ネット依存とは

ネット依存とは、「勉強や仕事といった生活面や体や心の健康面などよりもインターネットの使用を優先してしまい、使う時間や方法を自分でコントロールできない」状態のことを指します。最近では、特に中高生のネット依存が問題で、ネット依存が疑われる中高生は約93万人と推計されています。
現在、医学的なネット依存についての定義はまだ定まっていません。しかし、ネットの中でもゲームに依存する方が非常に多いことから、米国精神医学会が、「インターネットゲーム障害」の暫定的な診断基準を示しています。
久里浜医療センターでは、「ネットの過剰使用」が認められ、それによって「明確な体や心の問題が生じている」、もしくは、「明確な家族的、社会的問題が生じている」場合をネット依存と診断し、治療を始めます。
ネット依存の兆候

ネット依存のうち、7~8割はゲームに依存しており、2~3割はSNSや掲示板サイト、動画サイトなどに依存しているといわれています。

ネット依存の兆候として以下のことがあげられます。
- 使用時間がかなり長くなった
- 夜中まで続ける
- 朝起きられない
- ほかのことに興味を示さない
- 絶えず気にする
- 注意すると激しく怒る
- 使用時間や内容などについてうそをつく
- ネットにより成績が下がった
上記の症状が見られる場合にはネット依存が疑われます。
体や心の症状、家族的・社会的な問題

ネット依存になると、体や心といった健康面や、家族や社会といった人間関係に問題が起こります。
体の問題では、ネットの過剰使用により栄養が偏った食生活を続けたりすることで栄養失調になることがあります。また、運動不足により体力低下、骨密度低下が起きます。
心の問題では、昼夜逆転の生活による睡眠障害や、ネット環境がない場合にイライラしたり、無気力になったりすることがあります。更に、ネットでの過剰な課金によってうつ状態などの問題が生じることがあります。
家族的、社会的問題では、家族がネットを強制的にやめさせたり、注意をしたりすると暴言、暴力を振るうなどして、家族関係が悪化することがあります。また、学生の場合はネットを優先してしまい、遅刻、成績不振、不登校などになることがあります。中には退学しなければならなくなったケースもあります。
ネット依存の発症原因

ゲームで得られる「勝った」という快感やわくわく感はアルコール、薬物で得られる快感と同じくらいであることが現在の研究で分かってきています。
またオンラインゲームでは、どんな時間に遊んでも他のプレーヤーがいるので、自分だけが特別に没頭している訳ではない、と思ってしまう恐れもあります。
原因はゲームそのものだけではありません。その人自身や周りの環境もネット依存を進める要因になります。
治療方法
治療のゴール

治療の必要は問診、身体検査、心理検査などの診察で診断します。
ネット依存は依存対象を生活から完全に排除することが不可能です。ですから、「依存しているコンテンツだけをやめる」「利用時間を減らす」といった明確なゴールを定めて治療を行っていきます。

ネット依存の診察、検査
診察では、身体検査と心理検査が行われます。身体検査では、栄養状態をみるための採血、肺機能検査、かかとの骨密度の検査、体力測定などを行います。心理検査では、ネット依存傾向やうつなどの精神疾患の有無などの検査を行います。

久里浜医療センターでは、診察を行ったのち、患者さんにあわせてカウンセリング、デイケア、入院をお勧めします。
カウンセリング
カウンセリングでは患者さんの背景、人となりや悩みなどを洗い出し、とらわれている思考や認知の偏りを見つけて修正していきます。
デイケア
デイケアは日帰りのプログラムで、集団で体力づくりをしたり、一緒に食事をとりながら、自分の生活やネットについてディスカッションをしたりします。
年に1度8泊9日でキャンプも行っており、デイケアの内容とカウンセリングの他に、トレッキングや野外炊事を行っています。
治療の先輩が参加し、参加者に対して自分は実際にどのようにネットの時間を減らしたかなどを直接話すといった場面も見られ、患者さんにとって効果的なアドバイスになります。
入院
入院は、入院をしなければネットから離れられないとき、ネットによる家族問題や課金などの問題があるとき、健康状態に大きな問題があるときに勧めます。
ネット依存を予防するには

ネット依存にならないよう、予防することはある程度可能です。
そのためには、インターネットの利用に関するルールを家族で作りましょう。
- 親の名義で購入し、子どもに貸し出していることを明確にする
- 使用時間、使用場所、使用金額を指定
- 書面に残し、目に付くところに貼る
- ルールは親子一緒に決める
- ルールは子どもだけでなく親も守る
ルールを決めたら子どもに守らせるだけでなく、親も守ることが大切です。また、ネットの危険性についてざっくばらんに話し合うことも予防につながります。