世界の舞台で活躍を!パラ競泳・福田果音選手
- 2023年08月03日
7月31日にイギリスのマンチェスターで始まったパラ競泳の世界選手権。この大会に小倉西高校2年の福田果音選手(ふくだ・かのん)が出場しています。運動機能障害のクラスの、女子100メートル平泳ぎでアジア記録を持つ期待の17歳です。生まれたときから左手に障害がある福田選手はどのように速くまっすぐ泳いでいるのか。そして世界の舞台で活躍したい思いとは。
(2023年8月3日ニュースブリッジ北九州で放送)
取材 アナウンサー神戸和貴

大舞台にかける思いを聞きました!
速くまっすぐに泳ぐ、そのポイントは?!
ーもうすぐ世界選手権です。調子はどうですか?

きょうは練習がけっこうきつかったんですけど、自分のタイムに納得がいかなかったので追加で平泳ぎをしていました。納得いくまでやろうと思っていたんですけどタイムが出なくてちょっと悔しかったです。ただ最近すごく追い込んでいる割にはいいタイムで泳げているんじゃないかと思います!
ー今回の世界選手権はどんな位置づけの大会ですか?

やっぱり来年のパリ・パラリンピックのために、自分がどのレベルにいるのか、どのくらいで泳げるのかというのを確かめる大会になるのかなと思います。目標は自己ベストでメダルをとりたいなと思っています。去年の世界選手権は4位だったんですけど、3位と5秒くらい差がある「ぶっちぎりの4位」だったんで(笑) そこから3秒くらい自己ベストを更新しているので、去年トップだった3人と競ったレースができるかなと思います!
ー3秒も自己ベストを更新できた要因は何ですか?

去年の世界選手権の前にちょっと足をケガしてしまっていて、思うようにキックの練習ができていなくて。大会が終わった後に足が完全に良くなって、そこから陸上トレーニングやキックの練習に力を入れることができたので、そこがベストが出た要因かなと思います。
ーキックの練習はきょうも重点的にやっていましたね。

やっぱり私は腕での推進力が少ないので、その分はキックで補うのが自分の泳ぎのメインになってきます。キックの細かな部分のアドバイスをコーチにもらって、実践してという練習です。
ーきょうは奥田恭弘コーチ(おくだ・やすひろ)もプールに入って直接指導していましたね。

あれはですね。平泳ぎは重心を前にして、足をけって体重を乗せるように前に泳いでいくんですけど。腕に力をどう伝えるかとか、いちばんよく進む力の伝え方というのをコーチに教えてもらっていました。やっぱりキックがないと進まないし、そこが大事かなと思っています。
ー左手に障害がある福田選手は、平泳ぎでどうやってあれだけまっすぐに速く泳いでいるんですか?

1つ意識しているのは、右手のかき始めです。ある方の右手のかき始めと、ない方の左手のかき始めをいっしょにしてしまうと、左手が短い分だけ早くかいてしまうので。そのタイミングを合わせるために、右手が左手の欠損のところまで来てからいっしょに動くというのを意識しています。

ーどうやってその泳ぎ方になったんですか?

それは私のクラスの先輩で、もう引退しているんですけど、一ノ瀬メイ選手(いちのせ)がテレビのインタビューで答えているのを見て、そうやってるんだ!っていうのを自分でもやってみてという感じです。あとはやっぱり片手で泳いでいる選手は少ないので、手探りでどうやったらうまくいくかコーチと二人でやっています。
ー平泳ぎは手と足のタイミングが大切だと聞いたことがあるんですけど、福田選手は右手と左手と足と3つのタイミングを合わせなきゃいけないってことですか?

いやめちゃくちゃ難しいですよね(笑) 自分でもあれ?あれ?ってなることがよくあるんですけど。1つずつ「さっきはこれを言われたから次はここを意識して・・」といろいろ探りながらやっています。速く泳ごうとすると力が入ってうまくいかなくなっちゃうこともあるので、力の入れ具合もすごく難しいなと思います。
夢はパラリンピックのメダル、そしてもう1つ…

ー今プール以外ではどんなことに力を入れていますか?

去年から陸上で下半身のトレーニングをしっかりやって、ジャンプやスクワットとかですね。家では寝る前と朝ちょっと早く起きてストレッチをしています。体が硬いとケガをしやすくなってしまうのでケアを優先しています。あとは私が本格的に強化選手になってからは、お母さんが食事もいろいろ勉強してくれて、「こういう栄養をとる方がいい」とか「こういうのはとり過ぎ」とか。「そういうところもちゃんとしていかないとね」って話していっしょに取り組んでいます。
ー将来の夢や目標を教えてください!

