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日本女子オープンに挑む!プロゴルファー後藤未有選手

  • 2023年09月25日

9/28~10/1に福井県で女子ゴルフ日本一を決める第56回日本女子オープンゴルフ選手権が行われます。北九州市小倉北区出身の後藤未有(ごとう みゆう・22)選手がビッグタイトルに挑みます。現在も福岡県宮若市などで練習を続ける後藤選手。正確なショットの秘密は手元に!大会への意気込みや同世代への思いなど、たっぷりと伺ったインタビュー、長文でご紹介します。
(2023年9月25日ニュースブリッジ北九州で放送)

取材 アナウンサー神戸和貴

小倉北区出身の後藤未有選手
大会期間中に23歳の誕生日を迎えます!

ボールも信念も曲げない!こだわりの”ベースボールグリップ”

―初めまして後藤選手、よろしくお願いします!早速ですがラウンド練習を見ていますと、グリップの握り方が独特ですね。どうやって握っているんですか?

私はベースボールグリップ(写真①)という、10本の指でクラブを握っています。 一般的なグリップは、オーバーラッピング(写真②)といって左手の人差し指に右手の小指をかぶせたり、インターロッキング(写真③)といって左手の人差し指と右手の小指を交差させる握りが多いんですけど。右手と左手を完全に離して握るのが自分のグリップです!

(写真①)後藤選手のベースボールグリップ
右手と左手が離れて10本の指で握る
(写真②) オーバーラッピンググリップ
左手の人差し指に右手の小指をかぶせる
(写真③)インターロッキンググリップ
左手の人差し指と右手の小指をからめる

ーベースボールということは、野球のバットを握るような感じですか?

バッティングセンターに行っても同じ握り方です(笑)。私はゴルフを始めた時からこの握り方を自然にやっていたんです。4歳から始めたので力がなく、指をからめる握りができなかったので、ただ単にシンプルに握っていたのがこの形で。そこから今の篠塚武久(しのづか たけひさ)先生に出会って、篠塚先生もベースボールグリップでした。なので私はずっとベースボールグリップでやってきた感じです。

―では先生に教わってこの形になったわけではないんですね!誰かに直されることはなかったんですか?

やっぱり「ベースボールグリップじゃ勝てないよ」じゃないですけど、なんていうか…一般的なゴルフ理論ではありえない形なので、最初は反対のことばも多かったんですけど、全然気にした事はなかったです。今までやってきたのはこれですし、これが私のゴルフなので。それを曲げずに勝てたらかっこよくない?みたいな感じです。ジュニアスクールの時は先生に直されても、握りづらかったんでしょうね。先生の目を盗んでベースボールグリップに戻していました…(笑)

ーなんという小学生(笑)。性格的に芯が強い?

だいぶ強いと思います!

ーベースボールグリップにすると、どんなメリットがあるんですか? 

他の握り方は、左手の親指を立ててその上から右手で握るんですけど、左手の親指を痛めちゃったり、ゴルフって指のケガが多いんです。でもベースボールグリップは親指にかぶせないのでケガが少なく、長くゴルフを楽しむことができますし、非力な女性やシニアの方でも力を入れやすく握りやすい形だと思います。

ー得意クラブは短いアイアンやウェッジと聞きましたが、このグリップだとどうですか?

短い距離はボールを運ぶ感覚が大事になってくるので、私は右手でボールを運ぶイメージを強く持ちます。アプローチは特にそうですね。このグリップは左右の手を別々の感覚で考えられるので生きてくるんじゃないかなと思います。右手の感覚がより研ぎ澄まされる感じです。

ーアマチュアゴルファーがベースボールグリップで打つ時のポイントは?

利き手が右手だと、右手に力が強く入るとクラブが早く返りやすいスイングになっちゃうので、力を入れて振る!というより右手でボールを運ぶイメージで打つと返りが強くなりすぎないかなと思います。そこを注意すればうまくいくと思います!私も得意な130ヤード以下のクラブはそのイメージです。アプローチは右手でボールを投げるようなイメージで、どこに落として転がすかを考えます。自分が活躍することでどんどん普及して、ベースボールグリップがいいかもしれないってなったらすごく夢があることだなと思って。そうなってくれたらうれしいです!

横から見た後藤選手のグリップ
左手の親指もしっかりグリップを握っています

高校生で8位タイ!飛躍のきっかけとなった日本女子オープン

ー今シーズンは国内ツアーで10位以内が4回(9月25日時点)。次の日本女子オープンに向けて調子はどうですか?

