貴

        愛知県出身、2011年入局。野球を中心にスポーツ中継を担当。趣味は草野球、ゴルフ、筋トレ。

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