減酒という治療法 新たに注目

アルコール依存症を「断酒」ではなく「減酒」によって治療する取り組みが、最近始まりました。本来は飲酒を完全に断つ「断酒」が鉄則です。しかし患者さんにはかなり厳しく、ドロップアウトする人や、「飲酒できないなら病院に行かない」という人も出ていました。そこで、減酒という新たな方法が注目されるようになったのです。
どんな手順で減酒する?
断酒は入院して行うことが多いのに対し、減酒の多くは通院しながら行います。

まず、どのような飲酒をしているか、どのような問題が生じているかを、詳しく聞き取ります。

次に、減酒の目標を決めます。無理のないものを考え、本人が表明したことは尊重します。「1回当たりに飲む量をこれぐらいにする」「休肝日をつくる」などです。

さらに、減酒をどのように実践するかを決めます。
「周りの人にお酒をコントロールすることを宣言する」「飲酒中に飲んだ酒量をチェックする」などです。やはり本人のアイデアも取り入れます。
記録とフォローアップが欠かせない
減酒で欠かせないなのは「記録」と「フォローアップ」です。

飲酒の記録を日記のようにつけてもらいます。スマートフォンのアプリもあり、それに記録してもかまいません。
次に受診したとき、その記録を医師と一緒に確認します。「目標がどれくらい達成できたか」「減酒できたら、それによってどんな良い変化があったか」「減酒できなかったら、どうしてできなかったのか」など、じっくり話し合い、次はどうするかを考えます。記録して成果を確認することで減酒治療のモチベーションを高めるわけです。
減酒を支援する薬も
減酒に取り組む人に頼もしい味方が登場しました。ナルメフェンというのみ薬です。日本では2018年に承認されました。


通常お酒を飲むと快感を生み出すβエンドルフィンという物質が分泌され、また飲みたくなります。そこで、飲酒の1〜2時間前にナルメフェン1錠を服用します。するとナルメフェンが「お酒を飲みたい」という気持ちを抑えてくれるのです。
ナルメフェンでは、めまい・吐き気・頭痛などの副作用が出ることがあります。その場合は医師に相談して対処します。
軽いアルコール依存症などに効果
減酒やナルメフェンによる治療は、軽度のアルコール依存症や依存症一歩手前の人が主な対象です。多くの人が減酒に成功し依存が改善しています。
アルコール依存症が重い場合は最初から断酒が適しています。しかしそれが難しい場合、ステップとしてまず減酒を行うこともあります。またどんな場合も、断酒か減酒かは本人の希望をできるだけ考慮します。