今シーズン安定した成績を続けられているのは、去年から成長できた部分だと思っています。その要因としてはパッティングが入るようになってきたことと、ショットの精度も上がってきているかなと。だんだん、だんだんと優勝に近づいているんじゃないかなと思っています。日本女子オープンは特別な大会です。高校3年でローアマチュア(=アマチュアでトップの成績・全体8位タイ)を取ったことがきっかけで、ナショナルチームに入れたり、自分のターニングポイントと言っていいくらいいろいろなことが変わった試合という印象があります。プロとしてこの試合で勝って、どんどんレベルアップしていけたらいいなという、すごく大事な試合です。

 ー大会の目標は?

もちろん優勝です!やっぱりコースセッティングが難しいと思うので、みんな耐えて、伸ばして、となってくると思います。私は耐えるゴルフは得意な方ですし、ショットメーカーなので、アグレッシブさも備えていると思うので。難しいセッティングを楽しみながらできる方なので、ワクワクしています。

5年前、高校3年生で日本女子オープン8位タイ
アマチュアトップの成績で表彰

 ー後藤選手はきょうもずっと明るい印象なんですが、ゴルフでは性格はどうですか?

周りからはムードメーカーとか明るいって言われるということ多いですね(笑) 。あとすごく挑戦が好きというか、何か失敗するなら攻めて失敗した方がすがすがしいというか。守って失敗したときの方がダメージが大きいので、それでゴルフでも私生活でもガンガン攻めることが多いと思います!

ー私生活でもガンガン攻めるとは?

例えば小学生の時はケガをしまくっていましたね。体育の授業や昼休みでも、自分にはできないだろうなっていうとび箱を、よしやってみよう!ダン!バタン!痛い!みたいな(笑) 。ゴルフでも本当に大事なところで攻めて、そこで決められることがかっこいいと思っています。やっぱり上位の選手を見ていても、守って守って勝つ選手は少なくて、しっかり攻めた結果がいい方向につながって勝っているかなと思うので。自分も攻めの姿勢は変えずに、最後まで、首位に立っていようと攻め続けたいなと思っています。

ー逆に課題はどうですか?

課題はずっとパッティングだと思っていて、去年に比べればだいぶ成長しているんですけど、それでもやっぱりトップの選手と何が違うかと比べるとパターだと思うことが多々あります。ショートパットは確実に決められるようになってきたので、あとはミドルパット、ロングパットが入る回数を上げていくのが今の課題です。

ピンを狙う攻めのショット

原点は北九州の”家のような練習場”

ー北九州のどのあたりで育ったのか、差し支えなければ教えてください!

小倉北区です。城野小学校でした!

ーどんな小学生だったんですか?

本当にゴルフばっかりしかしていなくて(笑) 。よく試合に行っていたので、学校を休むことも多かったんですけど。それでも帰ってくると、友達みんなが「どうやったん?どうやったん?また勝ったっちよ?」みたいな(笑)。 試合から帰るたびにすごく温かく迎えてくれて。学校の帰り道に騒ぎながら帰ったこととか…すごく懐かしいですね。

宮里藍さんに憧れて始めたゴルフ(写真は本人提供)

ーゴルフを始めたのも北九州で?

私は4歳からゴルフを始めたんですけど、家族は誰もゴルフをしていなくて。宮里藍さんに憧れてやりたいと言って、クラブを買ってもらって始めました。学校が終わって家にランドセルを置いてすぐに練習場に行って、まだ身長がちっちゃくて受付のカウンターにも届かないくらいで。「こんにちはー!」みたいに言ったらいつも温かく受付の方が迎えてくれて。練習場の常連さんもみんな応援してくれていたので、なんだかあったかい家みたいな練習場でした。

ーどんな練習をしていたんですか?

北九州の練習場は看板がたくさんあって、カゴやアプローチをするところがたくさんあったので、カゴに入れたり、看板に当てたり、奥のグリーンに何球乗せよう!とか。明確に点で狙う練習ができたのが、すごく上達につながったと思います。本当に練習環境がよくなかったらゴルフを続けていられなかった、今の自分はないかなと思っていて。将来有望だからと無料で練習をさせていただいたこともありましたし、本当に手厚くサポートしていただきました。

後藤選手が通った練習場。思い出のカウンターです

仲のいい同世代にも負けない!日本女子オープンで悲願の初優勝を!

―日本女子オープンは3年ぶりの出場になります。ここ数年はうまくいかないことも多かったんでしょうか?

