腎臓の機能が低下する原因
推定患者数1330万人、新たな国民病とも言われる慢性腎臓病。早期に治療を開始すれば進行を止めることも可能です。
腎臓の最大の役割は、血液中から老廃物をこしとって尿を作ること。しかし、高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病によって腎臓の血管が傷つくと、ろ過がうまくできなくなってしまうのです。生活習慣病にかかっている人が増えているため、慢性腎臓病のリスクを抱える人も増えています。
慢性腎臓病の早期発見方法
慢性腎臓病には自覚症状がほとんどないため、体調が悪くなって病院を受診したときには透析間近・・・ということも珍しくありません。しかし腎機能の低下を早期に発見し、適切な治療を受けることで、病気の進行を食い止めることが可能です。早期発見のために、2つの方法をご紹介します。
ひとつは、尿検査でわかる「尿たんぱく」。これは、尿中にどのくらいの濃度のたんぱく質が含まれているのかを示す指標です。検査結果が(―)であれば異常ありませんが(+)(++)(+++)がついたら要注意。たんぱく質が尿と一緒に体外に漏れ出している証拠です。腎臓が傷ついている可能性があるため、まずはかかりつけの医師に相談した上で、必要であれば再検査を受けましょう。(+-)の場合は経過観察。もし二年連続で(+-)が出たら、こちらもかかりつけの医師に相談しましょう。

もうひとつ大事なのは、血液検査で分かる「血清クレアチニン」という値。(血清クレアチニンは、自治体や会社の健康診断の血液検査項目に含まれていることがあります。また、人間ドックの検査項目には基本的に含まれているものです。)この値と年齢を組み合わせることで、自分の腎臓がどのくらい働いているのか、いわば“腎臓の点数”を知ることができます。
下記の「腎臓の働き早見表」を見て、縦軸のクレアチニンと、横軸の年齢がぶつかったところが、あなたの腎臓の点数。60点未満だと、慢性腎臓病の疑いあり!
(男性版)腎臓の働き早見表はこちら
(女性版)腎臓の働き早見表はこちら
慢性腎臓病に運動を推奨


これまで慢性腎臓病の人は、運動することを制限されるのが一般的でした。運動をすると腎臓に負担がかかると考えられてきたためです。しかし近年の研究から、適度な運動は腎臓の血管を広げて、腎臓への負担を軽減する可能性があることがわかってきました。薬物療法、食事療法といった従来の治療に運動療法を加えた「腎臓リハビリテーション」という新しい治療プログラムが広がりつつあります。
運動する前に注意

運動は慢性腎臓病の病態が安定している人にかぎり広くすすめられます。そこで、あらかじめ医師に相談してから運動を開始してください。また、運動中に体調が悪化した場合は運動を中止してください。
また以下の場合、運動は原則として禁止です。
- 血圧 上が180/下が100(mmHg)以上
- たんぱく尿 100(mg/dL)以上
- 空腹時血糖値 250(mg/dL)以上
- 糖尿病網膜症
- 尿ケトン体が陽性
- BMI 30以上の極端な肥満
(ケトン体とは糖尿病のコントロールが悪いと尿中に増える物質。糖尿病が進行した方などは注意)
有酸素運動とレジスタンス運動

慢性腎臓病には、ウォーキングなどの有酸素運動とレジスタンス運動(筋力トレーニング)を組み合わせて行うことがすすめられます。
また、最初に体を柔らかくしたり温めたりする準備運動も行ってください。
片足立ちの運動----ダイナミック フラミンゴ
簡単にできるレジスタンス運動を1つ紹介しましょう。


まず、安定した椅子や手すりに つかまります。そして片方の脚を前のほうに5センチ程度上げます。この状態で1分間静止します。目は両方とも明けておきます。続いて、もう片方の脚を上げて同じく1分静止します。これを1日3回、朝 昼 晩と行ってください。

この運動は「ダイナミック フラミンゴ」と呼ばれています。
筋肉とともに骨が鍛えられることが特長です。この姿勢で1分立つと、脚の付け根の骨には53分歩いたのと同じ効果があると言われているのです。体のバランスもよくなり、普段ふらつく方は 転倒予防になります。
ほかのレジスタンス運動
レジスタンス運動としてほかには、スクワットが簡単にできて効果的です。体力のある人なら腕立て伏せや腹筋でもかまいません。スポーツ施設などの専用器具を使ったレジスタンス運動もすすめられます。
ダイナミックフラミンゴは軽いレジスタンス運動なので、毎日行っても差し支えありません。しかし強いレジスタンス運動の場合は週2~3回がすすめられます。なぜなら筋肉は強い負荷によって線維がいったん壊れそれが回復するときに強くなるからです。1日行ったら少なくとも1日は筋肉が回復するのを待ったほうがよいのです。
透析をしている人も運動を
慢性腎臓病で透析を受けている人にも有酸素運動とレジスタンス運動はすすめられます。その場合、透析の最中に運動を行えば時間を有効に使えます。透析中に運動する場合の注意点を下に示します。

透析を受けている人は体力が大きく低下していることがあるため、医師と相談し無理のない運動を選ぶ必要があります。
筋肉や骨が弱くなっていることもあります。傷めないよう準備運動をしてください。準備運動は透析開始の前にベッドの外で行ったほうが、体を動かしやすいのでおすすめです。
運動は透析時間の前半で行います。後半になると透析によって体内の余分な水分が抜けて血圧が下がるため、運動には適しません。
ゴムバンドを使ったレジスタンス運動

透析中にできるレジスタンス運動として、市販のゴムバンドを使ったトレーニングを紹介しましょう。

まず、一方を足に掛け、一方を手に持ち、ゴムバンドを伸ばしながら腕を90度上げる運動です。透析用のカテーテルを付けていない腕を使います。腕などの筋肉が鍛えられます。10回1セットで体力に合わせて繰り返します。
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