COPDは新型コロナウイルスの症状と似ている
COPDは「慢性閉塞性肺疾患」と呼ばれる肺の病気です。
COPDは肺の生活習慣病とも呼ばれており、肺胞の破壊が進んで、肺が膨らみ過ぎたり、空気が通りにくくて呼吸が苦しくなったりする病気です。主に喫煙が原因とされています。

COPDの患者数は推定530万人もいると言われています。このうち診断や治療を受けている人はわずか26万人です。実は、喫煙者の多くが、気づかないままCOPDにかかっています。

COPDの代表的な症状は、息切れ・せきやたんです。

息切れやせきなど、COPDの症状と新型コロナウイルスの症状はよく似ており、見分けが難しいとされています。COPDは日々の症状の度合いに波があります。その波を越えて、普段よりも悪くなる度合いが大きいようでしたら、電話などで医師に相談してください。
COPDの人は感染症にかかりやすく重症化しやすい
COPDの人は、一般的に感染症にかかりやすいといわれています。
それは、ウイルスから身を守ってくれる“気道の粘膜のはたらき”が低下していることが大きな要因になっています。
気管や気管支の表面は粘膜で覆われており、ウイルスなどの異物を外に排出するはたらきをする「線毛」や、ウイルスを攻撃する物質がはたらくなど、自然の免疫のシステムが備わっています。
ところが、COPDでは、気道の炎症などによって
- 炎症がおきることで線毛がなくなる
- 粘膜そのものが剥がれ落ちる
- 自然な免疫の働きが低下する
ため、ウイルスが簡単に侵入しやすくなっているのです。そのため、感染症にかかりやすいとされています。
また、新型コロナウイルスは、肺胞に炎症を起こす「肺炎」が起こりやすいという特徴があります。COPDの方は、ただでさえ肺胞の破壊が進んでいるので、健康な方よりも、より深刻な肺炎になりやすいとされています。

新型コロナウイルス 突然重症化するケースも
さらに、新型コロナウイルスは突然重症化するケースも報告されています。COPDの方は、この突然重症化してしまうケースにも、特に注意が必要です。
発症が突然に見える一つの要因は、実際とみかけの重症度が合致しないことがあることです。

通常の肺炎では気道でウイルスによる炎症がおき、せきなどの症状があり、その後肺に炎症が到達して肺炎を発症します。

【突然重症化するケース】
しかし、新型コロナウイルスは肺胞に直接とりついて目立った症状が現れないうちにウイルスが増殖することがあります。
軽い酸素不足では必ずしも呼吸困難が起こらないため、肺炎が重症化するまで気づかれないのです。
当初、この突然重症化するように見えるケースを沈黙の低酸素血症(Silent hypoxia)と呼んでいましたが、最近欧米では“幸せな低酸素症”(happy hypoxia)と呼んでいるようです(出典:Science 368:455, 2020)。
見かけ上、気がつかないという特徴からこのように名付けられていますが、突然重症化するため、非常に危険です。COPDの人は特に注意が必要です。
COPDの酸素療法を行っている方であれば、パルスオキシメーターをお持ちの方も多いと思います。お持ちの方は、低酸素血症を確認するとよいでしょう。
COPDの人が気をつけたいこと
COPDの治療について
禁煙はもちろんのこと、薬による治療や呼吸のリハビリテーションなど、普段行っている治療は必ず続けてください。
特に、気管支拡張薬などの吸入のお薬は大切ですので、自己判断でやめたりしないでください。酸素を処方されている患者さんは、きちんと酸素を吸うようにしましょう。
日常生活での注意点
- 自分が吸う空気に気をつけましょう。ホコリや煙を避けてください。湿度も適度に保ち、時々換気もしましょう。
- また、感染しないように体の抵抗力をつけるため、十分な睡眠と栄養をとりましょう。
- 外出自粛が続いていたため、活動量が減ってしまっている方も多いと思います。
活動量はCOPDの方にとって特に大切です。無理のない範囲で体を動かす・人混みを避けて散歩をすることはおすすめです。家の中でも歩数計をつけてみると、自分がどの程度体を動かしているかの目安になります。軽い筋トレ、ストレッチなどもおすすめです。
専門医からのメッセージ
喫煙しているうちに、かなりの方たちがCOPDになっています。喫煙をやめれば、その進行を遅らせることもできます。今からでも遅くありません。
また、COPDとまではいかなくとも、喫煙は新型コロナウイルスの感染を考えると、とても危険です。たばこを吸っている方はこの機会にぜひ禁煙しましょう。
そして昨今の自粛で、外出を控えている方も多いと思いますが、身体の活動度はCOPDの人にとってとても大事です。許される範囲の中で、活動量を維持し、元気に過ごしましょう。