依存症とは?
依存とは、心身の健康や生活を脅かしているにも関わらず、特定の物質や行動をやめたくてもやめられない(コントロールできない)状態のことを指します。
依存には、アルコールやニコチン、薬物などに関連する「物質系」の依存と、ギャンブルなどの行動や習慣に関連する「非物質系」の依存があります。
このうち、医学的な診断基準を満たす場合を「依存症」といいます。
(※依存対象によっては医学的な定義や診断基準が存在しないものもあります)
「コントロールできない」ということそのものが「症状」であり、意志の弱さや性格の問題ではありません。必要なのは、適切な支援や治療を受けることです。
ハートネット『これって依存症?』(依存症に関する基本的な情報まとめ)はこちら
アルコール依存
アルコール依存症は、「日々どうしても飲まずにいられない」「量のコントロールもできない」「健康や生活に支障が現われても やめられない」といった状態です。いわば脳内のアルコールに関するブレーキが壊れてしまっていると言えます。
アルコール依存症の人は全国で100万人を超えるとみられています。ところが治療している人はたった5%ほどしかいません。
アルコール依存症のサイン
アルコール依存症になる直前には、次のようなサインが見られます。
【アルコール依存症のサイン】
- 酒に強くなり量が増加していく
- ほろ酔いでは飲んだ気がしなくなる
- 飲んで記憶を失うようになる
- 飲むことを優先した生活になる
など
1つでも思い当たったら、どうか一人で悩まず医療機関に相談してください。
飲み過ぎないコツ
コロナ禍が長引き、アルコール依存症の治療を行う医療機関には数多くの相談が寄せられています。仕事や暮らしへの不安、自由に遊びに行けないストレスを解消させようとお酒の量が増えてしまったり、在宅ワークの推進など環境の変化が起きたりしていることも影響しているようです。
家で飲む量が増えてきたという人に、飲み過ぎないコツをまとめました。
【飲酒量を減らすコツ】
- ノンアルコール飲料を先に飲む
- 食事のときに飲む
- ゆっくり時間をかけて飲む
- なるべく薄いお酒を飲む
- 飲まない時間帯を決めておく
また、飲酒以外でリラックスできる方法を、1つでも2つでも見つけて実践することもおすすめします。たとえば料理や読書など。バルコニーや庭に出て運動するのもいいでしょう。
記事『アルコール依存症の特徴とは?症状とセルフチェック法』はこちら
アルコール依存症の新しい治療法「減酒」 新薬も登場
ニコチン依存症
たばこに含まれるニコチンは、脳に作用し、快感をもたらすドパミンという物質を放出します。たばこを「おいしい」と感じるのは、このドパミンの作用です。
喫煙が日常化すると、脳はニコチンがある状態でバランスをとるようになり、ニコチンが切れるとイライラ、落ち着かない、集中力の低下、気分が沈むといった離脱症状(禁断症状)が現れます。この症状を解消するために、たばこを吸うようになる状態を、ニコチン依存症と言います。
喫煙は、心筋梗塞・狭心症、脳卒中、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、がんなど多くの病気のリスクを高めます。
特に肺がんは4.5倍(男性)、喉頭がんは32.5倍(男性)、がん全体では男性で2.0倍、女性で1.6倍死亡リスクが高まるとの報告があります。
記事『禁煙治療に使われる2種類の薬と副作用、成功率について』はこちら
薬物依存
有名人の薬物使用、特に再使用が報じられると、インターネットなどで激しいバッシングが起こります。薬物の使用が“心の弱さ”のため、“自分への甘さ”のためと考えているからだと思います。しかしそれは誤りです。
覚醒剤などの薬物を使っていると脳の状態が変化してしまいます。
これまでになかった強烈な欲求が新たに生まれ、自分の行動をコントロールできなくなってしまうのです。意志や資質の問題ではなく「治療が必要な病気」と捉えることが大切です。
ハームリダクション
薬物問題への新しいアプローチとして、ヨーロッパなどでは厳罰主義から「ハームリダクション」(薬物の害をできるだけ減らす)という方針に変わってきました。国連もこれを推し進めています。
カナダ・トロントでの「ハームリダクション」の取り組みを取材した記事はこちら(ハートネット)
市販薬でも依存症に
薬物依存症になるのは違法薬物だけではありません。市販されている薬で依存症になる人も近年増加しています。
せき止め薬・かぜ薬・鎮痛薬・頭痛薬といった市販薬には、カフェインを多く含むものや、覚醒剤やヘロインに似た成分を少し含むものがあります。大量にのむと「元気になれる」「気持ちが落ちつく」と感じることがあり、繰り返し使っていると依存しやすくなります。
こうした市販薬への依存は10代の若者で急増しています。特に女子が目立ちます。
家庭での孤立や学校でのいじめといった悩みを、学校や家で相談できない場合、市販薬に頼ってしまうことがあるのです。
こうした行動に気づいた場合、ただ責めるのではなく、背景に何かがあるのかを時間をかけて聞き取り話し合ってほしいと思います。ただし保護者だけで解決するのは難しいことです。お住いの自治体に設置されている精神保健福祉センターなどに相談することをおすすめします。
ネット依存
ネット依存とは?
ネット依存とは、「勉強や仕事といった生活面や体や心の健康面などよりもインターネットの使用を優先してしまい、使う時間や方法を自分でコントロールできない」状態のことを指します。最近では、特に中高生のネット依存が問題で、ネット依存が疑われる中高生は約51万8千人と推計されています。
ネット依存になると、体や心といった健康面や、家族や社会といった人間関係に問題が起こります。
【体や心の問題】
- 低栄養
- 体力低下
- 骨密度低下
- 睡眠障害(昼夜逆転の生活)
- 感情をコントロールできない
(ネット環境がない場合にイライラする) - うつ状態
【家族的 社会的問題】
- 家族関係の悪化
- 遅刻
- 不登校
- 成績不振
- 退学
ネット依存を予防する
ネット依存にならないよう、予防することはある程度可能です。そのためには、インターネットに関するルール作りをしましょう。
【ネットのルール作りのポイント】
- 親の名義で購入し、子どもには「貸し出す」
- 使用時間、使用場所、使用金額を指定
- 書面にし、目に付くところに貼る
- 親子一緒にルールを作る
- ルールは親も守る
記事『ネット依存とは?問題点や健康への影響について』はこちら
ゲーム障害
ゲーム障害は、ゲームに熱中し、利用時間などを自分でコントロールできなくなり、日常生活に支障が出る病気です。WHO(世界保健機関)では新たな病気として2019年5月に国際疾病分類に加えました。
ゲーム障害の兆候
ゲーム障害は誰にでも起こる可能性がある病気です。
そのため、ゲーム障害の兆候を知り、早めに気付くことが大切です。
下記が、ゲーム障害の8つの兆候です。
【ゲーム障害の兆候】
- ゲームをする時間がかなり長くなった
- 夜中までゲーム続ける
- 朝起きられない
- 絶えずゲームのことを気にしている
- ほかのことに興味を示さない
- 注意すると激しく怒る
- 使用時間や内容などについて嘘(うそ)をつく
- ゲームへの課金が多い
こうした兆候が見受けられる場合は、まず注意することが大切です。注意をすることで、ゲームの時間が減ったり、やめることができたりすれば、あまり問題はありません。
しかし、注意してもゲームをする時間が減らない場合は、ゲーム障害が疑われます。
ゲーム障害の診断や治療について詳しく知りたい方はこちら
【Q&A】子どものゲーム障害 どう対処する?
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※依存症・アディクションに関する「相談窓口・支援団体」はこちらへ。
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