水泳ですか?それ以外で?まず水泳では直近では世界選手権、そして来年のパリ・パラリンピックでメダルをとる、来年のパリでは絶対にメダルをとりたい気持ちが強いです。
ーどうしてそんなにパラリンピックへの気持ちが強いんですか?

やっぱりどの選手も憧れるいちばん大きな大会ですし、年齢的にも来年18歳でタイムが伸びる時期ですし、狙っていきたいなと思っています。世界ランキング1位の選手が自分の2つ年下で、すごいなっていう気持ちと、その選手に勝ちたいなっていう気持ちもすごく強いです。めちゃくちゃ負けず嫌いで(笑) 何でもかんでも勝とうとして意地になってしまうところがよくも悪くもあるんですけど・・。
ー水泳はどんなところが楽しいですか?

すごく楽しいですね。周りの仲間も雰囲気がいいので練習も楽しいですし、タイムがどんどん縮まっていくところも楽しいなと思います。あとパラ水泳はそれぞれの選手に違う障害があって。全く同じ障害の選手っていないじゃないですか。なので、そういう選手が一人ひとり工夫してどうやったら速くなるかを試行錯誤してくところがパラ水泳のおもしろさかなと思います!
ーあ、ちなみに水泳じゃない夢も聞いていいですか?

海外遠征が多くなって英語に触れる機会が増えたので、海外で話すのがすごく楽しいなと思って。将来は英語関係の仕事につけたらなと思うようになりました。勉強しながら水泳でも結果を出していけたらいいなと思っています。
憧れの一ノ瀬メイさんのように!

ー泳ぎも参考にしたという一ノ瀬メイさんは憧れの存在なんですか?

日本の中で、自分のクラスでいちばん速かった選手で、まだタイムも抜かせていないのでメイちゃんのタイムを抜かしたいという気持ちがすごく強いです。私がパラ水泳で上を目指そうと思ったきっかけが一ノ瀬選手で、水泳を始めたばっかりのときにリオ・パラリンピックで泳いでいるのを見て、「自分もこの舞台に立ちたい」って思ったので。すごく憧れの選手です。
ー一ノ瀬さんは自身の障害や考え方などをいろいろなところで発信していらっしゃいますね。

メイちゃんの発信力だったり、障害についての発信のしかたはすごく参考になっています。他の人にわかりやすい伝え方だったり、新しい考え方が自分の中に入ってくるのでそういうところも尊敬しています。
ー福田選手も障害について、周りに伝える難しさを感じることがあるんですか?

すごくありますね。自分は障害があるから他の人の障害もわかることもあるんですけど、全く障害がある人とふれあってこなかった人は、全然わからないっていう人がたくさんいると思うので。私も高校で先生たちに、障害についてみんなに話してほしいと頼まれて話す機会をもらったんですけど、初めて大勢の前で自分の気持ちを話すのがすごく難しくて。終わってから「もっとこう言えばよかった」とすごく思ったので。そういう時にメイちゃんの言葉だったりを取り入れて、次にもし機会がもらえたときにもっとうまく話したいなと思っています。
ー福田選手はどんなことを伝えたいなと思うんですか?

いちばん私が思うことは、「障害があるのにがんばっていてすごいね」ってことばをもらうことがあったんですけど。そうやってがんばってるねって言ってもらえることはうれしいですし、言ってくれた方に深い意味はなかったと思うんですけど。私は障害があるから水泳をがんばっているわけではなくて、私が水泳が好きで、上を目指したいと思っているから水泳をしているだけなので。障害があってもなくてもがんばっていることに関係はないっていうことを、知ってもらいたいなあっていうふうに…。うーん、障害があるとかないとか関係ない!ってことがいちばん伝えたいことかなって思っています。
ーそういったことは例えばSNSなどで発信するとか?

SNSはお母さんに「大人になるまでダメ」って禁止されています(笑) やっぱり自分が活躍することでこういう取材の機会も増えていくと思うので、そういうところでまた自分の気持ちを発信していくためにも、競技で結果を残していきたいなと思っています!
ーあらためて今大会の目標を教えてください!

自己ベストを更新して、少しでもメダルに近づいていければと思います!

「きつい練習でもいつも前向きに取り組む」と奥田コーチが話すように、常に明るく笑顔が絶えない福田選手。伸び盛りの17歳が世界選手権や来年のパリ・パラリンピックでどのような活躍をするのかとても楽しみになりました。福田選手は200メートル個人メドレーでは決勝進出はなりませんでしたが、得意の100メートル平泳ぎでメダル獲得を目指します。レースは現地時間の8月6日に行われる予定です。