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ペット避難について考える

北九州市の取り組みを紹介
  • 2024年02月22日

家庭で大事に飼われているペット。いざ災害が起こったとき、飼い主はどのような行動をとればいいのでしょうか。避難所にペットは連れて行けるのか、どのような備えをすればいいのか、北九州市の取り組みと動物愛護センターの獣医師を取材しました。

(北九州放送局・記者 財前祐里香)

ペット避難の基本は「同行避難」

ペットの避難については東日本大震災や熊本地震などこれまでの大きな災害でも、課題の1つとなっていました。環境省は2013年に「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」を作成しています。この中では、ペットと飼い主は「同行避難」が原則としています。

北九州市は、2012年までは避難所へのペットの同行は原則禁止としていましたが、国のガイドラインや熊本地震を受けて2017年に地域防災計画を改訂し、ペットとの「同行避難」に対応するようになりました。

【環境省】災害時におけるペットの救護対策ガイドライン(※NHKのサイトを離れます)

北九州市が作成した手引き書

北九州市では、2022年7月に人とペットの災害対策に関する手引き書を作成しました。

 

北九州市が作成した手引き書

この手引き書には、飼い主の備えや災害が起きたときの対応のほか、避難所を運営する側の対応についても触れられています。
この手引き書は全戸に配布はされていませんが、北九州市のホームページで確認することができます。

【北九州市・人とペットの災害対策】いざというときに備えよう、飼い主と避難所運営者のための手引きについて(※NHKのサイトを離れます)

そもそもペットってどこまで?

手引き書の中には、避難所に同行できるペットとそうでないペットについても書かれてあります。

北九州市で「同行避難」できるペット例

市によりますと、同行できるペットは犬や猫、ウサギやハムスターなどの小動物のほか、家庭でペットとして飼われているメダカやカメなども含まれるといいます。ただし連れて行けないペットもあります。

連れて行けないペット
・特定動物(ワニガメやニシキヘビなど)
・特定外来生物(カミツキガメやサソリなど)
・大型の動物や多数の動物
・特別な設備が必要な動物

管理が困難な動物については、原則として受け入れはできないとしています。
また、断水や停電によって飼育が困難になるといった状況も想定が必要です。

北九州市の取り組み①「同行避難」

北九州市では実際にペット避難ができる施設や体制の整備にも取り組んでいます。
連れてきたペットを屋外などに留め置く「同行避難」の避難所です。

 

ペットの「同行避難」ができる市民センター

北九州市には498か所の指定避難所がありますが、このうちの約9割がペットと同行できる避難所に指定されています。

北九州市のホームページでは、市内の指定避難所の場所のほか、「同行避難」が可能かどうかを確認することができます。

【北九州市】災害時の避難場所(予定避難所・一時避難地)(※NHKのページを離れます)

しかし、これらの避難所にはペットの管理に必要な資材は用意されていません。飼い主が責任を持ってペットを入れるケージや食料・水などを持参する必要があります。

北九州市の取り組み②「同伴避難」

そして今年度、試行的に導入しているのが「同伴避難」です。これはペットと一緒に建物の中に入ることができます。北九州市では戸畑区内にある避難所の1か所だけが指定されています。

「同伴避難」のテント式パーテーション(写真提供:北九州市保健衛生課)

テント式のパーテーションが備えられていて、一緒の空間で過ごすことができます。ただし、「同行避難」と同様にペットを入れるケージや食料を持参しなければなりません。

災害に備え、飼い主がするべきこと

飼い主はペットを連れた「同行避難」が原則ですが、避難所にはペットを飼っていない人や動物アレルギーの体質の人など、さまざまな人が利用します。双方に過度なストレスがかからないようにすることが大事です。これを回避するポイントなどについて「北九州市動物愛護センター」の獣医師の川合晶子さんに話を聞きました。

 

川合さん

しつけはほかの人への迷惑を防止するとともに、ペット自身のストレスを軽減することもできます。日頃からむだぼえをせずにおとなしくケージで過ごせるようなしつけやワクチン接種、ノミやダニの駆除のような健康管理を行うことも大事です。

 

避難時に必要なペットの物資

また、持ち物についても備えが必要だと話しています。(以下、北九州市の手引き書から抜粋)

避難時のペットの持ち物リスト
▼優先順位1
・ペットフード、水(少なくとも5日分)
・ケージやキャリーバッグ
・予備の首輪やリード
・服用中の薬や療養食
・トイレ用品(ペットシーツやトイレ砂など)

▼優先順位2
・飼い主の連絡先の情報
・飼い主以外の連絡先の情報
・ペットの写真やペットの情報

▼優先順位3
・ペットのお気に入りのおもちゃ
・新聞紙や粘着テープなど

川合さん

ペットに関しては健康面やしつけを含めた平常時からの適正な飼育が最も有効な災害対策です。
きょうからぜひ取り組んでいただきたいと思います。

過去の災害では、ペットと一緒に避難することでほかの避難者に迷惑をかけるのではないかという心理のもと、ペットと一緒に車中泊をした人が体調を崩すケースもあったということです。
北九州市はこうしたことを防ぐためにも、ペットを飼育している人には自身の安全を確保した上で「同行避難」をしてほしいとしています。
 

  • 財前祐里香

    NHK北九州放送局 記者

    財前祐里香

    北九州放送局記者。ふだんは北九州市政を取材。
    実家に猫がいるので、取材後に備えの物資について改めて確認しました。

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