市販の薬で薬物依存!?10代で急増 違法薬物だけではない身近なリスク

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市販薬でも依存症に

薬物依存症になるのは違法薬物だけではありません。市販されている薬で依存症になる人も近年増加しています。私が相談を受ける典型的なケースを示します。

市販薬で依存症になるケース

高校生のAさん。ドラッグストアでせき止めの薬やかぜ薬を買い、こっそりのんでいます。

かぜ薬を体調が悪いときに飲んだところ、勉強に集中できた

以前、体調が悪いときにのんだところ、勉強に集中できたのがきっかけでした。今では学校や家でつらいことがあると、楽になりたくてのみます。

回数や量が増え手放せなくなった

やがて回数や量が増え、薬が手放せなくなりました。

薬を買うために親の財布からお金を抜き取る

この間は、薬を買うため親の財布からお金を抜き取ってしまいました。

せき止め薬・かぜ薬・鎮痛薬・頭痛薬といった市販薬には、カフェインを多く含むものや、覚醒剤やヘロインに似た成分を少し含むものがあります。大量にのむと「元気になれる」「気持ちが落ちつく」と感じることがあり、繰り返し使っていると依存しやすくなります。

10代女子などに急増

市販薬への依存は10代の若者で急増しています。特に女子が目立ちます。子どもたちが市販薬に依存する背景には、家庭での孤立や学校でのいじめがしばしばあります。そうした悩みを学校や家で相談できない場合、市販薬に頼ってしまうことがあるのです。しかもドラッグストアにはコスメ商品などが置いてあり生徒には身近な場所です。市販薬も簡単に手に入ります。

保護者はどうしたら?

親などの保護者が子どもたちのこうした行動に気づいた場合、ただ責めるのではなく、背景に何があるのかを時間をかけて聞き取り話し合ってほしいと思います。ただし保護者だけで解決するのは難しいことです。お住まいの自治体に設置されている精神保健福祉センターなどに相談することをおすすめします。

処方薬でも依存症に

医師から処方される薬でも依存症になることがあります。主にベンゾジアゼピン系と呼ばれる抗不安薬や睡眠薬です。薬の量が多すぎたり長く使い過ぎたりした場合に、薬が手放せなくなり、やめようとするとかえって強い不安や不眠に襲われることがあるのです。

こうした薬はうつ病やパニック障害でよく処方されます。背景にある心の悩みを患者さんが医師に十分に打ち明けられず、ただ早く楽になりたいと思った場合に、薬だけが増えていきがちです。複数の医療機関を受診して薬を増やしたり、インターネットで薬を違法に手に入れたりする患者さんもいます。

処方薬への依存は、医師の指示で薬を徐々にやめていくなどの対応が必要です。心配だからといって自分で勝手にやめてはいけません。担当の医師や専門の医師に必ず相談してください。

アディクションからコネクションへ

アディクションは「依存」、コネクションは「つながり」という意味です。薬物依存になる人は、つらいことがあっても周りの人を頼らず、自分ひとりで乗り越えようとする傾向があります。薬という物で自分をコントロールしようとして、反対に薬にコントロールされてしまうのです。
さまざまな悩みを抱えている皆さんは、薬で解決しようとする前に、誰かに相談する・助けを求めることを忘れないでください。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2021年11月号に詳しく掲載されています。

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