【患者体験談】「肺はもう治らない」と言われたが...「COPD」

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COPD(慢性閉塞性肺疾患)せきがでる呼吸器のど

COPDになったとき -私のチョイス-

「もう治らない」という診断

20年ほど前、Aさんは人間ドックで肺の異常を指摘されました。実はその2年ほど前から自覚症状はありました。通勤中に駅の階段を登るだけで、ひどい息切れがするようになっていたのです。

「はじめは、何だろう?と思っていました。階段を登るとハァハァ、ハァハァするので、しょうがないから階段の踊り場で手すりにつかまって休むようにしていました。」

Aさんは、大学病院で精密検査を受けました。結果は「肺気腫(COPD)」。肺の中で、酸素を取り込み二酸化炭素を排出する働きをしている肺胞が壊れる病気です。医師は言いました。

「薬だけのんで。あとは治らないんだから1年に1回ぐらい検査にくればいいんじゃないか。」
それだけで診察は終わりでした。

気持ちが落ち込みうつ状態に

「治らない」と言われてしまったAさん。せめて少しでもよくなるようにと、二十歳から吸っていたタバコをやめました。しかし、症状は改善されませんでした。すると次第に気持ちが落ち込んでいったと言います。

「動くのが嫌になって、外に行くのも嫌になってきました。後で考えると、うつ状態に近かったのかな。そういう状態のときは、朝方や夜遅くに、先のことを考え過ぎちゃって自分で心配になる。そうすると、すごく呼吸がおかしくなってくるんです。」

実際、Aさんはこの時期ひどい息苦しさに襲われ、救急車で4回、病院に運ばれたこともありました。しかし1年半後、ある気持ちが湧きおこりました。「もう一回、呼吸器専門の医師に診てもらいたい。」

Aさんは、近所のかかりつけ医に頼んで呼吸器専門の医師を紹介してもらいました。
「もしそれがなかったら、そのまま寝たきり状態にまで進んでいたと思う。」

重症のCOPDでも治療はできる!

専門病院を受診すると、診断結果はやはりCOPD。しかも重症だとのことでした。しかし専門医からは、「治療はできる」と伝えられたのです。

「肺気腫で壊れた肺胞は元に戻せないけれど、肺の全体が壊れたわけではありません。いいところが残っているので、それを守りつつ、肺機能をできるだけ戻して、日常生活が不自由にならないようにもっていく治療をしましょう。」

治療のひとつは、気管支を広げる吸入薬。さらに、体力を落とさないための運動リハビリも行いました。上半身の運動は呼吸筋を鍛えるため息切れの緩和につながり、下半身の運動は寝たきりを防ぐことにもなります。11年前には血液中の酸素濃度が低下したため、酸素供給装置で足りない酸素をおぎなう「酸素療法」も開始しました。外出には酸素ボンベが必要になりましたが、それでも毎朝30分のウォーキングは欠かしません。

最初の診断からおよそ20年。今ではAさんは、中高生へタバコの害を教える講演活動を行っています。また、自ら立ち上げた患者会の世話人を務めるなど、充実した日々を送っています。
「COPDになったら、薬とリハビリと運動。自分で体を動かしていかないとダメです。それを続けてこなかったら、ここまで何とか動いていられなかったと思います。」

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この記事は以下の番組から作成しています

  • きょうの健康 放送
    あなたの肺に忍び寄るCOPD