そうですね。高校生のときは「メジャー大会だ」ではなくて、シンプルにゴルフを楽しむことができて、その中で上位でプレーできているワクワクが今でもすごく印象に残っていて、大きな自信になりました。ただその後はナショナルチームの一員として出場させてもらった試合でうまくいかず、プロとしてホームコースで出た試合も悔しい結果になってしまって。すごくスイングに悩みを抱えてしまい、ショットメーカーだったはずがショットがダメになってしまって。いちばんと言ってもいいくらい苦しい時期でした。

ー2020年前後ですか。そんなに苦しい時期があったんですね。その頃は古江彩佳(ふるえ あやか)選手や西村優菜(にしむら ゆな)選手など、同世代の活躍も目覚ましかったですが、どうご覧になっていたんですか?

うれしい反面、悔しさもありますし、情けなさを感じたり。「なんで自分にできないんだろう」とすごくいろんな感情が入り混じっていた時期でした。今まででいちばん練習したんじゃないかというくらい練習しました。それでもダメだったから、「何がダメなんだ」みたいな…ぐるぐるぐるぐる暗闇を回っているような感じでした。

ー復調のきっかけは何かあったんですか?

明確にこの試合、この1打があったわけじゃなくて、悩み続ける中でどこかで「もういいや!」ってなったんですよ(笑) 。そしたら気持ちがちょっと軽くなって、ミスを責めずにシンプルにゴルフだけを追い求めるようになって、ちょっとずつ前に進めるようになったかなと思います。だんだんだんだんよくなって、戦えるかも?ってなったときに、おととし秋のステップアップツアーで優勝できました。そこで一気に自信が戻ってきて。これを乗り越えられたので今はもう何も気にすることなく精いっぱい自分のプレーができたらいいなという気持ちです。もう低迷する事はないかなと思います!

左上から後藤選手、西村優菜選手、澁澤莉絵留選手、古江彩佳選手
左下から吉田優利選手、安田祐香選手と多士済々の同世代
(後藤選手のInstagramより)

―では今回、予選を勝ち上がっての久々の日本女子オープンは期するものがありますね?

すごくうれしいですね。過去の自分を超えられるように、優勝したいなという気持ちも大きいです。でも来年からは予選会に出なくていいようにというのも大きいんですけど(笑) 。毎年大会は私のバースデーウィークでもあって、テレビで指をくわえて見ているのがすごく悔しくて、さみしい誕生日を過ごしていたんですけど。ことしは自分でいい誕生日にできるか決められるのでいい日にしたいです!

―9月29日が誕生日ということは大会2日目ですか!応援しています!日本女子オープンに限らず、今後の目標は?

今シーズンはとにかくツアー初優勝をすること。そして2勝、3勝と優勝したいというのが目標です。長い目で見たときには、アメリカツアーに参加してランキング1位になるのが目標です。まずは日本女子オープン、国内メジャー大会を勝ちたい気持ちがすごく大きいです。

ーまさに海外には古江選手や西村選手も挑戦していますね!

どれだけ大変なのかはすごく聞いていて、その中で頑張っている同学年の選手はすごく尊敬もありますし、自分もそこに行きたい気持ちが強いです。まだ今は足りないところが多いですが、伸びしろだらけだなと自分で感じています!そこがゴルフの楽しい部分でもあるので、レベルアップできるようにがんばります。

ー最後に地元で応援する皆さんに向けて意気込みをお願いします!

本当にこんなに地元の皆さんに愛していただいてすごく心強いですし、福岡に帰ってくるのが大好きなので。皆さん温かく迎えてくれますし、それがあるから地方に行っても頑張れるというのもあります。そんな大好きな福岡・北九州の皆さんのためにも優勝のいい報告を届けられるように頑張りたいなと思っています!ヘラヘラしていますけど、かっこいいところもあるぞというのを見てほしいです(笑)。

攻めのゴルフに注目!
特に力を入れるパター練習

ニコニコ笑顔の受け答えと、ショットを打つ時の真剣な表情のギャップがとてもすてきな後藤選手でした!アプローチ練習では20ヤードを2球目で直接カップイン。さすがプロの技、恐れ入りました…。私もベースボールグリップ試してみます。
日本女子オープンゴルフ選手権は9月28日(木)からNHKのBS1と総合テレビで毎日中継します。すばらしい誕生日になることを応援しています!

  • 神戸和貴

    北九州放送局 アナウンサー

    神戸和貴

    愛知県出身、2011年入局
    野球を中心にスポーツを取材。趣味のゴルフに片思い。課題はドライバーのOB、不安定なショット、多発する3パット

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